ミロ・ジャパン社長が語った「生成AIに意思決定を委ねないMiroの使い方」
今回は「ミロ・ジャパン社長が語った「生成AIに意思決定を委ねないMiroの使い方」」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ミロ・ジャパン 代表執行役社長の五十嵐光喜氏と、日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏の発言を紹介する。
米Miroの日本法人ミロ・ジャパンは先頃、ビジュアルワークスペース「Miro」の機能強化および事業の状況について記者説明会を開いた。五十嵐氏の冒頭の発言はその会見の質疑応答で、「Miroはチームの意思決定の場にもなるか」と聞いた筆者の質問に答えたものである。
会見の内容については速報記事をご覧いただくとして、ここでは五十嵐氏の冒頭の発言に注目したい。
同社はMiroについて、「メンバーが分散して作業を行うチームに、アイデアやイノベーションを視覚的に示す無限のキャンバスを提供するコラボレーション用ビジュアルワークスペース。ユーザー同士がコラボレーションを行い、積極的に参加したくなるようなワークショップやミーティングを開催したり、製品をデザインしたり、アイデアのブレーンストーミングを行ったりすることを目的としたプラットフォームだ」と説明している。
一言で言えば、「ビジュアルワークスペース」とのことだが、実は長らくチームコラボレーション用の「オンラインホワイトボード」と呼んでいた。五十嵐氏によると、Miroは2011年に世の中に出てきてから、図1に示すような進化の変遷をたどってきた。当初はオンラインホワイトボードだったが、今では生成AI機能も追加されて「イノベーションワークスペース+AI」とうたっている。ここで同社が前面に押し出している言葉が「イノベーション」だ。つまり、Miroは「イノベーションを生むツール」というわけだ。
この説明を聞いていて、Miroはさらに新たな役割を担えるのではないかと思った。それは「意思決定(デシジョンメイキング)のためのツール」だ。なぜ、そう思ったか。ここで生成AIが関係してくる。
筆者はかねて、生成AIの最大のリスクは「人間が行うべき意思決定を生成AIに委ねてしまうこと」ではないかと疑念を抱いてきた。どういうことかについては、本サイトでの筆者のもう1つの連載記事「一言もの申す」の2023年6月22日掲載「生成AIの最大のリスクは『意思決定を委ねてしまうこと』ではないか」をご覧いただきたい。
そうならないようにするためには、人間と生成AIのやりとりだけで意思決定を行わないようにし、そのやりとりの内容もMiro上でチームのメンバー全員がオープンにして、Miro上で議論し、チームとして意思決定を行っていく。そういうステップを企業/チームにおける意思決定のプロセスとして決めるというのも有効な手段ではないだろうか。
今回の会見の質疑応答で、そうした考えを五十嵐氏にぶつけてみたところ、同氏は次のように答えた。
「Miroがチームとしての意思決定の場になっていく可能性は十分にある。私たちがMiroに組み込んでいるAIは、議論に有効な材料を提供する役割を担っている。従って、AIに委ねたり頼ったりということではなく、AIが提供してくれる材料によって人間の想像力が一層膨らんでいくという感じだ。最近では、経営会議においてMiroが使われるケースも出てきている」
意思決定のプロセスを固めすぎてしまうと、経営の柔軟性が損なわれる面もあろうが、生成AIに意思決定を委ねないようにする仕組みは考えておいたほうがいい。その意味で、Miroの使われ方に注目していきたい。