AkamaiのエッジとMacrometaのPaaSを組み合わせ、新たな分散型クラウドを実現
今回は「AkamaiのエッジとMacrometaのPaaSを組み合わせ、新たな分散型クラウドを実現」についてご紹介します。
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アカマイ・テクノロジーズは7月5日、同社が推進する「分散型クラウド」に関する記者説明会を開催した。同社はコンテンツ配信網(CDN)のために構築したプラットフォームを、ユーザーのごく近くに配置されたコンピューティング拠点として活用することでエッジコンピューティングを強力に推進している。このプラットフォームに米MacrometaのPaaS環境を組み合わせることで、分散型アプリケーションの構築・運用がより一層容易になる。
米Akamai TechnologiesでCloud CTOを務めるJay Jenkins氏はまず、同社のクラウドに対する取り組みを「From Cloud Native to Native Clouds」というキーワードで説明。25年前の創業当時は「インターネットが極めて遅かったため、CDNというアイデアが生まれ、ユーザーの近くにコンテンツを配置することで高速に配信できるようになった。その後、アプリケーションプロバイダーはクラウドに移行したが、ダイナミックコンテンツにアクセスする際のユーザー体験に関しては、何か改善したわけではない」と指摘した。
クラウドは大規模な処理基盤を安価に利用できるようにしたが、通信速度に関しては従来と変わらず、むしろユーザーから遠いところにあるクラウドデータセンターに全てのリソースが集中するようになったことから、状況によってはかえって通信速度が遅くなることもあるという。
アプリケーション開発者にとっても、マルチクラウド環境が一般化してきたものの、主要クラウド環境間でのアプリケーションのポータビリティーは欠如しており、ロックインの懸念がある。多くの企業は従来のアプリケーションアーキテクチャーを更新してクラウドネイティブアプリケーションへと移行しつつあるが、現在のクラウド環境はユーザーが本当に求めている環境には至っていないため、「よりネイティブなクラウド環境」を実現するためにさらに改善が必要なのだとJenkins氏は言う。
その答えとなるのが、同社のエッジコンピューティング環境だ。同社はCDNサービスのために全世界のネットワーク環境に配信拠点を構築してきた。この環境をコンピューティング基盤として利用することで、アプリケーションをエンドユーザーの近くで実行可能になり、良好なユーザー体験を提供できるようになるという。低遅延でパフォーマンスの変動が起こらず、安定したサービス品質を実現できるようになることから、ストリーミングビデオ配信やオンラインゲーム、大規模なECサイトなどがユースケースとして想定されている。
続いて、Akamaiのパートナー企業としてPaaS環境を提供するMacrometaの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のChetan Venkatesh氏が同社のPaaSのついて説明した。同社はもともと、Akamaiに買収されたLinodeの大口顧客だったが、買収をきっかけにAkamaiと密接な関係となり、現在では出資も受ける関係となっている。同氏はまず、「アプリケーションの作り方が根本的に変わりつつあると確信している」と語り、同社との連携によるインパクトの大きさを強調した。
Venkatesh氏は、現在のハイパースケーラーを中心としたクラウドアーキテクチャーを「Hyperscale Architecture」と(ハイパースケールアーキテクチャー)呼ぶ。基本的には膨大なコンピューティングリソースを集積した大規模な環境であり、ユーザーは欲しいだけのリソースを得ることができる。一方で、そうした大規模な拠点を構築するには多額のコストを要することから冗長性はさほど高くはできず、ハイパースケーラー各社はグローバルで数十程度の拠点(リージョン)を確保するにとどまっている。
その点、Akamaiのエッジコンピューティング拠点はグローバルで4200以上あるため、分散のレベルは文字通り桁違いとなっている。ハイパースケーラーの台頭によってコンピューティングの場がごく少数の大規模拠点に集約された形になっており、結果としてネットワーク環境への依存度が高まっている。ユーザーの近くにハイパースケーラーのクラウドデータセンターが存在するとは限らないため、ネットワーク的な距離の遠さが遅延を引き起こす要因となる。また、人気商品の発売時などにしばしば起こることだが、膨大な数のユーザーアクセスが集中した場合には容易にサービスダウンが引き起こされてしまう。これも、大量のユーザーアクセスがごく少数の拠点に集中することが原因となっている。