日本の製造業はデータの価値をより活用してほしい–AVEVAが訴求

今回は「日本の製造業はデータの価値をより活用してほしい–AVEVAが訴求」についてご紹介します。

関連ワード (ソフトウェア等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

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 製造向けソフトウェアのAVEVAは7月25日、製品戦略説明会を開催した。サステナビリティー(持続可能性)や循環型経済(サーキュラーエコノミー)の拡大といった製造分野の企業を取り巻く状況を見据え、特に日本の製造業界ではデータの利用や活用をより推進する必要性があるなどと提起した。

 同社は1967年に創業し、英国ケンブリッジに本拠を置く。コンピューター支援設計(CAD)ソフトウェアなどを主力として、石油や化学、食品、造船、エネルギーなど約2万社の顧客を持つ。2018年にはSchneider Electricのソフトウェア部門と合併し、2021年には時系列データベース管理ソフトウェア企業の米OSIsoftを統合し、2023年にSchneider Electricの買収により同社の完全子会社となった。

 バイスプレジデント 日本統括の小暮正樹氏は、日本の製造業界が直面する課題として、労働力不足や設備の老朽化、データのサイロ化を挙げ、「これらは日本を含む世界共通の課題でもある」と指摘した。ただ、特にデータ活用は、公的機関や海外企業が実施した各種調査の結果を引用して、日本が世界に比べて遅れているとした。

 同社は、製造業界の広範な領域に対して、設備設計から稼働、最適化までのライフサイクル全体をカバーするポートフォリオを持ち、多様なデータの取得、蓄積、分析、可視化、活用に至るソリューションに強みがあるとする。

 また小暮氏は、世界中の製造企業が地球温暖化対策などを中心とする「グリーントランスフォーメンション」(GX)とデジタルトランスフォーメンション(DX)の双方への対応に迫られているとも指摘した。日本は長らく部分最適による生産性向上のアプローチで取り組んできたが、海外では企業の垣根を越えたデータ連携やエコシステムによって対応を進めているといい、日本の製造企業にとってデータのさらなる利用や活用が課題解決の鍵になると主張した。

 説明会には、ゲストとして東芝で長らくデジタルビジネスに取り組んでいるというデジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリストの福本勲氏が登壇。4月にドイツで開催された製造業界最大規模のイベント「Hannover Messe 2023」の内容を踏まえた世界の製造業界の動向を解説した。

 近年の製造業界では、デジタルなどの活用により業界の革新を目指す「インダストリー 4.0」が重要なキーワードとなっている。これは2011年にドイツで提唱され、12年が経過した今日においても引き続き重要だとする。

 福本氏によれば、「インダストリー 4.0」の真の目的とは、製造現場のデジタル化を皮切りに、製造企業そのものがデジタル企業に変革し、さらにはそうした企業・組織によるエコシステムが形成され、デジタルの経済・社会が実現されることにあった。ただ、日本では、製造現場のデジタル化が目的と誤って解釈される向きがあるという。

 同氏は、インダストリー 4.0が提唱されて以降、現在までに化石燃料への依存から脱却を目指すカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現、多種多様な企業・組織で構成される分散型・ネットワーク側のビジネスモデルの構築などがテーマになっていると説く。

 Hannover Messeでは、その対応に向けてソフトウェアを重要視し、伝統的なものづくりからデジタルサービスに軸足を移す企業の台頭や、エコシステムを形成してデータを共有、駆使するビジネスモデルの実現といった動向が注目されたとのこと。技術面でもデータ活用を駆使するデジタルツインや産業用メタバース、生成AIなどが話題になったという。

 同氏によると、欧州では上述した各種テーマや課題に対して、エコシステムによる標準化といった“ルール作り”によって業界を主導することを強みとしている。一方で、日本は歴史的に要素技術開発により業界を主導することへの関心が高いとする。現在の製造業界が直面する課題やテーマには、企業単独で立ち向かうには困難を伴い、欧州のような大局的なアプローチで臨むことが必要になるとする。

 そのためにはサステナビリティーなどの世界的な関心事や意識に目を向け理解し、新しいデジタル技術などを積極的に利用し、プラットフォームやエコシステム、データ共有といった大きな枠組みを推進していくことが求められるとした。

 説明会の最後には、AVEVA ソリューション営業本部 クラウドソリューション営業部長の村林智氏が、顧客のデータ活用をサポートするという同社のポートフォリオを紹介。同社では、SaaS基盤として「AVEVA Connect」を展開し、各種データを統合する「AVEVA Data Hub」を提供している。顧客は、生産設備などの機関を支える「AVEVA PI System」から稼働データなどを必要に応じてAVEVA Data Hubに取り込むハイブリッド型のデータ利用ができるとし、サードパーティーのデータ分析ツールなどを組み合わせてデータの可視化と活用による価値創出に取り組んでいるという。

 同氏は、またデータ活用の一例として、デジタルツインと産業用メタバースを組み合わせた生産設備の設計シミュレーションや拡張現実/仮想現実(AR/VR)技術なども活用したオペレーションの最適化、保守・メンテナンスの高度化といったソリューションを取り上げた。さらには、品質保持や資産最適化、プロセス改善、業務支援などのあらゆる領域にAI技術を組み込む方針を示し、生成AI技術の実装に向けた概念実証(PoC)に取り組んでいることも明らかにした。

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