職業としてのセキュリティ–人材バブルの最大要因とそれを象徴する事件
今回は「職業としてのセキュリティ–人材バブルの最大要因とそれを象徴する事件」についてご紹介します。
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本連載「企業セキュリティの歩き方」では、セキュリティ業界を取り巻く現状や課題、問題点をひもときながら、サイバーセキュリティを向上させていくための視点やヒントを提示する。
前回は、セキュリティが稼げる職業となった現状と経緯などについて述べた。このような現状は、以前の状況をよく知る人たちにとって隔世の感があるだろう。セキュリティは、長い間その重要性が認知されながらも、実際には花形の職業ではなく、好待遇とはとても言えないような日陰の存在だったからだ。その理由は、セキュリティをいくら高めても、企業や組織、そして何より経営者にとって積極的にうれしいことがまるでなかったということに尽きる。
それでも、セキュリティ市場はこの十数年間で大きく拡大し、その必要性の認知が世間に広がったことで、一般的に稼げる職業と言われるレベルには至った。今回は、局所的には人材バブルと言って良いセキュリティ業界の現状について述べる。
セキュリティ市場は、低成長の日本においては、高度成長と言っても違和感のないレベルの成長を続けてきている。しかし、この連載でも繰り返し述べてきたように、セキュリティ技術者は一朝一夕に育成できるようなものではなく、セキュリティ人材の需要と供給の関係は、非常にアンバランスなものとなっている。
その結果、セキュリティ人材を取り巻く状況は、ここ数年間で大きく様変わりした。多くの企業でセキュリティ人材が積極的に採用され、人材市場の中では30年以上前のバブル景気の様相と言える状況にもなっているからだ。もちろん、これは局所的なものであり、それなりに限定される分野の話でもある。そのため、筆者がよく知るセキュリティコミュニティーに古くからいる人でも、「その恩恵を全く受けていない」という人が少なくない。
しかし、このような例は転職する気などさらさらない人たちの場合であること多い。言い換えると、既に十分な待遇を受けている企業に在籍しているか、自由な裁量や働き方が許されていて、そもそも所属する組織外の転職市場に興味がなく、現在の就業環境についても特に不満のない人たちなのだろう。また、そもそもセキュリティコミュニティーや業界団体で活躍してきた人々とは、そういう世間一般の状況とは、別の世界に居る人ことが少なくない可能性もある。