金融機関APIの活用促進に向けて–「参照系API」の技術的改善を提言
今回は「金融機関APIの活用促進に向けて–「参照系API」の技術的改善を提言」についてご紹介します。
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電子決済等代行事業者協会(電代協)は8月10日、「参照系APIの技術的改善に関する提言」と題した報道向け勉強会を開催した。同協会は「即時」「経済的報酬」「中長期的」と3種に分類して8つの方策を提言している。
電代協は2017年11月に金融機関の決済システムや、口座情報に接続する事業者の発展を目的に設立された団体。自主規制やガイドラインを制定して、電子決済等代行業に関わるサービスの普及・啓発を推進している。同協会 スタディグループ長でawake 代表取締役の山本聡一氏は、システム更改などで速やかに対応する「A類型」、技術的には対応可能ながらも経済的インセンティブ(報酬)とパッケージで検討すべき「B類型」、理想論だが課題もあるので中長期的に検討する「C類型」の3類型に分けて8つの方策を提言した。
A類型に含まれる「コール数の削減」は電子決済等代行事業者(以下、電代業者)が参照系APIで銀行にアクセスする際の回数を意味するが、APIコール数は契約内容によって異なり、山本氏の説明によると不要なAPIコールをせざるを得ない仕様が電代業者、金融機関の両者に存在し、「コール数が多ければ多いほどベンダーなどに支払う料金も増えるため、コール数の削減は両者にとって望ましい」という。
これを実現には、両者が膝を突き詰めて議論し、中長期的な課題と仕様レベルの課題を見当しなければならないという。金融機関側はウェブアプリケーションでイベント実行時に外部サービス経由で通知する「Webhook」の導入や、1回のリクエストで提供する明細情報の上限引き上げ、明細IDの付与で個人・法人を識別して過去に取得した明細の再取得、口座一覧や明細情報に残高情報も含めて個別口座ごとに残高を取得することでコール数削減を求めている。電代業者側へも残高API使用時に明細データが変わらない場合は明細APIの使用せず、変動頻度の低い住宅ローン用口座ではコール頻度を低減させるべきだと提案した。
同じくA類型の「AUP利用の拡大」は文字通り、監査法人によるAUP(セキュリティチェックにかかる合意手続き)の利用を促すものである。山本氏は「参照系APIは個別に金融機関のセキュリティチェックを受けなければならない。現在の約130行に対する個別対応は難しい。そこでAUPで監査法人が一括チェックすることで省力化につながる。だが、AUPに参加しているのは約70行、残る約60行は個別チェックを求めている」と話す。電代協が対応を望むのも当然だろう。
「電代業者の体制整備・フレームワーク作り」は金融機関側への苦情対応を意味する。山本氏は「例えば、金融機関へ利用者から問い合わせがあり、API接続先の電代業者が十分な対応を取らず、(電子決済等代行業再委託者を指す)連鎖接続先に確認を取る必要が発生する。参照系APIが社会インフラになるためには、電代業者側が各ケースを精査し、十分な体制作りや顧客へ役割を理解してもらう取り組みが必要不可欠。顧客保護のフレームワーク作成を各自が協力して再度作り上げる必要がある」と主張した。
B類型に含まれる「明細取得期間の延長」は、1回のアクセスで取得できる明細期間の延長を希望する提言。参照系APIで取得できる口座情報の期間は3カ月未満の金融機関が66%、12カ月以上は23%にとどまる(電代協事務局が提示した数値。66%は413行、23%は86行)。「消費者の利便性が損なわれると同時に金融機関が(取引履歴などを通じて融資判断する)トランザクションレンディングの障壁になってしまう」(山本氏)。
例えば、確定申告時に過去1年分の明細情報を取得する際も難儀するため、「明細取得可能期間は最低でも18カ月以上。ただし、金融機関へのインセンティブも必要になるため、電代業者との協議や議論の深化、先行事例の発信が重要」になると山本氏は主張した。