防犯対策にもなるリテールメディア–エッジAIを活用した「攻め」と「守り」の新戦略

今回は「防犯対策にもなるリテールメディア–エッジAIを活用した「攻め」と「守り」の新戦略」についてご紹介します。

関連ワード (マーケティング、リテールテック最前線等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 本連載では、エッジAI基盤「Actcast」を展開するIdein 代表取締役/CEO(最高経営責任者)の中村晃一氏が、米国小売市場の最新動向を見定めるとともに、自社のエッジAIの活用事例を解説する(連載第2回)。

*****

 リテールテックにおいて現在ホットな領域といえば「リテールメディア」だが、その前段階として見落としがちであり、ともすると諦めがちなのが、店舗における不正行為の防止策だ。

 昔も今も万引行為は後を絶たず、年間の被害総額は推定で約8089億円に上る(図1)。それ以外にも盗撮や痴漢、器物破損など数多の不正行為があり、記憶に新しいところでは回転寿司チェーン店を中心に来店客の迷惑動画が拡散される事象が問題となり、企業価値に影響を及ぼす事態となっている。

 万引などの犯罪/不正行為を低コストで未然に防止できれば、店舗側の多大な負担となっていた防犯対策のコスト構造が変わり、攻めの投資につながっていく可能性がある。犯罪に手を染めてしまう人々の数が減ることで、社会の安全性向上にもつながるため、社会的価値の観点からも重要な一歩といえる。

 攻めの投資とは具体的に、小売企業での設備投資が進んでいる「リテールメディア」などに絡めて、マーケティングと防犯を1つの枠組みとして取り組むことを指す。本記事では、その道筋を解説する。

 不正行為の対策を強化する店舗は近年増えており、監視カメラや出入口の防犯ゲート、万引Gメンの配備を拡充する傾向にある。一方、セルフレジの導入店舗が増えたことで、犯行エリアや手口なども複雑化しており、もはや「人件費削減のためには多少の被害は仕方ない」という認識が店舗運営において一般的にさえなっている。

 原因不明のロス金額「不明ロス」は1次被害だけでなく、一般生活者に不公平感を生じさせたり、店舗や地域の治安悪化を招いたりと、企業イメージの毀損(きそん)をはじめ、さまざまな2次被害をもたらす。とはいえ、監視カメラを隙間なく設置すると導入コストがかさみ、その映像をチェックする人件費もかかってしまう。実態として、従業員が監視カメラの映像を日常的にチェックできておらず、事案発生後の警察対応などに使用する程度となっているケースも多い。

 実際の被害状況を見ると、来店者に向けた防犯対策だけでは足りないことも分かる。独自の不正行動検知技術を活用した防犯サービスを提供する企業・CIAの調査によると、内部不正者による店舗の不明ロスも多く、内部不正者の8割は従業員であると確認されたという。内部不正者の97%は勤務先の店舗で犯行に及んだというデータも出ている(図2)。

 外向き/内向きを含め、多様な防犯対策が求められる中、CIAは独自開発した監視カメラや不正行為の検知技術を活用し、店舗の防犯対策を担ってきた。これまでにカメラで捉えた不正行動は数万件に上り、これらのデータを分析して防犯に関する知見を蓄えている。

 CIAのシステムは、不正を行った人物が再度不正を行う目的で来店した際、顔認証で検知して自動で音声を流したり、店員へリアルタイムに通知したりする対応をしている。その通知を合図に、店員は対象者に声かけをする。声かけは「いらっしゃいませ」や「何かお探しですか」といった何気ないものだが、これでも不正行為の抑止には十分だ(図3)。

 また、同一の防犯システムが内部の不正現場も捉え、サーベイランス(監視)センターで店内の映像を分析している。仮に店舗で不正をしようとする従業員がいた場合も、抑止効果が期待される。全国展開する大手小売事業者を対象とした実証実験では、従来の不明ロス金額を平均で7割削減したという。

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
QUICK、生成AI利用の新サービスを開発–石川県が情報発信に活用
IT関連
2023-08-26 06:17
Google I/O 2021に期待すること Android 12詳細の他、Fitbitの買収効果は? :Googleさん(1/2 ページ)
トップニュース
2021-05-16 13:10
「Trello」でかんばんボードを作成するには–テンプレートを使用して簡単に
IT関連
2023-07-05 10:53
AI時代に必要とされる「データが行動を促す」ための新しいアプローチ
IT関連
2021-06-03 12:41
中国政府の要求を満たす最強の「検閲クラウド」の実力とは
IT関連
2023-03-04 10:59
GoogleとNVIDIA、5G活用のクラウドAI導入支援ラボを共同開発
企業・業界動向
2021-06-29 11:17
KDDI、通信設備の故障対応業務にCelonisを導入
IT関連
2023-11-30 14:55
NTTデータグループが決算、鍵を握るデータセンター事業と海外事業
IT関連
2023-11-09 06:30
2021年のスマートフォン出荷台数は2017年以来初めて増加
IT関連
2022-01-30 20:15
米財務長官、デジタルドルについて見解を表明–開発には「数年」かかる
IT関連
2022-04-12 20:54
三井不動産の移動商業店舗事業「MIKKE!」–場所、車両、顧客情報の共有で新たな購買体験
IT関連
2022-06-24 16:58
実現が近づく「給与デジタル払い」とは何か 得をするのは誰なのか (1/3 ページ)
くわしく
2021-05-15 19:49
テレワーク向けPCは本当に十分な機能を備えているか? 日本HP「Dragonfly G2」の実力を試す
PR
2021-07-27 00:46
この1年でもっとも給与が上昇したIT職種は「セキュリティアナリスト」、2位は「データサイエンティスト」、3位が「DevOpsエンジニア」、2021年米Dice調べ
働き方
2021-03-16 18:09