AIの次なる波「マルチビュー」–対象物を複数の視点から捉えて関連付ける利点と課題

今回は「AIの次なる波「マルチビュー」–対象物を複数の視点から捉えて関連付ける利点と課題」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 非常に大きな成功を収めている人工知能(AI)、たとえば「ChatGPT」や、タンパク質を予測するDeepMindの「AlphaFold」などは、1つの著しく狭い次元に閉じ込められてきた。すなわち、AIは物事を1つの側面からしか認識しない。1つの単語、1つの画像、空間内の1つの座標、何らかの種類のデータとして認識するが、1度に1つだけだ。

 極めて近い将来、ニューラルネットワークはデータ形式の融合によって劇的に拡大し、この世を多くの側面から見られるようになるだろう。これは重要な進展だ。というのも、世界のまとまりや物事の結びつきの仕組みに関して、ニューラルネットワークの基盤が強化される可能性があるからであり、世界を対象にいわゆる「推論」や「計画」を実行できる未来のプログラムに向けた動きが、重要な段階に入るかもしれない。

 到来しつつある多面データの波は、機械学習の科学者による長年の研究に端を発するもので、一般に「マルチビュー」またはデータフュージョンと呼ばれている。学術出版大手のElsevierは、このテーマに特化した「Information Fusion」という学術雑誌を発行しているほどだ。

 人間が調べようとする世界のあらゆるものには、多数の側面が同時に存在する。これがデータフュージョンの深遠な考え方だ。たとえば、ウェブページには、肉眼で見えるテキストと、そのページへリンクするアンカーテキストの両方がある。あるいは、3つ目の要素として、ページの構造の基礎を成すHTMLやCSSのコードも存在する。

 人間の画像には、その人物の名前のラベルと画像のピクセルの両方が含まれる場合がある。動画には、動画のフレームだけでなく、そのフレームに付随するオーディオクリップも入っている。

 現在のAIプログラムは、そうした多様なデータを世界に関する別々の情報として扱い、情報の関連付けはほとんど、あるいは全く行わない。ニューラルネットがテキストや音声といった複数の種類のデータを処理するとしても、せいぜいそれらのデータセットを同時に処理するだけだ。複数の種類のデータが同じ物事を対象としていることを理解して、それらを明示的に関連付けるわけではない。

 たとえば、Facebook、Instagram、WhatsAppを所有するMeta Propertiesは米国時間8月22日、機械翻訳における最新の取り組みを発表した。これは、複数のデータモダリティーの使用に関する偉業だ。この「SeamlessM4T」というプログラムは、音声データとテキストデータの両方で同時に訓練されており、あらゆるタスクでテキストと音声の両方を生成することができる。

 だが、SeamlessM4Tはそれぞれの信号のそれぞれの単位を同じ対象物の1つの側面と認識しているわけではない。

 そうした断片的な物の見方が変わり始めている。ニューヨーク大学の助教授兼ファカルティーフェローのRavid Shwartz-Ziv氏とMetaの主任AI科学者のYann LeCun氏は、先頃発表した論文の中で、マルチビューを使用して、対象物を複数の視点から表現することで、深層学習ニューラルネットワークを強化するという目標について論じた。

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
デスクトップが美しいLinux「rlxOS」–セキュリティの高さゆえの欠点も
IT関連
2023-12-15 07:49
米ガートナー「先進テクノロジーのハイプサイクル2022年」を発表。分散IDやWeb3は過度な期待、機械学習によるコード生成、デジタルヒューマンなどは黎明期
業界動向
2022-08-16 23:30
ITチャネルパートナーに販売促進プラットフォームを提供するZomentumが事業拡大に向け13.8億円調達
ソフトウェア
2021-02-18 12:49
TikTokに履歴書で求人に応募できるLinkedIn的な新パイロットプログラム
ネットサービス
2021-07-09 16:29
Web3の概念、利点、懸念–未来の分散型インターネットを知る
IT関連
2022-02-22 09:58
会計分野特化のAIソリューションを手がけるファーストアカウンティングが4億円のシリーズC調達
IT関連
2022-01-20 03:02
2023年に最も需要が高い技術職は?–CompTIAレポート
IT関連
2023-04-20 14:54
月定額のカーリースサービス「カルモ」を展開するナイルが50億円超の資金調達
シェアリングエコノミー
2021-01-19 16:31
AWSとMSのクラウド市場独占に懸念–英放送通信庁が中間報告
IT関連
2023-04-08 03:03
AIが習得すべきスキルを提案–「人的資本経営」を支えるオラクルのソリューション群
IT関連
2023-02-02 16:18
「Ubuntu 21.04」リリース–「Microsoft Active Directory」とネイティブ統合など
IT関連
2021-04-27 16:14
FlutterのためのDart製サーバフレームワーク「Serverpod 1.0」正式リリース。Dartでサーバからクライアントまで開発可能に
Dart
2023-02-01 22:10
アニメーションと音声で写真に生命を吹き込む、MyHeritageとD-IDが提携し故人が話す動画が作成可能に
IT関連
2022-03-05 10:34
「サイバーハイジーン」で健全なセキュリティ状態を確保可能–タニウム調査
IT関連
2024-09-12 21:43