「遠くまで行きたければ、みんなで行け」–長野県と77市町村が進めるDX戦略

今回は「「遠くまで行きたければ、みんなで行け」–長野県と77市町村が進めるDX戦略」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 長野県は、2013年度から5年間の県政運営の基本となる総合計画として、長野県総合5か年計画「しあわせ信州創造プラン」を推進している。2023年度は新たに「しあわせ信州創造プラン3.0~大変革への挑戦『ゆたかな社会」を実現するために~」を策定し、本当の意味での「ゆたかな社会」を築く取り組みを進めている。

 2022年度で終了した長野県総合5か年計画「しあわせ信州創造プラン2.0」では、「先端技術を最大限に活用する」という目標に向けて「長野県DX戦略~Society 5.0時代の新たな信州への道しるべ~」を掲げ、県全域のDXを行うことで5Gなどのインフラ整備を促進し、同県を県民や地場企業に加えて、県外の人や企業にとっても魅力的な地域にするための施策を進めていた。

 このDX戦略は、県民生活と行政のDXを推進する「スマートハイランド推進プログラム」と、県内産業のDXを促進する「信州ITバレー構想」の2軸で同県全域のDX推進に取り組んでいる。スマートハイランド推進プログラムは、「スマート自治体推進」「スマートエデュケーション」「ゼロカーボン・スマートインフラ」「スマート避難」「キャッシュレス推進」「地域交通最適化」「医療充実」――の7プロジェクトを設置している。

 ここでは、スマートハイランド推進プログラムに取り組む長野県 企画振興部 DX推進課 課長の永野喜代彦氏と同課 スマート自治体担当 主査の居鶴吾郎氏に、同県における庁内と自治体のDX推進と、2023年度以降の取り組みについて話を聞いた。

 長野県では、2018年に「しあわせ信州創造プラン2.0」を策定し、先進技術の積極的な活用を行ってきた。2019年にはIoTやAI、5Gなどの先端技術のさらなる活用推進のため、最高デジタル責任者(CDO)と先端技術担当部長(CDO補佐官)、先端技術活用推進課を新設し、DX戦略の推進体制を強化するとともに、組織横断的な議論を行うために「先端技術活用推進会議」を設置した。

 先端技術活用推進会議は、県内産業や県民生活、行政サービスへの先端技術の社会実装を総合的に推進する役割を担う。CDO(副知事)を議長に据え、各部局長、教育長、県警本部長がメンバーとして在籍しているという。居鶴氏は「県警本部まで加わることは他団体であまり見かけません。県全体でDXを進めるに当たり、まずは庁内が動かなければならないので、県警も含めた組織全体でDXに向けた取り組みを進めています」と説明する。

 先端技術活用推進会議で各部署や県内企業におけるDX推進に対する課題を洗い出し、1年間の検討を経て2020年に「長野県DX戦略」を策定。スマートハイランド推進プログラムとITバレー構想の2軸で同県全体のDX推進への取り組みが始まった。

 2021年にはDX推進と業務プロセス改革を一体化した「DX推進課」を設置。従来は先端技術活用推進課がDX推進を行い、業務プロセス改革は「コンプライアンス・行政経営課」が担っていた。しかし、DX推進は業務プロセスの改革とともに進める必要があったため、DX推進課にこれらの機能を統一したという。同時期に、庁内の情報システム開発や運用を行う「デジタルインフラ整備室」も設置し、庁内に分散していた大型情報システムの調達・運用機能を予算とともに集約した。

 さらに、同県のDXを強化するため、職員採用に「デジタル」区分を創設。IT関連の企画立案や調査分析、支援業務に携わる人材を募っている。将来的には、DX推進やデータに基づく政策立案(EBPM)の推進に従事する、もしくは専門職としてシステム整備に従事するといった2つのキャリアパスモデルを想定しているという。

 長野県DX戦略のコンセプトとして掲げられた「早く行きたければ、ひとりで行け。遠くまで行きたければ、みんなで行け。(If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.)」は、アフリカのことわざだという。

 同県は77市町村で構成されており、大きい市から小さな村まで規模はさまざまだ。小さな村では職員も少なく財政規模も小さいため、先端技術を利用したくても価格が高い、専門的な職員がいないなどの理由で導入が困難な場合も多いという。そこで、複数の市町村で情報システムを共同調達・利用することで、多くの市町村が安くデジタルツールを使えるとしている。

 また、同県における共同調達・共同利用の仕組の歴史は古く、77市町村で構成される長野県市町村自治振興組合で2001年から県と市町村等を結ぶネットワークなどの共同調達を行っており、県全体として共同調達・利用を推進する素地が備わっていた。

 居鶴氏は、「小さな団体の方を取り残さずに遠くまで一緒に行くというのは非常に大切です。だからこそ、『遠くまで行きたければみんなで行く』ということを重視しています」と話す。

 スマートハイランド推進プログラムは、信州のアイデンティティーである「中山間地域」に着目し、「中山間地域における先端技術の活用」の先進県を目指している。また、先端技術の導入効果を県内に浸透させるために、県と77の市町村が連携して同プログラムを推進することに重点を置いているという。

 この取り組みとして、これまで長野県市町村自治振興組合が取り組んできた共同調達・共同利用をさらに加速させるべく、DX推進課が事務局となり、県と市町村による「先端技術活用推進協議会」を設置。成功事例の共有や、デジタルインフラの共同調達に向けた仕様の検討などを行っているという。参加しているのは、県と全77市町村および10広域連合、長野県市町村自治振興組合電子自治体推進部門の89団体だ。

 これまで電子申請システムや音声文字起こしシステムなど、17の情報システムを長野県市町村自治振興組合が共同利用として調達。また、自治体情報システム担当者の人材育成に向けた研修を行うほか、注目を集める生成AIや「書かない窓口」などのソリューションに関する勉強会を開催することもあるという。

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