SAPのプラットフォームで日本企業の変革を支援できる–クラインCEOが会見
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SAPの最高経営責任者(CEO)を務めるChristian Klein氏は10月2日、都内で記者会見を行い、ERPなど同社のビジネスプラットフォームが日本企業の変革に貢献すると述べたほか、日本市場への投資規模を2倍にする構想も明らかにした。
会見の冒頭でKlein氏は、日本を重要市場と位置付け、「クラウドビジネスが順調に推移し、日本での収益は直近2年で2倍に成長するなどグローバル平均を超えている」と状況を説明した。日本の同社顧客の多くの企業がDXを推進する中、そのペースを加速させるために、サポートや研究開発などの広範な領域で日本に対する投資規模を今後2倍に増やしていくとした。
SAPは、近年にERPの「SAP S/4HANA Cloud」を中核として大企業顧客のDXを推進するオファリング「RISE with SAP」を展開し、2022年にはサプライチェーンの高度化を図る「SAP Business Network」、2023年は「ビジネスAI」や、RISE with SAPの中小企業向けとなる「Grow with SAP」を打ち出す。Klein氏の来日直前となる9月26日には、生成AIの新サービス「Joule(ジュール)」の提供も発表した。
まずAIについてKlein氏は、40万社を超える世界中の大企業が同社の顧客であること、各社が利用するSAPのERPなどに蓄積された膨大なビジネスデータと、数十億ものデータポイントがSAPのAIにおける最大の強みだとアピールした。
「SAPのAIは、ビジネスのためのAIであり、顧客のビジネスプロセスそのものにAIが存在することによって生産性を飛躍的に高め、顧客のビジネスモデルを変革する。AIが数十億ものデータポイントから顧客に資する価値を提供し、属人的な作業から人材を解放してより価値ある業務に注力できるようにし、より適切な洞察を提示する。生成AI(のJoule)はゲームチェンジャーとなる」などと述べた。
Klein氏は会見で終始、同社のテクノロジーが顧客企業のビジネスモデル自体を変革するために存在するとアピールして見せた。RISE with SAPについては、「単にクラウドへの移行を支援するものではなく、ビジネスモデルの変革を支援する。顧客は、(S/4HANAなどに)蓄積された数十億ものデータポイントからのデータ、質の高いデータを活用でき、世界中の企業をベンチマークとして自社の状況を知り、変革に向けた取り組みを進めていける」とした。RISE with SAPにGrow with SAPを加えたことで、今後は規模を問わずあらゆる企業のDXの推進をSAPが支援できるようになったという。
またSAP Business Networkは、世界最大規模の企業間取引のプラットフォームになる。さまざまな業界の企業がこれに参加することで、SAPのデータを活用しながら自社ビジネスにとって最適なビジネスパートナーを新規に探索したり、容易に取引を開始したりできるようになる。Klein氏は、「特にコロナ禍でサプライチェーンが混乱に陥った。(Business Networkによって)企業は透明性が高く、強靱(きょうじん)でレジリエント(損害などから回復能力)なサプライチェーンを実現することができる」と述べる。
SAPは、サステナビリティー(持続可能性)もキーワードに掲げる。特に地球温暖化につながるとされる温室効果ガスの排出量削減があらゆる企業の課題となっており、Klein氏は、顧客がBusiness Networkを通じて環境貢献に資するビジネスパートナーを獲得でき、温室効果ガスの排出量の算出や排出権取引などをサポートする「Green Ledger」を利用することで、温室効果ガスの排出抑制に向けた取り組みを可視化する同時に、企業の財務面からもその取り組みを推進する効果を得られるとした。
一例では、日本の大手自動車メーカーや自動車部品メーカーがBusiness Networkに参加しており、さらに世界的な自動車業界のサプライチェーン/データエコシステムの「Catena-X」の活動にも貢献していると述べた。
AIでは、上述のように顧客企業のビジネスの最適化と生産性向上を最大の目的とする。SAPは、同社のERPなどがカバーする企業のあらゆる基幹業務のデータを基に独自の大規模言語モデル(LLM)を開発し、顧客がJouleなどを利用してこれらデータから優れた洞察を獲得できるほか、同社のビジネスパートナーもSAPのLLMを組み合わせたソリューションを実現できるなどとアピールした。
生成AIなどについては、ユーザーデータがLLMの学習に利用されることへのプライバシーが懸念されている。Klein氏は、同社のAIでは顧客データのプライバシーを最大限に尊重していると説明し、学習へのデータ利用の選択権を顧客が有していること、許諾を得た顧客データを匿名加工してLLM開発などに利用していること、顧客が自社データを自国で保管・管理できる「データレジデンシー」に対応していることなどを挙げた。
SAP ERPをめぐっては、多くの企業が運用している「SAP ERP 6.0」の標準サポートが2027年末で終了し、オプションの延長サポートを利用しても2030年末までとなるため、多くの企業がS/4HANA Cloudやオンプレミス版のS/4HANAなど、あるいはSAP以外のERP製品に移行するなどの対応を進めている最中だ。しかし需要がひっ迫しており、移行を支援するシステムインテグレーターなどのリソース不足が問題になっている。
Klein氏は、RISE with SAPやGrow with SAPの包括的なDX支援のオファリングが顧客にとって、ERPの最新化を含むビジネスモデルの変革に貢献すると繰り返し述べるとともに、上述した同社の掲げるサプライチェーンやサステナビリティーへの対応にも寄与すると強調した。クラウドとAIのそれらを実現していく鍵になるテクノロジーだという。
「われわれの顧客の観点では、クラウドに移行するか否かではなく、クラウドにいつ移行するかになっている。確かにリソースが不足しているなどの課題が生じている。SAPは、日本への投資を2倍に増やし、サポートも研究開発も強化する。日本市場に素晴らしい当社のパートナーがおり、彼らと共に顧客がRISE with SAPやGrow with SAPの恩恵を享受できるよう努めたい」と話す。
またKlein氏は、「日本企業はアジャイルで競争力を手にすることが重要であり、そのためにクラウドやAIでデータの価値を引き出していけるよう支援したい」「日本の顧客にとってもこれからSAPのテクノロジーをさまざまな効果を手にしていく“収穫期”になる」「SAPが注力するものは、例えば、人事領域なら『SuccessFactors』などによりデータ活用スキルを持つ人材を生かすだけではなく、そうしたスキルを組織として獲得していくための戦略にまで踏み込む。ECビジネスであれば、決済情報も在庫情報も必要になる。SAPにはビジネスのプラットフォームとデータがあり、アプリケーションを提供で、データモデルを活用できる。顧客はSAPでビジネスをカバーすることできる」などとコメントした。