AI利用で重要なのはコンテンツ戦略–Box コーラーCMOに聞くマーケティング戦略
今回は「AI利用で重要なのはコンテンツ戦略–Box コーラーCMOに聞くマーケティング戦略」についてご紹介します。
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コンテンツクラウドサービスを提供するBoxで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるChris Koehler氏に同社のマーケティング戦略などを聞いた。
Koehler氏にとってコロナ禍後としては初来日となった今回、マーケティング戦略やそのストーリーを日本のチームや顧客にきちんと理解してもらうことが目的だという。
Boxは、ファイル共有サービス企業としての印象が強いが、コンテンツクラウド企業として製品ポートフォリオを広げ、電子サインやビジュアルコラボレーションなどのサービスを現在提供している。
コンテンツクラウド企業としての認知を広めるためのマーケティング施策として、IDCとの協業により、コンテンツ戦略の重要性をグローバルで訴求することをKoehler氏は挙げる。IDCと共同でコンテンツ(非構造化データ)の価値について調査を実施した結果、企業データの90%が、計画書や契約書といった非構造化データということが分かったという。企業に眠る大量の非構造化データが持つ潜在能力は大きいが、それを生かすだけのコンテンツ戦略が不在だと同氏。生成AIやセキュリティの重要性が高まる中、コンテンツ戦略の重要性は高まるとの考えを示す。
別の施策としては、既存顧客に対し、Boxへの投資に見合うだけの価値を提供することも挙げる。企業がBoxをファイルストレージとしか認識していないのであれば、利用可能なさらなる機能を活用してもらうことで、Boxからより多くの価値を得られることを理解してもらえるという。
それには、製品認知を高めることが第一歩であることから、デジタルマーケティングや対面でのイベントを通じて訴求している。また、アナリストと協力してウェビナーなどを開催し、顧客が現在契約しているプランには電子サインなどの利用可能な機能がまだまだあるということを知ってもらうようにしているという。その結果、Boxが提供可能な機能にもかかわらず他社製ソリューションを使っているという場合、Boxへの置き換えが狙えるという考えだ。
顧客のBox製品利用に関する傾向を見た場合、米国では、日本を含むアジア太平洋や欧州に比べ、より多くの機能が利用されているという。Koehler氏は、DXの進み具合に差があることが理由と考えるが、この先、欧州やアジアでも成熟度が上がってくるだろうと推測する。
日本でのマーケティング戦略は、パートナーとのネットワークで展開していることが特徴的だという。日本の顧客についてパートナーからフィードバックを得ることに加え、パートナーサミットなどを通じて新しいイノベーションに関する情報をパートナーに提供するという両面から取り組みが展開されているという。
Boxの共同創業者 兼 最高経営責任者(CEO)のAaron Levie氏は、先ごろ来日した際、同社が日本に進出して10年を迎えているが、日本市場は最も急成長しており、インターナショナル市場では最大としていた。そのため、日本のパートナーからのフィードバックは、高い優先順位で戦略に反映されるとKoehler氏。日本市場で学んだことを他の市場の成長に結びつける活動もしているという。
Boxは先ごろ、コンテンツのためのセキュアなエンタープライズAI「Box AI」を発表している。マーケティングにおけるAIの利用について、Koehler氏は、大変有効だとの考えを示す。AIの台頭により、コンテンツ作成など短時間化、マーケティングタスクの自動化、顧客へのパーソナライズされたコンテンツの提供が可能になっているという。
とはいえ、マーケティングの世界における大きな変革であることから、準備をきちんと整えて臨む必要があると同氏は指摘する。マーケターとして、AIをテクノロジーのレベルまで理解し、日々のワークフローの中でどう活用するかを考えるべきだという。「それぐらいの学習をしないのならば、近代的なマーケターとして、この波に乗り遅れる」(Koehler氏)
その上で、同氏は、マーケターへのアドバイスとして、「AIを使ってマーケティングをやっていくというチャンスを探して、積極的に使ってもらえればと思う。失敗しながらも、どうすればよいのかを学んでほしいと思う。そうすることで、新たに出てきたテクノロジーを上手く活用し、最大限にその能力を使っていける」と述べる。
AIの利用に際しては、コンテンツ戦略を立てて、ガバナンスやセキュリティ周りに適用することが重要とKoehler氏。アクセス権限の適切な設定によって不必要なコンテンツへのアクセスを防ぐことで、生成AIを導入したものの会社の情報が外部に漏れてしまったという最悪のシナリオを避けることができると続ける。さらに、AIの価値を最大限に引き出せるという。
同社でのマーケティング活動におけるAIの活用について、Box AIを使ったコンテンツの作成を考えており、今あるコンテンツからさらなる価値を引き出すことが目的とKoehler氏は説明する。プレスリリースの初稿を作成する、セッションタイトルを考える、製品名を決めるといった文字コンテンツの作成では取り組みを既に開始しているという。自動化とパーソナライズでは、どうすれば適切なメッセージを適切な人に適切なタイミングで送ることができるかをテストしたいとKoehler氏は考える。