中国各地の自然公園で一気に進む「鳥認識AI」の導入

今回は「中国各地の自然公園で一気に進む「鳥認識AI」の導入」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 中国が監視社会と言われて久しい。ただし、監視対象は人間や車両だけではない。昨今、野鳥を監視するAI技術を磨き上げ、種類や個体数の把握に役立てている事例をこの数カ月でよく目にするようになった。

 中国には昆明市(雲南省)など、毎年決まった時期に渡り鳥が多く飛来する都市がある。これまでは、そうした渡り鳥の飛来状況を目視と経験でカウントするしかなかった。それが鳥認識AIの活用によって誤差をかなり減らせるようになったという。サンプル画面を見ると、カメラの映像からAIが渡り鳥を認識・判別し、その詳細が四角い枠とともに表示されている。

 鳥認識AIを開発する団体を率いる鑑海防氏は「視認系AIの研究に当たり、アルゴリズムの検証手段として鳥認識を利用することがあります。鳥は種類が多いのに加え、互いによく似ているため、アルゴリズムの能力やレベルをよく反映することができる」と中国紙の新京報に語った。ちなみに、鳥認識AIを開発しているのは同氏の団体だけでなく、快瞳科技や悦保科技といった企業もSaaSで提供しており、さまざまな個人や団体、組織で導入できる状況にある。つまり、鳥認識AIがビジネスになる情勢であるとも言える。

 最新の鳥認識システムでは、画像だけでなく音声も活用する。森林など障害物が多い場所では、鳥の姿は見えないがさえずりだけが聞こえるという場合がある。そういった状況で、鳥の鳴き声を認識するアルゴリズムが必要になる。まず、鳥のさえずりを周波数スペクトルに変換し、その特徴を抽出するモジュールを開発した。それを通じて鳥の種類を識別する。一方で、映像については湖沼など広く開けたところで特に有効で、鳥の形態的・行動的な特徴抽出と分類モデルを用いて、鳥の種類を特定するというもの。画像認識と音声認識を組み合わせることで、より精度の高い認識が可能になる。

 鳥認識AIの開発には、鳥類研究者の協力や大規模データの学習が欠かせない。例えば、鳥は立っている時、水面に漂っている時、飛んでいる時で見た目が違い、向いている方向によっても変わる。また、同種の鳥であっても中国の南北で鳴き方が異なる「方言」が存在する。カワウとサギは外見が似ているが、サギは捕食の習慣で水辺に止まるが、カワウは水中に潜る能力に長けている。そうした行動の違いから判定することもあり、専門家の助けが重要だ。

 中国各地で活用事例が増えている。導入方法としては、監視対象となる公園や湖沼の近くにエッジサーバーを設置し、そこでAI処理まで行った後に分析したデータをクラウドに転送するケースと、クラウドで全ての処理を行うケースがある。いずれにせよ、どの鳥がどこにどれだけいたかを時系列で記録し、後から分析できるようにデータを保存する。スマートフォンなどから鳥の写真をアップロードし、分析・保存することも可能だ。管理担当者には日次のレポートが自動で送信され、その日いた鳥の種類や個体数、分布が一目で分かるようになっている。これにより、人件費が大幅に削減された上、24時間体制の監視と作業効率の向上が実現した。

 鳥認識システムによって、従来の方法よりも監視の精度や効率性、即時性が大幅に向上した。また、人間が介在しなくなったことで、貴重な鳥がより長く滞在するという副次的な効果も得られたという。まださまざまな課題はあるものの、システムの導入と運用が進めば、それだけAIのアルゴリズムも磨かれていき、AIによる省人化・自動化の流れが加速するだろう。

 中国以外でも鳥認識AIの研究や取り組みがあるが、昨今の情勢の中、中国はできるだけ自国でハードウェアやソフトウェア、サービスを賄おうとしている。同技術は鳥類保護にとどまらず、鳥や動物に由来する伝染病・感染症の予測にも役立つという。現在のシステムでは800種を超える鳥類を識別できるとしている。

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