エッジコンピューティングで浮上するインフラ運用管理の課題

今回は「エッジコンピューティングで浮上するインフラ運用管理の課題」についてご紹介します。

関連ワード (ITインフラ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 製造や流通などさまざまな業種でエッジコンピューティング(以下エッジ)の導入が本格化の兆しを見せている。ここで懸念されるのが、大規模分散型となるエッジの運用管理の難しさになる。対策を提示するDell Technologies インフラストラクチャーソリューショングループ エッジポートフォリオ/ソリューション担当シニアバイスプレジデントのGil Shneorson氏に、エッジの現状や運用管理の取り組みを聞いた。

 エッジは、データが発生する場所やその近くで実行するデータ処理の概念になる。データセンターでの一括処理では非効率な用途、あるいはデータセンターへのネットワークス転送コストや遅延などの問題が大きい用途を中心に、エッジシステムの導入が増え始めている。

 Shneorson氏は、エッジの急速な普及の背景に(1)センシング技術やデータストリーミング技術、(2)AIモデルの開発、(3)ソフトウェア定義型の技術――があると指摘する。センサーの多様化やデバイスの増加によりデータの生成量が急激に増加し、それらデータを活用するためのAIモデルの開発も進む。また、例えば、デバイスのプログラマブルロジックコントローラー(PLC)が仮想化技術に対応してこれまで以上にアプリケーションを実行できるようになるなど、制御系技術(OT)分野でもITのソフトウェア定義(SDx)技術が採用されるようになった。

 エッジの代表的な用途は、製造では、工場の生産ラインに設置した監視カメラで商品を撮影し、映像データをAIで解析して不良品を検出したり、生産設備の稼働データを時系列などで分析して故障が発生するタイミングを予測したりしている。流通では、店舗の棚在庫の状況をカメラで常時確認して欠品の有無を検知したり、来店客の動きを解析して購買を促す施策を検討したりする。

 これらのためのエッジシステムは、分散配置され、1つの敷地や施設の中でも複数稼働する。敷地や施設が多拠点となれば、それに応じてエッジシステムの数が増えていく。「データセンターから外のエッジに向かう大きな潮流が起きている。データセンターが1カ所ならエッジは数十、数百以上という規模で分散している。しかし、多くの組織でエッジを運用管理するIT担当者がいない」(Shneorson氏)

 昔ながらのIT部門の感覚では、新しいエッジシステムはIT部門が所管するものではなく、工場なら生産管理部門、店舗なら現場スタッフが取り扱うものと考えてしまうかもしれない。Shneorson氏によれば、同社の調査ではエッジに取り組む製造企業の55%で、IT部門がエッジシステムを運用管理しているという。

 エッジもIT資産となれば、ITによる運用管理の対象になるだろう。また、AIで使うデータが当該組織にとって機密性が高いとなれば、エッジシステムやネットワークを含む強固なセキュリティ対策を講じる必要がある。現在および今後予想されるエッジの大きな課題は、その急速な普及に対して運用管理に必要なIT部門のリソースが足りていないという点になる。

 Shneorson氏は、Dell Technologiesではこうした課題を予見して、2年前からエッジシステムの運用管理に向けたソフトウェアソリューションを開発してきたと説明する。5月に開催した年次イベント「Dell Technologies World 2023」で、「Dell NativeEdge」として発表した。

 Dell NativeEdgeは、「ゼロタッチ導入」「ゼロトラストセキュリティ」「マルチクラウド接続」の3つの特徴があるという。

 Shneorson氏によると、ゼロトラストセキュリティとは、Dellの調達から提供までのサプライチェーンにおいて安全性を確認、保証した製品を利用する点になる。同社は、PCやサーバー、ストレージなどの同社製品の安全を担保しているとし、現時点においてDell NativeEdgeで運用管理できるのは、同社のエッジ向け製品のみになるとのこと。顧客ニーズに応じて、将来的にはサプライチェーンの枠組みで対象の拡大を検討していくという。

 ゼロタッチ導入は、上述のゼロトラストセキュリティに基づく同社製品であれば、IT担当者がいなくても、現場の担当者がエッジシステム機器の電源を入れて、ネットワークに接続すれば、Dell NativeEdgeからリモートで構成や設定、パッチの適用などができる。認可された信頼できるエッジ機器を運用管理する仕組みになる。

 マルチクラウド接続は、エッジとデータセンターを組み合わせたデータ処理やアプリケーションなどを実行するためのものになるという。Amazon Web Services(AWS)やMicrosoftの「Azure」とのセキュアな接続に対応している。

 Shneorson氏によれば、同社の調査では、85%の組織がエッジシステムのオンサイトでのインフラ導入に1週間から1カ月を要しており、パッチの適用に1~2日程度を費やしている。今後管理対象システムがさらに増加、分散すれば、人海戦術による運用管理が非常に難しくなることが予見されるという。このため課題の顕在化に先手を打って、エッジシステムをオーケストレーションで運用管理していく仕組みを開発した。

 「保守的な製造分野でもDXの必要性からエッジの取り組みを加速しており、流通分野はさらに動きが速い。電力やガスなどのエネルギー分野でもスマートメーター(高度型検針器)の展開が進んでいる。将来を見据えれば共通のアーキテクチャーで運用管理する必要がある」(Shneorson氏)

 エッジシステムの運用管理ソリューションでは、Dellとパートナー関係にあるVMwareも8月にソフトウェアソリューションの「VMware Edge Cloud Orchestrator」を発表した(関連記事)。Dell NativeEdgeと同様に「ゼロタッチ導入」やオーケストレーションによる統合運用管理性などを特徴づける。

 Shneorson氏は、「エッジの現状を踏まえて将来の課題を見据えれば、こうした運用管理ソリューションが必然になってくるのは当然のこと」と述べる。現時点で両製品はそれぞれ独立しただが、Dell NativeEdgeでVMwareの仮想化環境がインストールされたエッジシステムの運用管理もサポートとしているという。

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