東芝のトップが語るデジタル事業の現在–先端開発や事例の数々を披露

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 東芝デジタルソリューションズは11月28~29日、プライベートイベント「TOSHIBA OPEN SESSIONS 2023」をオンラインで開催した。「データのチカラで 世界をよりよい場所に」をテーマに、量子技術や生成AIなどデジタル技術による新たな価値創出の取り組み、デジタル人材、データ活用によるDXなどに関するセッションを実施した。

 初日は、東芝 代表執行役社長 CEO(最高経営責任者)の島田太郎氏が「データの力で社会にイノベーションを起こす~デジタルプラットフォームによる新たな価値創出~」と題して講演し、生成AIを切り口に同社のテクノロジーによる社会貢献事例などについても説明した。

 島田氏は、「話題を集めている生成AIだが、私は幾つかの課題を感じている」と切り出し、「データが足りない」「恣意(しい)的である」「電力消費が大きい」という3点を挙げた。

 データ不足については、2021年のあるイベントで、「AIはショボい」と自らが発言したことを振り返り、「『ショボい』というところだけが独り歩きしたが、言いたかったことは、AIを役立たせるにはデータをもっと増やさなくてはならない。サイバー空間にある言語モデルだけでなく、人とつながり、フィジカルからサイバーに移行するさまざまなデータを取り込まなくてはいけない」と述べた。

 続けて、「これらのデータ量は今後爆発的に増加し、サイバーからサイバーへのデータよりもはるかに多い。そのデータをキャプチャーするにはどうするか。スケールフリーなネットワークを活用しなくてはならない。ネットワークは、ハブになる少数の人たちとわずかな接点でしかつながっていない大多数の人で構成される。これは、人間が活動すると、自然に出来上がっていくネットワークであり、人の行動そのもの。『ChatGPT』は、すばらしい成果だが、マルチモーダルを想定し、もっとデータ量の多いところとつなぐことが本来のAIの進化には重要」と語った。

 2つ目の「恣意的」という課題では、ChatGPTを自ら利用した体験に言及。「東芝は、長年に渡り『人と、地球の、明日のために』という言葉を使ってきた。そこで、『パーパスがしっかりしている企業は株式価値が高いのか』とChatGPTに聞くと、『そうではない』と回答した」と述べ、「生成AIが炎上するような答えをしないに教育をしているという恣意性を感じる。RLHF(Reinforcement Learning from Human)は、ある特定の倫理観で行われており、さまざまな文化や民族、考え方が違う人がいる中、このままで良いのかと思うことがある。これからは、AIが分散化することで、AIのダイバーシティー(多様性)を実現することが人類にとって重要だと思う」とした。

 ここで島田氏は、東芝グループが展開しているスマートレシートにも言及。スマートレシートは、このサービスを利用できる店舗においてスマートフォンアプリでバーコードを読み取り、支払いを済ませると、すぐにスマートフォンでレシートを確認できる。島田氏は「自分の行動がデジタル化され、情報がコネクトされる」と表現する。現在の会員数は150万人を突破し、加盟店舗も増加しているという。2025年までに会員数1000万人、加盟店13万店舗を目指しており、「データ収集の基盤を確立したい」と意気込む。

 このインフラを活用して、さまざまな分析ができるようになるという。例えば、マイナンバーカードと連携することで、子育て支援のための公共予算が消費につながっているのかをリアルタイムに確認でき、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)が可能になるという。また、物価上昇を関わる分析をすれば、「ベビー用おむつは販売価格が高くなっても良いモノが購入される」傾向が分かり、そこから子育て支援の予算措置では、おむつに対して実施することが良いという判断も行えるとする。

 島田氏は、「AIで分析すれば、人々が求める政策をAIが提言するといったことも可能になる」とし、「共生し、つながる世界を作りたいという場合には、誰かが作ったAIを使うのではなく、私たちに寄り添ったAIを、人と地球と明日のための作り、使っていくことが大切である」とも述べた。

 3つ目の電力問題では、生成AIの進化が電力消費量を爆発的に増加させると指摘した。2040年にはAIの消費電力量だけで現在の世界の総発電量を超えてしまうという試算を示し、「この課題を解決し、AIによる素晴らしい世界を両立するには電力消費量を抑えることをもっと考えるべき。その解決策の一つが量子コンピューティング」と位置づけた。

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