船舶工学でAIの利用が困難な理由–専有データが導入の壁に
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「船舶海洋工学」という学問領域にはまだ200年ほどの歴史しかないが、その起源は人類が探検や通商のための船を建造していた古代文明にまでさかのぼる。アルキメデス、ブーゲ、チャップマンといったさまざまな偉人が、浮力や安定性、船舶設計などの、この分野の概念に関する理論や、科学や、手法を形式化してきた。
船舶海洋工学は、船舶や海洋構造物の設計、建造、試験、測量、保守、運用を網羅する工学の専門領域だ。筆者は、米国の沿岸警備隊士官学校で船舶海洋工学の学士号を取得したあと、カリフォルニア大学バークレイ校で修士号を取った。そしてこの22年間は、民間の海洋コンサルティング会社で、造船技術者として旅客フェリーや海洋調査船、はしけなどの設計に携わっている。
これまでに筆者は、浮きドックのような基本的なものから、1200フィート(約370メートル)の複雑なクルーズ船、外洋の小さな町として機能する航空母艦まで、さまざまなものを設計してきた。この分野の専門家が設計を手掛けるものには、他にも洋上風力プラットフォームや潜水艦、コンテナ船、無人運航船などの、水上や水中で活動するあらゆる浮体構造物が含まれる。
今の世代の造船技術者は、筆者自身も含めて、大学の授業では鉛筆やしない定規(製図に使われるしなやかに曲がる細長い自在定規)を使って設計図を描いた経験があるが、現在の設計プロセスには、機械学習を取り入れた高度なコンピューターアプリケーションも使われている。
船舶の線図は、その船舶の設計と建造を評価するために使われる船型を作るために使われる(訳注:ここで言う「船型」は、船舶の水面下の形状、あるいはその模型を指す)。鉛筆やしない定規を使って船舶を設計していた頃は、試行錯誤で線が描かれており、その滑らかさは目視で評価されていた。作業中は何枚もの紙が消しゴムのカスまみれになったものだ。しかし今は、過去のデータを収集・検証して開発されたアルゴリズムが使われた、船体線図の開発を支援するソフトウェアが存在している。
最近ではコンピューターの計算能力が向上したため、技術者がさまざまな変数をテストして船型の効果を評価する作業も数秒で終わるようになったが、以前はその作業に数時間から数日かかっていた。こうした計算は、何百年も前からある公式や科学的研究結果に基づいて行われている。またこれらのソフトウェアは、安全基準を満たすために最低限守らなければならない上限を定めた規制に準拠するための機能も持っている。