「Notion AI」導入企業に見る「生成AI導入時の検討プロセスと意思決定のポイント」
今回は「「Notion AI」導入企業に見る「生成AI導入時の検討プロセスと意思決定のポイント」」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、生成AI導入の最前線--「Notion AI」がもたらす業務変革の実例等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
2022年11月の「ChatGPT」の一般リリースを皮切りに世界中で「生成AI」が大きな話題となる中、その中核技術である「大規模言語モデル(Large Language Models:LLM)」への注目が高まっています。当社Notionでは、LLMを利用した生成AI「Notion AI」のアルファー版を2022年11月16日にローンチし、約200万人のウェイトリスト登録に対し、約100万人にいち早く利用いただきました。
また、2023年2月23日のNotion AI正式公開後には無料トライアルを実施し、2023年5月31日にはNotion AIによる「AI要約」「AI要点抽出」「AI自動入力」を組み込んだプロジェクト管理機能「Notionプロジェクト」を提供するなどして、Notion導入企業の皆さんにNotion AIを活用いただいています。
LLMを利用したSaaSとしていち早く生成AIを組み込み、また早い時期から多くのユーザー企業のフィードバックを得てきたサービス提供側の立場から、本稿では生成AIのビジネスユースに関してNotion AI導入企業を例に紹介したいと思います。第1回目となる今回のテーマは「生成AIの導入」です。
ChatGPTの登場以降、ビジネスの分野でもLLMへの関心が高まり、スタートアップから大企業まで業種・業態を問わず、生成AIの活用が模索されています。パナソニック コネクトのようにChatGPTをベースとしたAIアシスタントを全社導入した事例や、AIの開発と導入を促進する内容を経済対策に盛り組む日本政府の表明などを受け、今後ますます多くの企業で「社内のAI整備」が進んでいくことでしょう。
企業にとって従業員の生産性向上は、いつの時代でも大きなテーマです。そのためにさまざまなテクノロジーがこれまで導入されてきましたが、ChatGPTをはじめとする生成AIの業務利用がここまで注目を集めているのは、従来のどんなテクノロジーよりも、「同一時間内に多くのアウトプットを生み出せる」ことが明らかだからでしょう。大量のテキストデータを学習させて自然言語処理を行う「LLM」の出力精度の向上、そしてそうした新しいテクノロジーをチャット形式で誰もが簡単に使えることを可能にしたUI面でのイノベーションがその背景にあると思います。
このように生産性の観点からビジネスを一変させる可能性を秘める生成AIですが、その導入に関しては一部の先行事例を除き、多くの企業が検討段階のフェーズだと思います。では、生成AIの社内導入をどのように進めていけばいいのか?Notion AIの場合は、多くの企業がまずは実際の業務でトライアルを行い、従業員のアンケート調査を実施することから検討プロセスを開始しています。
例えば、グロービスではNotion AI導入前にトライアルを行ったところ、参加者の半数以上が「使い続けたい」と回答。「PM(プロジェクトマネージメント)業務が少なくとも半分以下に短縮可能」「テストコードを書く時間が減り、実装時間が3分の1程度短縮した」「グローバルミーティングでアジェンダや議事録を簡単に英訳できた」といった具体的な効果があったことから導入を決めました。
同様にトライアルを行ったLegalOn Technologies(以下、LegalOn)では「1作業において30%以上の業務効率化が進んだ」という回答が複数部署から寄せられたことが全社導入につながりました。このように、まずはトライラルを通して「実際の導入効果」を探ることが、Notion AI導入の第一の検討ポイントとなっています。ここで言う導入効果には、生産性の観点だけでなく、AIが出力するものが、自分たちがいつも使う図やフローチャートの形になっているかという利便性の観点も含まれます。
また、「自社の業務データが安全に保護されるか」という点も検討時に多くの会社で重要視されるポイントです。生成AIで業務データを処理した時にそのデータが学習モデルとして利用されると、情報漏えいのリスクが懸念されるからです。例えば、LayerXでは「Notion AIは自社のNotion上のワークスペース内だけで業務データが処理され、そのデータが学習モデルのトレーニングに利用されたり、第三者に出力されたりしない」ことを導入理由の1つに挙げています。
生成AIは新しいテクノロジーであるため、肝心の従業員にスムーズに使ってもらえなければ生産性の向上は期待できません。そのため「教育コストをかけずに利用可能か」「既存のデータをうまく活用できるか」も重要な検討ポイントになります。
たとえば、NTTデータやLayerXでは、従業員が日頃からドキュメントツールとして利用するNotion上で手軽に使えることを重視したと言います。また、生成AIを簡単に利用するためには「業務データがどこにあるか」も重要であることから、Sansanのように「AIに問う対象データがすでにNotionにあり、今後も増え続けていくこと」、そして生成AIを利用するために「(他のサービスとの)データ連携を作り込まなくても良いこと」を導入理由に挙げる企業もあります。
そして、生成AI、ならびに生成AIを組み込んだツールは今後さまざま登場することが予想される中、「導入後も長く使い続けるのか」という点も導入時に見極める必要があります。Sansanのように中心的なドキュメントツールとして今後もNotionを活用すると決めていれば、Notion AIがある前提で情報を蓄積することができ、AI自動入力機能を使って自動的にデータベースプロパティを目的に沿った形で増やしていけます。一方で、導入後に別のツールへの切り替えがすぐに発生してしまうと、導入効果はもとより、コスト面でも時間面でも大きな損失が発生してしまうでしょう。
ここまでをまとめると、Notion AIを導入いただいた企業においては「業務効果」「セキュリティ」「教育コスト」「利便性」「将来性」が導入時の大きな検討ポイントとなっています。Notion AIに限らず、どのような生成AIを導入する上でも、少なくともこれらの5つを総合的に判断して意思決定することが求められるでしょう。
加えて、最後にもう1つだけ大切なことを付け加えるならば、「なぜ生成AIを導入するのか」という「企業としての意思」も導入には不可欠になってきます。Notion AIの例で言えば、「トライアルでNotion AIを活用できなかったと答えたメンバーにこそ、AIの価値を理解して活用してもらいたい」(グロービス)、「既にNotionを利用中のユーザにAIを利用してもらい業務効率化を加速させ、AIの利用習慣を定着させたい」(NTTデータ)、「自社の競争優位を保つためにLLMに慣れて知見を深めてもらいたい」(LegalOn)、「自社サービスへのAI実装に関して従業員に関心を持ってもらいアイデア創出のきっかけを作りたい」(Sansan)といった意思が見て取れます。
生成AIを導入したとしても、すべての従業員が最大限活用して生産性が一足飛びにアップすることはすぐに期待できません。Notion AIの導入効果に関しては第2回目の記事で詳しくお伝えしますが、「何のために生成AIを導入するのか」という会社としての意思を導入時にしっかりと固めておくことが、生成AIの活用においてはもっとも大事となるでしょう。