「企業のIT投資は堅調」を疑え
今回は「「企業のIT投資は堅調」を疑え」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の一言もの申す等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
「企業のIT投資は堅調」――最近、幾人かのIT業界のキーパーソンに企業のIT投資の動きについて聞いたところ、異口同音にこう返ってきた。さまざまな市場調査レポートも同じトーンだ。だが、それをうのみにしていいのか。IT投資の中身が変質してきている中で、「堅調」の一言でスーッと受け容れていいのか。2024年の「一言もの申す」連載は、この問題提起からスタートしたい。
筆者がIT投資の話に疑問を抱いたのは、企業の情報システムのクラウド化やクラウドサービスの活用が進んで、いわゆる「所有」から「利用」へと変化する中で、IT投資の在り方そのものを見直す必要があるのではないかと考えたからだ。さらに、ここ数年、企業の基幹をはじめとした情報システムを対象とするITに加え、事業部門の現場にもデジタル技術を生かそうというデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きが出てきている中で、IT投資にDXは含まれるのか。それとも別物か。それによってもIT投資の捉え方は大きく変わってくる。
これからIT投資をどう捉えていけばいいのか。IT投資の中身が変質してきている中で、立ち止まって考えてみる必要があるのではないか。
そこで、今回は、2001年からIT投資動向調査を毎年実施し、調査結果を公表し続けているアイ・ティ・アール(以下、ITR)のプリンシパル・アナリスト 三浦竜樹氏、シニア・アナリスト 水野慎也氏、シニア・アナリスト 入谷光浩氏のお三方とオンラインでディスカッションしながら、IT投資の在り方、捉え方について考えてみた。お三方は同調査を担当している、この分野のエキスパートである。
ちなみに、ITRが先頃発表した「IT投資動向調査2024」では、「2023年度に強まったIT予算の増額基調が2024年度も継続する見込み」としている(図1)(関連記事)。
では、お三方に話を聞いていこう。まず、IT投資の在り方についてはどう見ているのか。
「私がIT投資の在り方として問題提起したいのは、多くの企業が長年にわたって売上高に占める割合(2.5~3.0%)でIT投資額を固定的に決めているように見受けられることだ。その投資額が決まってから、費用がかかるところに分配している形だ。そうではなく、企業がこれから成長していくために、どこにどれだけの投資をしていく必要があるか、その中身を詰めた上で、経営判断としてIT投資を行っていく姿勢で臨むべきではないか」(三浦氏)
「IT投資の在り方は新型コロナウイルス感染拡大の前後で大きく変わった。コロナ前までのIT投資は業務の効率化や生産性向上を目的としていたが、コロナで経営としてレジリエンス(回復力)が問われた際にITというかデジタル技術がかなり使えると認識されるようになり、企業として売上高が落ちてもIT投資は落ちなかったという現象が起きた。そこからビジネスの成長へつなげようという機運が少しずつ出てきているように感じている」(入谷氏)
三浦氏の指摘は、日本経済が「失われた20年」あるいは「失われた30年」と言われてきたことと無縁ではないかもしれない。また、入谷氏の見方からは、IT投資の中身の変質にDXがどれだけ影響しているのか、そもそもIT投資とDXの動きは別物なのかといった疑問が浮かび上がる。この点についてはどう見ているのか。