デジタル教科書の活用で児童・生徒の思考時間が増加–DNPら、研究成果を発表
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大日本印刷(DNP)と相模原市教育委員会、ネットワンシステムズ、光村図書出版、放送大学学園は1月30日、デジタル教科書を活用した共同研究事業の研究成果を発表した。研究結果から、デジタル教科書を活用した授業において、児童・生徒の主体的な活動時間と対話を行う活動時間が確保されたことが分かったという。
共同研究では、光村図書出版が提供する「⼩学校国語学習者用デジタル教科書+教材」などのデジタル教科書を活用した授業方法を開発し、相模原市の小・中学校を対象に2022年4月から2023年3月まで取り組んだ。この研究は、デジタル教科書や授業支援ツールなどを用いた授業を通した教員の授業・指導方法の開発や評価改善の研究だという。また、収集した学習履歴データの活用や児童・生徒の主体的に学習に取り組む態度の育成につなげることも目的にしている。
デジタル教科書を活用した授業方法の開発では、実証授業前に教員と研究メンバーで指導案を検討し、児童・生徒の主体的な活動時間や対話を行う活動時間の確保を意識した指導案を作成。その上で、デジタル教科書の操作方法や活用方法について教員と児童・生徒で学び合う時間を取り、授業を実施した。また、授業後の記録を基にした協議を経て、授業の在り方を記録したという。
実証授業の結果、学習者用のデジタル教科書は書き込みができるため、黒板の内容をノートに書き取る時間が減り、授業中の児童・生徒の思考時間が増えたという。これにより、考えをデジタル教科書や授業支援ツール上で整理する時間が創出され、児童・生徒同士の意見を交流する活動が活性化した。
ほかにも、読み物教材から本文や挿絵などを抜き出して自分の考えをまとめることができる「マイ黒板(本文抜き出し機能)」やデジタル教科書に、児童・生徒が書き込んだことがデジタルデータとして記録が残ることで、個人の学びの過程が可視化できるようになった。
また、中学校の生徒を対象に、自分の学びを客観的に振り返る「振り返りシート」を活用し、毎時間の授業の内容を自分自身やほかの生徒の言葉で記録し、単元の最後に授業全体の振り返りを行った。これらの学習成果物をデータとして継続的に蓄積・可視化することで、児童・生徒が自ら学習を分析し、自己調整する能力につながったとしている。
実証授業に参加した中学生31人を対象にしたアンケートでは、「本文への書き込みやマイ黒板を利用し学習に取り組みやすくなった」に対して「そう言える」「どちらかと言えばそう言える」と回答したのは27人。「デジタル教科書を使用することで自分の考えを整理し、表現しやすくなった」に対して「そう言える」「どちらかと言えばそう言える」と回答したのは25人で、約80%の生徒がデジタル教科書を肯定的に捉えていることが分かった。
DNPは、2023年度も相模原市をはじめとした複数の自治体において、学習データの活用に関連する共同研究を進めている。これらの実証の成果を基に、教員や児童・生徒が学習データを活用できるシステムの開発を行い、2024年度内の本格的なサービス化を目指すとしている。