千葉大学病院とNTT Com、薬剤耐性菌の地域間ベンチマークシステムを開発
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千葉大学病院の次世代医療構想センターとNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、日本で初めて自病院と二次医療圏単位で薬剤耐性菌の出現状況を可視化・比較可能なベンチマークシステムを開発した。2月から同システムを活用し、千葉県における「薬剤耐性菌動向調査研究」に取り組む。
このシステムには、「院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)」で収集しているデータを活用する。また、データを秘匿化したまま分析可能なソリューション「析秘(せきひ)」を活用している。析秘はNTT Comが提供しているサービスで、秘匿化データの分析を行い結果のみを出力する秘密計算をウェブブラウザー上で利用できる。
二次医療圏は救急医療を含む、一般的な入院治療が完結するように設定された区域を指す。一般的には複数の市区町村で構成されている。
薬剤耐性菌動向調査研究では、同システムを用いて千葉県にある9つの二次医療圏内病院で2026年3月まで行う。これらの病院で厚生労働省の院内感染対策サーベイランス事業で収集している細菌検査データを析秘にアップロードする。
その上で各病院の薬剤耐性菌出現状況を秘匿化した状態で分析し、自病院、二次医療圏および都道府県単位での薬剤耐性菌の状況を可視化・比較を行う。また、時系列での分析を行うことで、対策後の効果についても確認することが可能。参加施設数は随時増える見込みだという。
中小規模の医療機関は、都道府県単位の薬剤耐性菌動向調査への協力では抵抗感が低い傾向にある。しかし、より細かな地域単位での調査の場合、自施設の動向を近隣施設に知られることへの懸念があり、データの共有が進まないことも珍しくない。析秘を活用することにより、各施設の情報を保護しつつ動向調査が可能となる。
近年、抗菌薬が効かない、または効きにくいという薬剤耐性をもつ菌 (薬剤耐性菌)が世界的に増加しているという。これは、抗菌薬などの過剰処方や、患者が処方された抗菌薬の服用を途中でやめてしまうなどの不適切な使用が要因だと考えられている。
WHOの調査では、何も対策を取らない場合2050年には世界中で年間約1000万人の死亡が想定されており、これはがんの死亡者数を超えるとされている。日本では2016年と2023年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が策定され、さまざまな調査事業が展開されている。しかし、これらの事業は参加施設が大規模な医療機関であることが多く、中小規模の医療機関については実態の把握や対策が困難となっている。
今後は今回取り組む研究に加え、千葉県内の抗菌薬処方データと同研究の結果を組み合わせ、薬剤耐性菌と抗菌薬処方の関係性を明らかにすることを目指している。