大和ハウス工業とNTT Com、ドローンによる点検管理の実証公開–大型化する倉庫に対応

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 大和ハウス工業とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、2023年8月からマルチテナント型物流施設「ダイワハウス プロジェクト ロジスティクス」(DPL)で、ドローンやAIなどの先進技術を活用した無人点検管理の実証実験を実施している。両社は3月18日、埼玉県の「DPL久喜宮代」でフィールド実証の様子を公開した。

 この取り組みでは、物流倉庫における点検業務の負担軽減、点検記録の図面上での検索、点検報告資料の自動作成・情報蓄積など、点検業務の効率化を図るほか、AIを活用した画像解析による異常の通知、災害時の現地確認作業のスピード向上など、高度化と高速化も目指している。

 これまで両社は物流施設における職場環境の改善に向けて、NTT ComのAI映像解析ソリューション「COTOHA Takumi Eyes」を活用して、利用者のマスク着用有無や施設内カフェテリアの混雑度を検知する実証実験を千葉県の「DPL市川」で実施したり、熱中症やインフルエンザの発生リスクを可視化するNTT Comの「倉庫環境監視IoTソリューション」を静岡県の「DPL新富士Ⅱ」で運用したりしてきた。

 大和ハウス工業は、建設事業において物流倉庫の建設・貸し出し・維持管理などを行っている。点検業務では、倉庫のシャッターやガードポール、消火器などの設備に損傷がないかを確認し、事故や業務の滞りの防止に努めている。業務が遅延するとトラックドライバーの待ち時間も長引き、トラック運転手の労働規制による人材不足が懸念される物流業界の「2024年問題」にも関わってくる。同社 建築事業本部 担当部長の石川一郎氏は「損傷をいち早く検知し、手を打つことはわれわれの責務」と述べた。

 しかし、デジタル化に伴う物流倉庫の統廃合などにより、近年建設される倉庫は大型化の傾向がある。大和ハウス工業の物流倉庫のうち、最大物件である「DPL流山IV」の面積は、2019年頃に最大だった「DPL横浜大黒」の約2.2倍に及ぶ。

 石川氏は「DPL流山IVの面積は約10万平米で、1フロアを点検するには1万歩ほど歩く必要がある。4階建てなので約4万歩になり、その業務を1日に3~4回行っている。数人で分担しているものの、前時代的な仕事のやり方ということは否めない。ドローンを活用することで、物流を止めないための点検業務をもっと効率良く高度に行いたい」と協業の背景を説明した。

 協業では、物流施設の無人点検管理を実現するソリューションの開発を目指しており、2025年度から全国のDPLに順次導入することを予定している。点検範囲はテナント企業の共用部分を想定しており、点検業務にかかる時間を約3割短縮できると見込んでいる。

 実証実験では、物流施設においてNTT Comが販売する米Skydioのドローン「Skydio 2+」などを遠隔操縦し、自動巡回を行うソリューション「Skydio Dock and Remote Ops.」で画像データを取得する。Skydio 2+は、屋根の下など全地球測位システム(GPS)の電波が届かない場所においても飛行するのが特徴だ。

 スマートシティーに関する分野横断での全体最適を支援するNTT Comのデータ連携プラットフォーム「Smart Data Platform for City」(SDPF for City)にデータをアップロードし、AIで解析することで設備の損傷や不審物などの異常を検知する。

 2023年度の実証実験の期間は、2023年8月1日~2024年3月31日。2023年9月20~22日と2024年3月18~19日の2回にわたり、DPL久喜宮代でフィールド実証を行った。1回目は、教師データとして4500枚の画像を撮影し、AI基盤に学習させた。ダミーの傷を用意して検知率を測定したところ、精度は9割前後だったという。2回目となる今回は、SDPF for Cityと各クラウド基盤を介したデータ連携を検証する。

 2024年度以降は、取得した画像データを基に「AI画像解析システム」を活用して対象物の検知・画像解析・ロジック判定に取り組む。異常を検知した場合は、建物管理者や警備員に場所と内容を発信するとともに、報告書を自動作成することを目指す。

 取材会では、ドローン飛行のデモンストレーションを車路で実施した。Skydio 2+はGPSの電波が届かない屋根の下でも飛行し、Skydio Dock and Remote Ops.のもとに戻るとインターネットに接続して画像をアップロードする。地上から550センチメートルほどの高さでトラックの上を飛行し、停止したタイミングで撮影している。

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