デジタル化などを背景にしたコア業務への集中とBPOの動向
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パーソルプロセス&テクノロジーは、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)の動向に関するメディア向けの勉強会を開催した。企業では、DXなどを背景にコア業務への注力への推進が課題になり、同社はBPOの高度活用がポイントだと解説する。
勉強会の冒頭では、人的資源管理分野を専門とする東京経済大学 経営学部の関口和代教授が、BPOの現状や活用に向けた課題などについて紹介した。
関口氏は、10年ほど前よりBPOに関する調査研究に取り組んでいるという。当時は、例えば、IT関連では中国を中心とするオフショア開発などが中心だったが、当地での人件費の上昇などを受けて、現在ではベトナムなどが中心となった。
ただ、BPOを利用する日本企業側の認識は、データの入力といった大量の単純作業を外部に委託するといったものから大きく変化しておらず、関口氏が予想したほどには、BPOの利用が広がっていないという。他方で、海外の企業は、以前よりBPOを戦略的に活用し、自社の経営資源をコア業務に集中させるスタイルが定着している。
関口氏によれば、日本企業の認識は従来型のアウトソーシングの域であり、BPOは定型業務のデジタル化や自動化、省人化を図る高度な業務処理になる。さらに、コア業務領域も対象として、業務プロセスの改善や業務全体の再構築による最適化を実現する「ビジネストランスフォーメーションアウトソーシング(BTO)」という概念もあるという。
日本企業が今後のビジネス成長や生産性向上を実現する上では、BPOやBTOの活用がポイントになるという。背景には、国内労働人口の減少と人材不足、DX推進や生成AIなど新興技術の台頭、リモートワークやビジネスのグローバル化などがあり、企業は限られたリソースをコア事業に集中させて、これらに対応していく必要がある。
日本では長らく業務の現場が強く、企業独自あるいは個々の従業員の仕事のやり方が重視されてきたとする。例えば、業務システムについて、海外ではパッケージソフトウェアに業務のスタイルを合わせて標準化をしているが、日本では自社にカスタマイズすることが求められてきた。これでは、スケールメリットを生かし切れず、業務品質の向上なども難しい。
日本企業がBPOやBTOを活用していくには、まず業務の現状の洗い出しと見直しを行い、コア業務とノンコア業務の分類と評価が必須になる。既に表面化している業務だけでなく、水面下でコストとなっている業務もきちんと洗い出すことが重要であり、こうした伝統的な業務のスタイルや価値観を変えていくことが求められるという。アウトソーシング先を“下請け”とする感覚もあるが、BPOやBTOにおいては“ビジネスパートナー”との認識を持つこともポイントになる。
関口氏は、BPOやBTOのサービスを提供するベンダー側にも変革が必要だと指摘する。顧客である委託元企業のニーズに合わせるだけの“御用聞き”スタイルでは不十分で、顧客の“ビジネスパートナー”としてベンダーのリソースを最大限に生かした付加価値の創造を提案でき、顧客の業務全体における高度化の実現を支援できることが求められる。
上述した顧客側の日本企業が直面する状況を踏まえ、BPO/BTOベンダー側では、自社リソースをITやデジタルなどへ対応できるようにする教育を推進し、DX人材の獲得と確保を図るほか、それらリソースが顧客の信頼に応えるものであることを外部評価などによって示す必要もあるとした。高い専門性や士業との連携、顧客の業界や規模に応じてパッケージ化したサービス提供なども必要になるとした。
パーソルプロセス&テクノロジー 執行役員 ビジネスエンジニアリング事業部長の小野陽一氏は、関口氏の解説を踏まえて、BPOベンダーの立場を、顧客の業務を受託するだけではなく、業務プロセス全体にわたる企画、設計、構築、改善の実績とフレームワークでもって高度化、改善を図り、ビジネスの競争優位性や生産性向上などの実現に貢献できる点だと強調した。
同社は、ITアウトソーシングを中核として実績を高めてきたとし、現在ではBPOを通じたバリューチェーンの再構築を顧客に訴求。新しいビジネス領域として、ドローンや脱炭素化の領域におけるBPOに取り組み、事業自体の構築から運営までを支援しているという。
例えば、KDDIがドローンを新規事業として推進する中で、ドローンを使った物流の実証実験などを支援し、事業化において同社の担当チームと連携しながら事業の推進、技術開発のプロジェクト管理、営業支援、サービス開発・運用支援までに携わった。現在は「KDDIスマートドローン株式会社」として事業を展開する。
また、脱炭素の領域では、二酸化炭素(CO2)の排出削減のコンサルティングサービスを事業化する金融機関を支援して、サービスの開発、企画、設計、推進を支援したほか、ある化学メーカーに対しては、サプライチェーンに参加する約60社を対象としたスコープ3におけるCO2排出量データの収集からレポート作成までの仕組みづくりを支援したという。
小野氏は、今後のBPOではデジタル領域が重要になると述べ、4年ほどをかけて約5000人の同社の全人材のデジタル教育を推進したと説明。「最低でも全員がローコードで業務アプリケーションをすぐに開発できる」スキルを醸成しているという。多くの企業が試行に取り組み始めている生成AIも今後BPOのニーズが高まるだろうと予想し、同社のコンタクトセンターにおいて大規模言語モデル(LLM)を含む生成AIを活用する基盤の開発や活用のノウハウ蓄積を進めているとアピールした。