NTTら9社、ソフトウェア開発におけるCO2排出量の算定ルールを策定
今回は「NTTら9社、ソフトウェア開発におけるCO2排出量の算定ルールを策定」についてご紹介します。
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NTTなど9社は、ソフトウェア製品に関する二酸化炭素(CO2)排出量の算定ルールを策定したと発表した。NTTのグリーンソフトウェア開発および運用技術の知見や実験データを基に受託開発ソフトウェア製品のCO2排出量算定ルールを策定、ソフトウェア製品のグリーン調達の実現により、サプライチェーン全体のCO2排出量削減に貢献することを目指す。
ルール策定には、NTTデータグループやNTTアドバンステクノロジ、NTTテクノクロス、NTTコムウェア、クニエ、日立製作所、NEC、富士通が参画した。経済産業省のカーボンフットプリント ガイドラインに整合した算定および比較ができる。
記者向けの説明会でNTTソフトウェアイノベーションセンタ 開発・運用技術プロジェクト担当課長の大島剛志氏は、「グリーンな製品への関心が高まり市場が拡大する中、製品単位のCO2排出量の算定と開示が求められている。ハードウェアの省電力化などは進められてきたものの、ソフトウェアの脱炭素化の取り組みはあまり注目されてこなかった。また、ソフトウェア製品に関しては、開発費に基づくCO2排出量の算定方法しかなく、その結果、必要以上に大きな算定値になることや、昼休みに(開発に使う)PCの電源を落としたりディスプレイの輝度を抑えたりといった開発者の削減努力を反映した算定ができないといった課題があった」と今回のルール策定の背景を語った。
ソフトウェアは無形なものであることに加えて、ハードウェアなどの工業製品に比べて、生産する場所や工程が不明瞭であるといったソフトウェアのライフサイクルにも特殊性があり、標準的な算定ルールが確立されていなかった。
その一方で、IT産業ではデータセンターの消費電力量の増加などが大きな課題となっているが、ソフトウェアは直接CO2を排出するものではないという認識があり、CO2排出量の算定に関心が薄いといった状況も見られていた。だが、サーバーやPCの制御はソフトウェアで行っており、間接的にCはO2排出に関与しているともいえる。また、AIなどのソフトウェア技術の進展がデータセンターの消費電力の増加に大きく影響しているという実態もある。大島氏は、「こうした観点から見れば、ソフトウェアはイメージよりもCO2の排出に大きく関わっている」とも指摘する。
2021年には、MicrosoftやNTTデータ、アクセンチュアなどが中心となり、「Green Software Foundation」を設立。グリーンなソフトウェア運用に向けた標準化やツールの提供、ベストプラクティスの提案や教育などを提供する。2030年までにICT分野における温室効果ガス排出量の45%削減への貢献を目指すといった取り組みも始まっている。
さらに、サプライチェーン全体でのCO2排出量削減への関心が高まる中、ソフトウェアに関しても、企業全体でのCO2排出量算定ではなく、個々の製品のCO2排出量の算定が求められるようになってきた点も見逃せない。
大島氏は、「ソフトウェアはあらゆる製品の中に組み込まれており、実態を精緻(ち)に反映した算定方法がないと、サプライチェーン全体のCO2排出量削減にはつながりにくい。この仕組みをソフトウェア業界に広げ、さらに、将来的には業界横断での連携も図っていきたい」と語る。試算によると、半年間にわたって5人の開発者が通勤し開発するプロジェクトの場合、CO2排出量は20トン程度になるという。
今回策定したCO2排出量算定ルールでは、先述のように、NTTが取り組んできたグリーンソフトウェア開発および運用技術をベースにしている。
NTTソフトウェアイノベーションセンタ 開発・運用技術プロジェクト研究主任の篠塚真智子氏は、「より少ない電力とより少ないハードウェアを賢く利用し、ITシステムの開発および運用におけるCO2排出量の削減に寄与するソフトウェア技術であり、どのぐらいのCO2を排出しているのかという実態を把握することから取り組んできた」とする。
NTTでは、ソフトウェア開発時の消費電力を計測するために、サーバーやPCなど1台ごとに電力計を接続して計測する実験を行うとともに、それに基づくライフサイクル分析を実施した。CO2排出の主要因となる活動やプロセスを抽出し、CO2排出量の算定および可視化、削減手法の確立とガイドラインおよびツールなどの整備を行ってきた。
これらの実績をもとに、2023年8月にスタートした経済産業省の「令和5年度GX促進に向けたカーボンフットプリントの製品別算定ルール策定支援事業」に参画し、ほかの8社とともに、約半年間をかけてCO2排出量算定ルールVer1を策定したという。策定においては、対象をウェブアプリケーションの受託型開発に絞り込み、原材料調達段階から生産段階までを網羅した。
「受託開発ソフトウェアは一品ものであり、プロセスが定型化されていないという特徴があったこと、無形であるため工業製品などに比べどんな材料が購入されたのかが目視できない点での難しさがあった。まずは共通的なプロセスやCO2排出源を定義し、ライフサイクルフロー図を作った。また、開発者が利用している機器や設備の消費電力と、開発した個々のソフトウェア製品との紐づけ方法を規定し、開発者の削減努力の反映できるようにした」(篠塚氏)という。
さらに、ソフトウェア製造前の算定や比較もできるようにした。設計値を用いてCO2排出量を算定できる仕組みを取り入れることで、入札時をはじめとして、ソフトウェアを開発する前段階にCO2排出量の開示が可能になる。篠塚氏は、「完成後のみならず製造前のCO2排出量の算定が可能になることで、CO2排出量を提示したアプローチができ、顧客企業はソフトウェア製品のグリーン調達につながる」と述べた。
今後は、算定ルールを活用した実証実験やソフトウェア業界企業とのさらなる議論を通じて、ルールの実用性向上や、グローバルなコンセンサスの形成を目指すほか、2025年以降は、脱炭素なソフトウェアビジネスへの適用により、ソフトウェア製品のグリーンな調達を実現する考えだ。「まずは事例を積み重ねていくことが大切である。環境性能をビジネス価値の中心に置いたソフトウェア開発、運用を実現することで、サプライチェーン全体の脱炭素化に貢献したい」(篠塚氏)という。