AI PCの普及で「再び来るか、分散型コンピューティングの時代」
今回は「AI PCの普及で「再び来るか、分散型コンピューティングの時代」」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の一言もの申す等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
AIテクノロジーを実装したPC(以後、AI PC)が、生成AIの活用とともに普及していきそうだ。大手PCメーカーは相次いでAI PCの商品化に注力しており、IT市場では今後「PC特需がやってくる」との見方も。だが、この動きはもっと大きな市場のパラダイムシフトをもたらすのではないか。それは「分散型コンピューティング時代の到来」だ。どういうことか、日本HPの記者会見から探ってみたい。
「当社は1月にAI PCの第一弾商品を発表し、2024年は『AI PC幕開けの年』になると宣言した。今回、個人、法人、プロフェッショナルに向けて新商品を一気に拡充した。新たなAI PC市場でHPのブランドを一気に浸透させていきたい」
日本HP 執行役員パーソナルシステムズ事業本部 本部長の松浦徹氏は、同社が3月27日に都内で開いた新製品発表会見でこう意気込んだ(写真1)。
同社が今回発表したAI PC新商品群は、図1の通りである。特に法人向けは「AIのパワーを活用してハイブリッドワークにおける生産性、創造力、ユーザーエクスペリエンスを向上させた」(松浦氏)のが特徴だ。
同氏は自社で実施したAIと仕事との関係性についての調査から、図2に示した結果も紹介した。それによると、世界および日本のビジネスリーダーやナレッジワーカーの多くは、「AIは仕事との関係性の改善に重要な役割を果たす」と答えた。また、ナレッジワーカーの多くが、「AIは仕事を楽しむ新たな機会をもたらす」とも答えた。こうした結果を踏まえ、同氏は「AIは従業員の生産性を根本的に変革する可能性がある。企業はAIの活用に今すぐ着手すべきだ」と訴えた。
今回の日本HPのAI PC新商品群の詳しい内容については発表資料を参照していただくとして、以下では同社の会見を踏まえ、AI PCのさらなる可能性について探ってみたい。
実は、今回の会見では言及がなかったが、1月の会見で同社 代表取締役 社長執行役員の岡戸伸樹氏が述べていた次の発言が、筆者には強く印象に残っている。
「今、AIを利用するとなると、ほとんどのツールがクラウド経由になる。ただ、これからAIがさまざまなシーンで使われるようになると、クラウド経由ではレイテンシー(遅延時間)などの問題が大きくなってくる。そうなると、エッジ側でAIの多くの処理を行うニーズが高まってくる。AI PCはまさしくそのニーズに応えるものになる。処理時間としては、クラウド経由よりもローカル(エッジ)の方が5倍ほど速くなる可能性がある。しかもコストにおいても、エッジAIを使うことでクラウド経由よりも最大8割削減できると、われわれは見ている。そう考えると、AIは今後、エッジでどんどん使われるようになっていく」
ちなみに、1月の会見での上記を含めた岡戸氏の発言については、本サイトでの筆者のもう一つの連載「今週の明言」の2024年1月26日掲載「日本HP社長が説く『AI PCがこれから求められる理由』とは」で紹介しているので参照していただきたい。
岡戸氏の上記の発言から、筆者は「AI PCの普及が分散型コンピューティング時代の到来につながるのではないか」と考えた。その見方について、以下に説明していこう。