銀河英雄伝説で考えるセキュリティ–物語と重なる“増え続けるセキュリティの重いコスト”
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本連載「企業セキュリティの歩き方」では、セキュリティ業界を取り巻く現状や課題、問題点をひもときながら、サイバーセキュリティのスキルを向上させていくための視点やヒントを提示する。
壮大なスケールの物語である「銀河英雄伝説」の世界観を題材にセキュリティを解説している。これまで、大きくキャラクターの異なる2人の主人公「ラインハルト・フォン・ローエングラム」と「ヤン・ウェンリー」の立ち位置やその主戦場となる「イゼルローン回廊」をめぐる攻撃側と防御側の動きについて述べた。
そのイゼルローン回廊に帝国が設置した軍事要塞である「イゼルローン要塞」は、ハードウェアとして非常に優秀な防御の仕組みであり、「難攻不落の要塞」と評しても良いものだった。しかし、だからこそ建設した帝国も、攻略を目指す同盟も、この要塞とその攻防に固執し続けた。そして、両陣営は10回以上の攻防を続けたことで膨大な犠牲者を出すに至った。今回は、そのような悲しい歴史を持つイゼルローン回廊と要塞の攻防戦全体をサイバー攻撃に絡めて述べていく。
銀河英雄伝説では、「銀河帝国」(以下、帝国)と「自由惑星同盟」(以下、同盟)の両陣営が長きにわたり戦争を続けている。しかし、実のところ両陣営が戦争をする理由がほとんどない。なぜなら、両陣営は、それぞれの領内でのみ経済活動を行っており、それで国家が成立しているからだ。客観的に見て、領外に進出しなければ存亡の危機に陥ってしまうような状況ではない。例外的に「フェザーン自治領」を経由した交易などはあるものの、両陣営はあくまで独立した存在だ。
それでも、両陣営は帝国が同盟の存在を認識した瞬間から長い戦争を続けている。その理由はイデオロギーの違いだ。帝国には、現実世界の古代~中世のように皇帝がいて、その皇帝による専制君主制だ。一方の同盟は、共和制民主主義の政治体制を敷いている。この政治体制の違いだけで100年以上戦争を続けているのだ。
イデオロギー的には、専制君主制が悪政をして民衆が苦しんでいる描写も見られることから、読者は同盟の政治体制にシンパシーを持つ人が多いと思われる。しかし、同盟政府も現代の日本や世界の政治以上に腐敗している状況が散見されるのだ。結局、現代の世界がそうであるように、銀河英雄伝説においても両陣営は、自分たちの主義主張を相手に押し付けたいという欲望のままに戦争を始め、惰性のようにそれを続けているだけなのかもしれない。