ライフサイエンス業界が抱える膨大なデータとAIの有効活用–AWSの支援体制

今回は「ライフサイエンス業界が抱える膨大なデータとAIの有効活用–AWSの支援体制」についてご紹介します。

関連ワード (クラウド等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がライフサイエンス・ヘルスケア業界全体の変革を加速させた」――。そう語るのは、Amazon Web Services(AWS)でヘルスケア・ライフサイエンス インダストリービジネスユニットを統括するDan Sheeran(ダン・シ―ラン)氏だ。

 従来、10年近くかかっていたワクチン開発は1年に短縮され、実施中の臨床試験の半数以上をリモートワークやオンラインに移行することで大部分を継続することができた。また、ライフサイエンス業界では、データ共有と分析に関する官民連携やコラボレーションが始まっている。

 AWSは10年以上にわたり、ライフサイエンス業界をけん引する企業の課題解決を支援してきた。これまで、米国食品医薬品局(FDA)による報告業務のデジタル化支援から、研究者によるUK Biobankへのアクセス提供、ModernaによるCOVID-19のワクチン開発支援などを行ってきた。

 Sheeran氏は、デジタルやIoT、AI、機械学習(ML)の活用が、医薬品開発や臨床試験における患者とのエンゲージメント、ワクチン製造の改善につながることが明らかになり、ライフサイエンス業界ではクラウドの活用が新たな標準として確立されていると指摘する。

 ライフサイエンス企業では、リアルワールドデータ(RWD)や科学論文などの社外データにアクセスして洞察(インサイト)を得るまでの時間を短縮し、イノベーションの速度を高め、新たな治療法をより早く市場に投入するためにエンドツーエンドのデータ戦略の策定が重要だという。しかし、ライフサイエンス業界の97%は非構造化データで、有効な活用が阻まれている。

 製薬企業では、社員がデータの検索や取得、クリーニングに労働時間の最大80%を割いている一方で、本来取り組むべきサイエンスやビジネス上の課題解決には20%しか割くことができていないという。また、研究者が自社のデータに気付かない、あるいはアクセスが限定的である結果、反復的な作業が発生したり、組織内でのインサイトを共有する機会を逃していたりといった爆発的なデータの増加による課題がある。

 AWSは、費用対効果や拡張性が高いコンピューティングやストレージ、データ分析、データベースなどの提供を通して、科学的知識から新たな治療法の開発までの時間短縮を支援している。特にAIやMLサービスは、膨大な医療データの活用に寄与しているという。

 Sheeran氏によると、ライフサイエンス業界の顧客が利用できるデータは豊富だが、さまざまな提供元、フォーマット、モダリティー(医薬品を作成する基盤技術の方法・手段)の中から有意義なインサイトを引き出すには、データを標準化し、分析できるようにまとめる必要がある。このようなデータからシグナルを見つけることは時間とコストがかかり、実行可能なアウトプットが得られないことから市場投入まで長期間かかってしまうという。

 ライフサイエンス業界向けのサービスとして同社は、オミクスデータをインサイトに変換する「AWS HealthOmics」や医療画像をペタバイト規模でクラウドに保管・分析・共有する「AWS HealthImaging」、医療データの保存から変換、分析を数分で実行する「AWS HealthLake」などを提供。「AWSは、ライフサイエンス業界の顧客がデータを最大限に活用し、患者予後を向上させるための実用的なインサイトを得られるように支援していく」ことが目標だと同氏は語る。

 生成AIの活用も進んでおり、製薬企業のPfizerでは、生成AIサービス「Amazon Bedrock」とMLサービスを活用し、プロトタイプを数週間で立ち上げ、科学的・医学的なコンテンツの生成から製造まで行った。これによりPfizerは、年間7億5000万~10億ドルに達するコスト削減を見込んでいるという。

 ライフサイエンス業界では、製薬のバリューチェーン全体にわたって生成AIの活用をAWSと協力している。例えば、生成AIを活用することで、論文などの膨大な資料から重要なインサイトを分析して創薬研究の加速を図ったり、大量のデータセットを分析し、潜在的な薬物の副作用を特定したりできるとしている。また、製造工程のガイドラインとの適合性チェックなどによってコンプライアンス違反や不正を特定し、製造工程管理の強化を促すこともできる。

 活用事例はPfizer以外にもあり、バイオ製薬会社であるAmgenは、Amazon BedrockとMLソリューションの「Amazon SageMaker Jumpstart」を活用し、医薬品の発見と開発、製造工程におけるスループットの向上に向けて生成AIベースのソリューションを開発している。Amgenが米国オハイオ州コロンバスに開設予定の医薬品の組み立て(アッセンブリー)・最終パッケージング施設においても、AWSのインフラストラクチャーとクラウドサービスを活用して、デジタルデータ・分析を強化し、施設のオペレーション効率と持続可能性を高めていくとしている。

 ライフサイエンス業界では、オンコロジー(腫瘍学)領域における新たな創薬標的の特定に生成AIを活用するケースもあるという。AIは、多くの情報源から関連データや科学コンテンツを短時間で特定して照合する上で役立つ。さらにAIアルゴリズムは、傾向を評価して潜在的なターゲットを特定し、より迅速に検証し、最終的に成功確率を高めることができる。また、臨床試験の設計と実施に必要な時間を短縮し、成功率を向上させるためにAIを活用することにも注目が集まっているという。

 Sheeran氏は、「お客さまは生成AIの構築方法を柔軟に選択できる」ことがAWSを選ぶメリットだという。例えば専用のML向けインフラストラクチャーで顧客独自の基盤モデルを構築できたり、トレーニング済みの基盤モデルを活用して生成AIアプリケーションを構築できたりする。ほかにも特定の基盤モデルに関する専門知識が不要で、あらかじめ生成AIが組み込まれたAIサービスを利用できる。

 AWSの顧客からは、基盤モデルの選択肢の多さや、セキュリティが組み込まれている同社の生成AIに対するアプローチが評価されているという。Sheeran氏は、「AWSは全てのユースケースに最適化された単一の基盤モデルは存在せず、基盤モデルの選択肢が最重要であることを理解している。当社は、お客さまのユースケースに適した基盤モデルの選択を支援している」と強調した。また、差別化につながらない多くの作業をAWSがサービスを通して引き受けることで、顧客はアプリケーションやサービスの構築に集中できているという。

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