「Generative AIセンター」の立ち上げから1年、日立幹部が語る現在

今回は「「Generative AIセンター」の立ち上げから1年、日立幹部が語る現在」についてご紹介します。

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 日立製作所が社内外で生成AIの活用を進めている。中心となるのは、2023年5月に立ち上げた「Generative AIセンター」だ。同センターの全体を統括し、生成AIビジネスを推進する日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部 Chief Technology Officerの鮫嶋茂稔氏に現時点での成果や今後の展望を聞いた。

 日立製作所が積極的に生成AIの取り組みを進めている。3月にはNVIDIAとの提携を発表、日立がエネルギー、モビリティー、コネクテッドシステムなどのOT(制御系技術)領域とNVIDIAの生成AIのノウハウを組み合わせるというものだ。

 4月初めには、米国子会社GlobalLogicが「Platform of Platforms」を発表した。さまざまなクラウドやオンプレミスで生成AIを活用するためのプラットフォームで、セキュリティやガバナンスなど企業が直面する課題に対処するアーキテクチャーを持つという。

 Platform of Platformsが発表されたのは、Google Cloudが米国ネバダ州ラスベガスで開催したイベント「Google Cloud Next 2024」。会場で開かれたセッションで、GlobalLogicのChief Business Officerを務めるSrinivas(Srini)Shankar氏はPlatform of Platformsを、「統一されたプラットフォーム。責任、信頼、再利用という3つの特徴を持つ生成AIの実装を可能にする機能と資産のセット」と説明する。同氏は「日立とGlobalLogicは2021年から生成AIの企業の導入を支援してきた。AIはそれより前から手がけており、AIプラットフォームにおける3つの特徴を確保するために何が必要かを理解している」という。

 このような生成AIの取り組みの中心にあるのが、「Generative AIセンター」だ。2022年末からの生成AIブームだが、同時にハルシネーションやデータの機密性などの課題も出てきた。「個別に対応するのではなく、実際に使ってみて実践的な知恵を集める必要がある」と鮫島氏は設立の背景を説明する。

 メンバーは全て兼任だという。データサイエンティストやAIに詳しい技術の専門家だけではなく、セキュリティや品質保証、さらには法務、知財などさまざまな部署の観点を入れることを目的とした横断的なチームとなっている。主として「Microsoft Azure」をベースに生成AIを試す環境を整備しており、利用についてのガイドラインも設けた。

 立ち上げから1年近くたつ。鮫島氏によると、利用者が広がり、さまざまなユースケースが出てきているという。シンプルな例は議事録だ。会議の音声データをテキストにして要約するという使い方が広がっている。そのほかでは、長いドキュメントの要約なども部門に共通して人気のユースケースだという。

 部門固有の使い方としては、営業部門が顧客の最新情報を知るためや、開発部門がオープンソースソフトウェアのドキュメントのチェックに使うなど、「細かいものを入れるとかなりの数になる」とのこと。

 生成AIの効果的な活用はプロンプトに左右されるため、「まず、データサイエンティストなどAIに詳しい人にたくさん使ってもらい、こういう順番で指示をするなどのノウハウを共有してもらっている」と鮫島氏。このように実践的な情報を蓄積することで、生成AIを使う人や使いたい人のハブ的な存在になっているという。日立はプロンプトをはじめとした活用術を、「教えて! あなたの生成AI活用術」として一部社外にも公開しており、こちらも人気だという。

 このように、これまでの経過は順調だ。鮫島氏自身が最も驚いているのは、生成AIに対する社員の熱意だ。「使いたい人はどんどん使っている。ブレーキをかけるのが大変なぐらい」と話す。現時点で、生成AIの利用について強制していないが、生産性の差が出てくることでおのずと全員が活用すると楽観する。その際には、Generative AIセンターで構築されているノウハウが役に立つほか、スキルアップのための環境も整備しているという。

 Generative AIセンターは社内だけでなく、社外の生成AIの活用も視野に入れて立ち上がった。既に名古屋鉄道の社内文書の有効活用で技術検証を実施するなど、事例も出てきている。受注は国内で約70件、GlobalLogicなど海外を含むと150件を上回る、と話す。

 受注件数からもうかがえるように、GlobalLogicの存在は重要だ。「北米企業は生成AI導入の動きが進んでおり、活用事例などのリアルな最新情報が次々に入ってくる。米国で先行的に事例を作るなど、さまざまなやり方ができそうだ」と鮫島氏は感触を語る。

 「日立の強みは何か」を尋ねると、鮫島氏は「IT、OT、プロダクト」だと回答。「エネルギーなら日立エナジー、鉄道なら日立レールなど、その分野の知見を持っている。そのデータを活用した独自のサービスをわれわれが作成したり、『Lumada』を立ち上げたときから大切にしている“顧客協創=Co-creation”の考えをもとに顧客と一緒に作って提供する。ここは重要な柱になると考えている」と続ける。

 生成AIで求めるメリットとしては、当面は「日本は死活問題」とする労働力不足を補うための生産性の改善だ。鮫島氏は、「長期的には新しい価値の創出も視野に入れ、新しいビジネスモデルや新しいバリューチェーンなどを考えたい」と話しながら、「まずは社会イノベーション事業を推進する日立として労働力不足という社会課題を解決するため生産性の改善にしっかりと取り組んでいく」と述べた。

(取材協力:Google Cloud)

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