東大病院、病理ガラス標本をデジタル化–病理医の業務効率化に寄与
今回は「東大病院、病理ガラス標本をデジタル化–病理医の業務効率化に寄与」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
東京大学医学部附属病院(東大病院)は、稼働中の病理/細胞診検査業務支援システム「EXpath」に、病理ガラス標本を専用スキャナーで撮影してデジタル化し、モニターに表示して病理診断を行う方法「デジタルパソロジー」を採用した。EXpath提供元のインテックが6月7日に発表した。
EXpathは、検査受付から報告書作成までの業務を支援する複数の機能を搭載し、病理検査に必要な情報を一括管理する。電子カルテや医師が各部署に指示を行うオーダリングシステムなどと連携することで病理データを病院全体で共有でき、臨床部門でのデータの活用にもつながる。
今回採用されたデジタルパソロジーは、検査対象となる組織の病理ガラス標本を高解像度のデジタル画像に変換するスキャナー、デジタル画像から部位や倍率を変えて顕微鏡と同様に観察可能にするモニターなどと連携している。
東大病院はこれまで、病理ガラス標本の一部のみをデジタル化していたが、日本病理学会のガイドラインに沿った高性能スキャナーとストレージをEXpathと連携させることで、全ての病理ガラス標本をデジタル化するシステムを導入した。これにより、標本データの保管・蓄積・活用が容易になる。
近年、MRI装置や電子内視鏡など、不具合が生じた場合でも人体へのリスクが比較的低いと考えられる「クラスⅡ」以上の医療機器の承認を得た専用スキャナーが複数のメーカーから発売されたこと、遠隔病理診断や複数の病理医による診断が可能となるデジタルパソロジーが注目されている。
病理診断は従来、検体から病理ガラス標本を作製し、標本を顕微鏡で観察して行う。国内では病理医不足により常勤医師がいない病院も多く、ほかの施設の病理医に病理ガラス標本を郵送して診断を依頼する必要があることから、迅速性や標本の管理方法などに課題があった。デジタルパソロジーは、遠隔地の病理医と診断内容の共有が容易になるほか、標本データの管理や検索のしやすさからも多くのメリットが見込まれる。
デジタルパソロジーにより、顕微鏡を使うことなくモニター上でのマウス操作だけで視野の調節・拡大・縮小を行い、観察、診断が可能となる。病理医の業務が効率化するほか、顕微鏡を使った診断経験に関係なく観察が容易となる。セキュリティなどの環境が整えば、自宅など遠隔地からの診断も可能であり、場所や時間の制約が軽減されることで、病理医の働き方改革にもつながる。
変換したデジタル画像をデータベースで管理することで、病理医は倉庫から都度病理ガラス標本を探し出し、顕微鏡にセットして観察する必要がなくなる。院内カンファレンスでの利用や院外病理医への診断内容の相談、教育や研究目的での利用も容易になる。病理ガラス標本は温度や湿度の影響による経年劣化や破損、損傷のリスクがあるが、デジタル画像であれば撮影時の画質のまま保存できる。
デジタルパソロジーは、蓄積された膨大なデータを用いたAIによる自動診断などの開発分野でも利用が拡大している。インテックは、今後もEXpathにデジタルパソロジー対応の機能を追加し、病理医や検査技師の業務効率化と研究・教育分野の質向上を目指すとしている。