主なIT系上場企業における賃金の男女差とその理由とは? 男性の育休取得率は? 2024年版

今回は「主なIT系上場企業における賃金の男女差とその理由とは? 男性の育休取得率は? 2024年版」についてご紹介します。

関連ワード (人事処遇制度、女性活躍推進法、有期雇用等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、Publickey様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


上場企業が毎年発行している「有価証券報告書」には、今年から新たにいくつかの項目が追加されています。

「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業等取得率」「労働者の男女の賃金の差異」の3つです(ただし、一定の条件を満たした企業が対象のため、すべての企業がこの3つを公開しているわけではありません)。

これは、男女における就労状況や条件の差を解消することで女性が活躍できる社会にするために策定された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」、いわゆる女性活躍推進法と、子の年齢に応じた柔軟な働き方や仕事と介護の両立支援制度を強化するなどのために策定された「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」、いわゆる育児・介護休業法に基づいて公開される情報です。

昨日の記事「IT系上場企業の平均年収を業種別にみてみた 2024年版」(前編、後編)では、さまざまな上場企業の平均年収を一覧表にしましたが、この記事では公開された情報から、男女の賃金格差や男性の育休の取得率などを見ていきましょう。

なぜ平均年収に男女差があるのか?

さっそく、いくつかの主要な企業について「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業等取得率」「労働者の男女の賃金の差異」の3つを一覧表にしました(男女の賃金差は正規雇用と有期雇用の両方が公開されていますが、ここでは正規雇用のデータのみ取り上げています)。

おおまかな傾向として、管理職における女性は10%から20%程度、男性の育児休暇取得率は60%程度、男女の賃金の差異として女性の平均年収は男性のそれの70%から80%程度である、といったところが見えてきそうです。

比較的先進的な働き方をしているであろうIT業界の主要な企業においても、やはり女性の管理職は少なく、平均賃金も低いことが数字から読み取れます。

男女の賃金格差の理由は?

その中で、一部の企業は男女の賃金差についての説明を付記しています。

例えば日本オラクルは次のように説明しています。「当社の人事処遇制度は性別による区分はなく、担当業務/職種ごとの報酬制度を運用しております。男女の賃金格差は従業員の母数に占める管理職比率及び営業職などのインセンティブの割合が比較的高い職種の比率が男性と比べ女性が低いこと等が要因となっています。」

つまり、平均賃金の男女差の理由は男性の方が給与の高い役職の人数が多いためである、という説明です。

同様の説明はグリーと富士通も行っています。「正規雇用労働者の男女の賃金格差については、男女の賃金に対する女性の賃金に差は無く、グレード別人数構成の差によるものであります」(グリー)、「同一労働の賃金に差はなく、ジョブ(職責)レベル毎の人数構成の差によるものです」(富士通)。

これらの説明にあるように、平均賃金の男女差の主な理由として男性の方が給与が高い人の数が多いという点は、たしかに管理職に占める女性労働者の割合が低いことからも言えそうです。

それでも説明できない男女の格差があった

この男女差をさらに詳しく分析した企業がありました。メルカリです。

同社の労働者の男女の賃金の差異を見ると、なんと「37.5%」です。つまり女性の平均年収は男性のそれの37.5%しかないという結果になっています。

これは経営陣にとって、きちんと分析してその理由を説明できるようにしなければならない、かなりの緊張感をもたらす数字だといえます。

同社はこれをどう説明したのか、「有価証券報告書」の説明を引用しましょう。

「主にグレード分布に起因していることが判明し、重回帰分析により「説明できない格差」を分析したところ、約7%存在することがわかりました。さらに、賃金格差の要因分析を行なった結果、有意に影響している要素のほとんどは、入社時年収の男女差であることが判明しました(入社時点で「説明できない格差」が約9%存在しています)。」(メルカリ)

他社と同様に、男女の賃金格差の主な要因として男性の方が給与の高いグレードの人数が多いためとしつつも、「説明できない格差」が約7%あったという指摘です。また入社時点で「説明できない格差」が9%あるともしています。

その上で同社は次のように施策を実施したと報告しています。

「上記の分析結果を踏まえ、以下の施策を実施しました。
・重回帰分析を使用した説明できない男女賃金格差の定期モニタリングを開始
・特定された説明できない格差に対して2023年8月に報酬是正措置を実施し、7%から2.5%まで縮小
詳細につきましては、「FY2023.6 Impact Report」にて開示しております。」

今回調査した上場企業の中で、ここまで踏み込んで分析し施策まで公開したのは同社だけでした。同社が男女の賃金格差の数字を深刻に受け止め、対応していることがうかがえます。今回の法律の効果が出ていると言えるかもしれません。

比較的知名度の高い企業を比較してみる

さらに歴史ある企業から比較的新しい企業まで、比較的知名度の高い企業の数字を一覧にしてみました。

こうしてみると、最初の表にある楽天グループの管理職に占める情勢労働者の割合が30%超というのは高く、任天堂の5%は低い数字であることが分かります。また、男女の賃金の差異は企業間でそれほど大きな違いはないようにも見えます。

Publickeyでは今後も毎年、これらの数字を紹介していくつもりです。

これらの数字は上場企業だけでなく多くの企業で公開されるはずですので、就職や転職時に参考にしてみる、あるいは面接などの時に尋ねてみるのはいかがでしょうか。

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