デジタルツイン導入の障壁を乗り越える–7つの課題とその対策

今回は「デジタルツイン導入の障壁を乗り越える–7つの課題とその対策」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、デジタルツインとXRが新たにする製品開発の未来等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 デジタルツインには大きな期待が寄せられている。システム、機械、施設、さらにはエコシステム全体のパフォーマンスを、ソフトウェアによって比較的低コストでシミュレーションし、改善することができるからだ。「毎日のように新しい驚きがある現在の世界において、デジタルツインという洞察を加えて現実の世界を再現し、収集された情報とデータに基づいて意思決定を下すことは、非常に有益であり、重要だ」。Rockwell Automationで「Plex」の製品管理担当バイスプレジデントを務めるAra Surenian氏は、米ZDNETにこのように語った。

 しかし、デジタルツインの導入と管理には障壁が潜んでいる。正確性、複雑さ、コスト、スキルの不足が原因で、これらのアプリケーションを最大限に活用することが難しくなる可能性があり、場合によってはシステムや施設の状態に関する実際の変化を誤って伝えるおそれや、見逃すおそれもある。

 以下では、デジタルツインで発生する可能性のある問題と、それらの問題への対処に役立つ手段として業界リーダーが提案する対策を紹介していく。

 デジタルツインの構築と維持は、複雑なプロセスになり得る。「企業が犯す大きな間違いは、完璧を求めるあまり、十分に良好な状態では満足できなくなることだ」とSchneider ElectricのThe Robotic Center of Excellenceでディレクターを務めるChristine Bush氏が米ZDNETに語った。「あらゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)がそうであるように、すべてはデータから始まる。DXに着手した時点でデータが十分に良好な状態であることはめったにない。しかし、このプロセスは十分に良好な状態から開始する必要がある。というのも、DXとは旅路(ジャーニー)であり、下流の利益を実現するために始める必要があるからだ」

 そのため、デジタルツインの確立を慎重に進めるよう業界リーダーらは提唱している。「パイロットプロジェクトから始めて、制御された環境下で具体的なROI(投資対効果)を示す」とBush氏。「このアプローチはデジタルツインの検証ができるだけでなく、予算承認や組織的な支援の確保にも役立つ」

 Surenian氏もBush氏と同じ考えで、デジタルツインの範囲を適切に定めるには、「サプライチェーンの端から端まで全体ではなく、特定の場所に焦点を当てる」と述べた。「データが最も入手しやすく、最も正確だと思われる場所を見つけよう。そこから、デジタルツインで解決したい疑問や問題を特定する。キャパシティー、在庫、需要への対応能力など、関連する疑問を簡単に理解できるかどうか、自問してほしい」

 デジタルツインを導入する組織は、十分にネットワーク化されている必要がある。「デジタルシステムにとっての最大の障壁は、ネットワークの接続性と人間のつながりだ」。Nokia Bell Labs Solutions ResearchのプレジデントであるThierry Klein氏は米ZDNETに対してこのように述べた。「デジタルツインが最大の効果を発揮するのは、複数のデジタルツインを統合したときだが、そのためには、関係者間の共同作業、強力なデジタルネットワーク、デジタルツインに接続可能なシステムが必要だ」

 十分に開発されたネットワークが、「シームレスなデータ統合、リアルタイム伝送、あらゆる場所からのアクセスを確保して、デジタルツインの実装のスケーラビリティーをサポートするために不可欠だ」とKlein氏は指摘する。

 人工知能(AI)はそのような課題の克服を推進する役割を果たす可能性がある、とKlein氏は付け加えた。デジタルツインに統合されたAIモデルは、「物理システムから収集されたデータを分析して、デジタルツインをレンダリングし、次のステップのアクションを推奨して、複数の未来のシナリオと最適化をシミュレーションすることができる。データを分析して、より高度なデータ分析や、ネットワークとプロセスの自動化を実現することも可能だ」

 物理環境をリアルタイムに表現する能力は、デジタルツイン環境に課題をもたらすことにもなる。「一般に、デジタルツインでは、モデルが実際の物理システムと並行して動作する必要がある。これにより、システムに影響を与える可能性がある特定の効果を理解することができる」。米ZDNETにこう語るのは、DatabricksのAI担当バイスプレジデントであるNaveen Rao氏だ。

 「その一例として、航空機に搭載されるジェットエンジンのデジタルツインを考えてみよう。デジタルツインを使用することで、エンジンのさまざまな部分の効率を把握できるほか、潜在的な問題を探すことができる。データが十分な速度で処理されていない場合、警告が出るのが遅れて、メンテナンスのコストが高くなってしまうかもしれない。また、モデルが正確でなければ、不適切な助言をしてメンテナンスチームの信頼を失うおそれがある」

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