社内SaaSの稼働状況を一括診断–ジョーシス、新サービスを発表

今回は「社内SaaSの稼働状況を一括診断–ジョーシス、新サービスを発表」についてご紹介します。

関連ワード (セキュリティ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 ジョーシスは、企業のSaaS管理を支援するサービス「SaaSドック」「SaaSキュア」の提供を開始するとともに、新たに140億円のベンチャーローンを調達したことを発表した。同社は、SaaS運用の専門家を現状の10倍となる200人体制とし、米シリコンバレーとインドのバンガロールにおける製品開発の速度を10倍に引き上げるための人材確保も計画しているという。

 ジョーシスは、2022年にラクスルから新会社として独立。シリコンバレーで製品のデザイン、インドとベトナムで開発、日本、米国、シンガポール、オーストラリアで販売するグローバルな事業を行っている。

 SaaSドックは、SaaSの利用状況に関する「健康診断」を行うサービス。アカウントの利用状況の把握・可視化に加え、ジョーシスの担当者が顧客の各部門と対話型のサーベイを実施し、最終結果を診断表という形で提出する。

 ジョーシスは自社の40個のSaaSを対象にSaaSドックをテスト実行したところ、「正式に把握していなかったが、運用されていた管理者権限」が13個、「認可していなかったが日々使われているSaaS」が5つ発見されたという。250人の従業員に対してSaaSのアカウントが計4284存在し、システム側では1600アカウントを「削除可能アカウント」としてリストアップ。実際に削除してよいかのサーベイを実施した結果、最終的に全体の16%に当たる690アカウントの削除に至った。SaaSとの利用者契約を整理することで、約3700万円に及ぶコスト削減も実現した。

 SaaSキュアは、不必要なアカウントの削除や権限変更といった最適化の実行を代行する年間契約型のサービス。セキュリティリスク低減の観点では管理者権限の発行数を最小限にとどめ、コスト削減の観点では利用されていない有料アカウントを削減すべきだが、社内の担当者にとってはこの判断が難しい場合も少なくない。

 代表取締役社長CEOの松本恭攝氏は、自身がウェブ会議ツール「Zoom」の有料アカウントを保持していた例を紹介。Zoomの場合、一定時間以上のウェブ会議を主催する場合は有料アカウントが必要になるが、参加するだけであれば無料アカウントでよい。同氏の場合、ほかの参加者が会議の主催者になることが多いが、有料アカウントを保持していた。担当者にとって、社長のアカウントを消してよいかの判断は難しいと想定される。

 SaaSキュアの代行サービスは「現場に負荷をかけずに在るべき姿に近づけ、そのポリシーを一緒に策定して実行する」というもの。こうした作業はむしろ外部の事業者が機械的に実施する方が効率的であるといえ、その現実を踏まえたサービスである。

 今回同時に発表された140億円の資金調達は、まずは新サービスであるSaaSドックとSaaSキュアを実行するSaaSの専門家チームの拡大のための投資に充てられる。同社は2024年10月に千葉県の海浜幕張に「ジョーシスSaaSオペレーションセンター」を開設しており、同センターを拠点に両サービスを提供する。

 さらに、サービスの提供を担う現在20人の「SaaS運用のプロ集団」を今後1年で200人体制まで拡大する計画だ。このサポート人員の「10倍投資」に加え、松本氏は「開発速度も10倍にしていく」方針を示した。同社の開発体制はグローバルで展開されているが、それを担う「グローバルでワールドクラスの人材」を確保する取り組みも強化し、そこにも調達した資金を投入する。

 同社は、米Gartnerが2024年7月に発表した「Gartner Magic Quadrant for SaaS Management Platforms」に日本企業として唯一取り上げられており、この分野におけるグローバルな主要プレーヤーとして認知されているという。

 松本氏は「日本で一番良いサービスではなく、世界で一番良いサービスを作っていくためのプラットフォーム投資している」とし、「2年で100億円をプラットフォーム開発に投資し、開発速度を10倍に向上させる予定」とした。さらに、開発拠点がシリコンバレーとバンガロールであることから、「シリコンバレーで最も優秀な、トップノッチのタレントの採用をスタートした」といい、新たなグローバルでの採用担当者として、Head of Talentに就任したMichael J. Case氏を紹介した。

 Case氏はMorgan Stanley、Apple、Salesforce、Uber、Instacartといった企業で採用担当を務めてきた経歴の持ち主。同氏は「グローバルなテクノロジー企業の成長には資金と人材が必要だ」と指摘し、自身の役割を「数十人規模ではなく、数百人規模で世界最高のエンジニアを集めること」だと語った。

 Case氏は自身の経歴として「『iPhone』リリースの際にApple Japanの採用チームをゼロから立ち上げ、Appleではストーリーを作ることを学んだ」「Salesforce Japanの成長期を支援し、Salesforce.comではデータについて学んだ」と語り、日本での経験も豊富であり、最新のトレンドも熟知していると明かした。

 同氏は、ジョーシスに入社した理由にとして「(自身のキャリアである)この20年間で日本のテクノロジー企業で真にグローバルといえる企業は出てきていないが、ジョーシスにはそのチャンスがある。当社には人材、リソース、製品とサービス、顧客やグローバルなITリーダーのコミュニティーがあるが、真にグローバルなテクノロジー企業となるには優れたエンジニアが多数必要だ。われわれは、スケーラブルかつデータ駆動型で、ワールドクラスのエンジニアリング人材を集められる、世界最高のマシーン(=採用部門)を作り上げる必要がある。それが私のミッションだ」と語った。

 松本氏は、これらの取り組みを踏まえ「テクノロジーとサービスでお客さまの『セキュリティの向上』『コストの最適化』を実現するラストワンマイルにコミットする」と語った。

 日本企業として世界を舞台に競争していける企業を目指しているのは同社だけではないが、そのために必要な人材確保の重要性に対し、まずワールドクラスの採用担当者を確保するという具体的なアクションを取ったことは成功に向けた大きな一歩となると思われる。今後の同社の発展に期待したい。

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