世界最大規模の中国卸売市場にAI企業が殺到、その理由は

今回は「世界最大規模の中国卸売市場にAI企業が殺到、その理由は」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 2023年に中国で大規模言語モデル(LLM)のブームが起こり、大手ネット企業は生成AIを活用したさまざまなサービスを低価格で提供し、ユーザー獲得に力を入れた。しかし、これらのサービスはあまり盛り上がりを見せていないというのが実情だ。一方で、世界最大規模の卸売市場とされる浙江省義烏市には、20社以上のAI企業が集まっている。

 義烏には、100円ショップで売られているような商品や衣類、アクセサリーなどを扱う卸売店が集まる「国際貿易城」という巨大な建物がある。店舗数は約7万5000店とも言われ、中国の200万以上の工場からの商品が展示販売され、世界中からバイヤーが訪れる。

 「AliExpress」や「Temu」は中国の商品を購入できるサービスとして知られているが、実際に商品を手に取ってまとめて安く購入するには、義烏の市場がいいだろう。市場内を歩くと、多くの外国人バイヤーや、彼らと英語で商談する中国人店員の姿が見られる。また、市場の外にはバイヤーを満足させるためのロシア料理や中東料理などのレストランがあり、義烏ならではの光景が広がっている。

 建物が非常に広大なため、全ての店をざっと見るだけでも1日では回りきれない。さらに、バイヤーが自分に合った商品を無数の店舗から見つけ出すのは、針の穴に糸を通すような難しさだ。そこで、外国人バイヤーが事前にオンラインで店舗を知ることができるソリューションをAI企業が次々に提供している。何しろ、超巨大な市場に詰め込まれた数万の店舗が同じ問題を抱え、同じニーズを持つ顧客候補をターゲットにしているのだ。

 AI導入の一例を紹介する。あるドール専門店を経営する女性が、新製品の紹介動画をスマートフォンで撮影し、AIサービスにアップロードした。すると、アラビア語、ロシア語、スペイン語などの多言語版の動画が生成された。翻訳された文章を音声で再生するだけでなく、画面に表示される口の動きも一致するように調整されている。

 その店主は「各国の顧客に向けて、ターゲットを絞って製品を説明し、ビデオを各国の言語に変換して送信している。以前は製品の一つ一つを文字入力で紹介していたが、今ではより分かりやすく伝えられるようになった」と語る。この方法により、説明用コンテンツの質の向上と制作時間の短縮を両立できた。

 当時、店主は試しにこれらの動画をネットにアップロードしたところ、多くの反響があった。「あるバイヤーが、動画で見る私のアラビア語が信じられないほど上手だと言って、興味を持って注文に来てくれた。ロシアの顧客は私のビデオを見て、800体以上のドールを注文したいと店にやって来た」と驚きと喜びを語った。

 動画をアップし始めた当初は、毎日数百人の新規顧客が来店し、半年後には売上高が前年比で約20%増加した。店主はAIを初めて身近に感じるようになり、ロシアに商機を見いだした。次のステップとして外国人向けの名刺作成AIサービスを利用して名刺を作成し、市場開拓のためにロシアを訪問する予定だ。

 義烏の市場をターゲットにしたAIは多数存在する。例えば、霊図科技は商品の画像と説明文の生成に特化したAI企業だ。同社のAIは、ペンダントなどの複雑な形の商品写真であっても、自然にプロ並みの写真に自動修正する。多数のアクセサリー卸売店があるため、多く利用されることでAIの精度はさらに向上する。

 また、2024年のパリ五輪では、世界中で売れるネイルを販売するために、デザイン作成に画像生成AI、フィードバックに意見を出すAI、そしてデザインの絞り込みを評価するAIという3つのAIを活用した。こうして短時間で多数のデザインを絞り込み、金型を義烏周辺の工場に渡して多種多様なネイルを量産した。さらに、製品の紹介ページもAIで生成した。

 巨大市場の店舗が抱える共通の問題と目的に応えるため、各社がさまざまなニーズに対応したAIサービスを開発し、店舗はそのAIサービスを活用している。実際に2万の店舗がAIサービスを利用してコストと時間を削減し、64万人の新規顧客を獲得した。これにより、オンライン売り上げを20%以上増加させたという。しかし、全ての店舗が満足しているわけではなく、支払った金額に対して品質が見合っていないと不満を持つ店舗もある。

 義烏市場でのAI活用に関する記事では、同市場に特化したローカルの中小AI企業は優れたアイデアと製品化能力を持っているが、データの不足により精度が低いという課題があると指摘されている。一方、大手ネット企業のAI事業は精度が高いが、局所的なソリューションとしてのアイデアが不足している。この問題を解決するためには、大手ネット企業とローカル中小AI企業の協力が必要と分析されている。

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