IT初心者のテレビマンが半年でクラウド上に野球中継リプレイ用システムを開発、データベース費用も激減できた理由とは[PR]
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プロ野球の生中継で、実況解説に合わせて過去の映像を検索し、その場ですぐに放送に載せられるシステムがほしい。スポーツ番組のディレクターにそう依頼されてクラウド上で開発を行ったのは、半年前にIT部門に異動してきたばかりで、それまでITに無縁だったテレビマンでした。
そのわずか半年後にクラウドやマネージドサービスを組み合わせて実現されたシステムは実際に番組で活用されました。
9月21日と22日の2日間、都内で行われたイベント「ServerlessDays Tokyo 2024」で株式会社毎日放送の松本卓紘氏が行ったセッション「IT初心者が挑戦!TVの新しい演出のアジャイル開発」では、この「クラウドリプレイ」システムの開発について、その背景が語られます。
その内容をダイジェストで紹介していきましょう。
IT初心者が挑戦!TVの新しい演出のアジャイル開発
関西のテレビ局「毎日放送」から来ました松本といいます。
このセッションでは、ITの知識に疎いテレビマンがIT部門に配属されて右も左もわからない中、皆さんにとっては常識過ぎるであろうサービスを使ってシステムを作り、プロ野球番組などの演出に貢献できたというお話をしたいと思います。
まずは私が働いている毎日放送という会社の説明をします。毎日放送はTBS系列の関西のテレビ局です。
全国で放送されている毎日放送の番組は、「サタデープラス」や「プレバト」「呪術廻戦」「ハイキュー!!」などがあります。
スポーツ番組もたくさん制作し、放送しています。
このセッションでお話しするのは、今シーズンのプロ野球 阪神戦で使った「クラウドリプレイシステム」を作ったという話です。
膨大なVTRの素材をすぐ取り出して放送
通常のスポーツ中継は、リアルタイムのカメラ映像を切り替えるだけでなく、例えば昨日の試合のホームランや2日前の逆転タイムリーヒットなど、過去の映像がVTRで流れます。
それらは事前にディレクターがVTRを3~4シーン選び、編集して準備したものが本番で使われます。
つまり逆に言うと、ディレクターが事前に出そうと思った素材しか本番で使えないということです。
それでも演出的には十分なクオリティになるとは思いますが、例えばこういった場面があるとします。
阪神の9回裏の攻撃、満塁でバッターは1番の近本、対するピッチャーは○○。
そういえばこの対決は7月にも同じ状況がありました。そのときは近本のライトへのタイムリーヒットで逆転サヨナラでした。
このとき、7月のVTRを見たいですよね?
これを実現するためには膨大なVTRの素材を準備して、必要なときにすぐに取り出せるようにしておくことが求められます。
そして今回、そのためのシステムを作りました。
過去の映像を検索してすぐに使える「クラウドリプレイシステム」
クラウドリプレイシステムでは、素材一覧画面から「佐藤 ホームラン」と検索すると、該当するシーンが出てきて、そこから映像を選ぶことができます。
映像を選んだら、ダウンロードボタンを押すと10秒ぐらいで放送用のVTRデッキに素材が入ります。そしてスイッチャーと呼ばれる役割の人が再生制御をし、中継の映像を切り替えることで映像が視聴者の皆さんに届きます。
システムは大部分がAWSのクラウド上にあります。App Runnerをサーバにして、素材はAmazon S3に保存し、映像の変換はAWS Elemental MediaConvert。そしてデータベースはTiDB Cloud Serverlessなどマネージドサービスを組み合わせて作りました。
これを、ITの部署に配属されて1年目の私が右往左往しながら作りました。
ITとはほぼ無縁のテレビマンだった
私、松本は毎日放送で働いて10年目になります。テレビ番組を作る「制作技術」という部署にいました。そこでカメラマンをしたり、スイッチャーをしたり、編集の仕事をしたりしました。
10キロ以上の機材を持って富士山に登って山頂から生放送をしたり、ときには芸人さんのぐちゃぐちゃなアドリブにゲラゲラ笑いながらカメラマンをしたりと、ITとはほぼ無縁の生活を送っていました。
そんな制作技術畑でぬくぬくと育ってきた私が、昨年7月に人事異動でITの部署に異動となりました。
オブジェクト指向って何なんだとか、データベースとExcelって何が違うのかとか、本当にいろんな疑問に直面しました。
部署のシステムの大半がRuby on Railsで構築されていることから、まずはRailsの勉強から始め、CRUD(Create/Read/Update/Delete)をなんとか覚えました。
きっかけはスポーツ番組ディレクターからの依頼
そんなとき、あるスポーツ番組担当のディレクターが社内の「クラウド超入門講座」に出席します。
そこで映像をクラウドストレージに保存しておけば必要なときにいつでも映像が取り出せる、ということを知ったとき、生中継である状況下で今この瞬間に欲しい映像をすぐに取り出して放送に出したい、という発想となりました。
そしてITの部署に異動になった僕に、このシステムをクラウド使ったら作れるかなと相談してきました。
それを聞いてとりあえずCRUDだけ覚えた僕が、何となくのプロトタイプを作って彼に見せたら、「そうそう、そんな感じのやつ。じゃあ来シーズンやろう」と言われました。
と言われながらも僕はまだITの部署にきてまだ4カ月です。そこから半年後の来シーズンに使えるものを作ろうと、そこから始まったシステム開発への道でした。
TiDBでデータベースの悩みが解消
まずは社内の既存システムを真似しながらコードを書いて少しずつ実装していきました。
環境構築はAmazon EC2でやってみたり、Amazon RDSでやってみたりしました。データベースはインスタンスを立ち上げておくと意外にお金がかかるんだなとか、でもディレクターは忙しいから素材のアップロードはいつでもできるようにしてあげたいからインスタンスは止めたくないな、などと試行錯誤しながら開発していました。
そんなときに参加した勉強会でPingCAPの方の話を聞いてTiDBのことを知りました。
TiDBの存在を知ったことで、データベースで悩んでいたことがタイムリーに解決できました。
まず一つ目は、僕はそれまでMySQLしか使ったことがなかったのですが、TiDBはMySQL互換なのでそのまま使えるということ。次に、TiDB Cloud Severlessは使った分だけの従量課金なので、インスタンスをずっと起動しておく必要もなく、アクセスは社内の人だけなのでほぼ無料で使えそうだということ。
最後の、Railsで使い始めるまでわずか2ステップ、という説明はさすがに嘘でしょと思ったのですが、実際にやってみると本当に簡単でした。
具体的には、設定画面でクラスタを作って、「Connect With」で接続先として「Rails」を選択するとコードが表示されるので、それをRailsのコードにペーストすると、簡単にTiDB Cloud Serverlessが使えるようになって本当に感動しました。
データベース料金も激減
ここから、いろんな社内システムでもTiDB Cloud Serverlessを使ってみようということで、社内の様々なデータベースにTiDB Cloud Serverlessを採用しました。
その結果、これまで最大で1カ月8万円程度払っていたデータベースの費用が、なんと1000円以内に抑えられるようになりました。
TiDB Cloud Serverlessを使うようになって費用を限りなく安くできたので、本当にありがたく思います。
テレビの番組作りはスピード感がとても大事
今回作成したクラウドリプレイシステムは検索して映像のダウンロード完了までが速いので焦らずに作業できたり、生成AIによる文字起こしやメタデータなどにもチャレンジしたことで編集効率が高まったりと、スポーツ番組の担当者からも好評を得ることができました。
最後に「テレビ×IT」についてちょっと考えてみたいと思います。
テレビの番組作りはスピード感がとても大事です。例えばスポーツ中継など大きい規模の番組などでは2カ月前ぐらい前に予算や仕様が確定します。そこから演出を考えていきます。
なので、番組のために何かシステムを開発しようとなるとそのスピード感に合った動き方をしないといけません。やることが決定した時点では時間が足りずにお尻に火がついた状態でどんどん開発していくという感じです。
そんな中、クラウドサービスやマネージドサービスを使うことでアジャイルな開発がしやすくなったのはテレビ番組を作る上でとてもよい追い風だと思っております。
初心者でもいろんな開発ができるようになった
テレビ中継のスケジュールに合わせて必要な機能ごとに開発を進めていくようなアジャイル開発の手法ができたのは、クラウドサービスやマネージドサービスのおかげじゃないかなと思っております。
それに加えて、最近僕はChatGPTやClaudなどの生成AIを活用しているんですが、そういう生成AIに手助けしてもらいながら開発していくことで、私のような初心者でもいろんな開発ができるようになりました。
そのようないろんな方向からのITへのハードルが下がってきてくれたおかげで放送局のスピード感にITがどんどん追いついていき、今後の放送局の未来に大きく貢献していけるのではないかと期待しています。
まだまだテレビ局のモノ作りはITに対しては発展途上ですし、私自身もまだまだ勉強中ですが、皆様と一緒に新しい演出とか新しい価値を提供していきたいと思っております。
以上で毎日放送の発表を終わりたいと思います。ありがとうございました。
(本記事はPingCAP Japan提供のタイアップ記事です)