ファーウェイが脱Androidを狙う自社OS「HarmonyOS Next」は軌道に乗るか

今回は「ファーウェイが脱Androidを狙う自社OS「HarmonyOS Next」は軌道に乗るか」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 中国では2024年10月、華為技術(ファーウェイ)が「Android」からの脱却を狙う新たな自社OS「HarmonyOS NEXT」(鴻蒙OS NEXT)を発表した。中国が開発する「Linux」ベースの独自OSはコンシューマー向けには普及していないため、これは第3のモバイル向けOSと言える。対応機種は、同社のスマートフォン「Mate 60」「Mate X5」「Pura 70」、タブレット「MatePad Pro 13.2」、スマートウォッチ「HUAWEI WATCH Ultimate」など、スペックの高い上位機種が中心となっている。

 2024年第3四半期(7~9月)の時点で、ファーウェイは中国のスマートフォン市場で15.3%のシェアを獲得している。当時は3つ折りスマートフォン「Huawei Mate XT」を繁華街などで大々的に宣伝し、技術力をアピールしていた。専門ストアも人気のモール内では特に客でごった返していたので、新OSの導入で購入者が劇的に減ったということはないだろう。

 ここでは、スマートフォンの出来栄えではなく、HarmonyOS NEXTが成功するかどうかを考える。ファーウェイが強調するポイントは、Androidに比べて複数のデバイス間の連携がシームレスであり、カスタムROMと比べても自由度が高いという点だ。しかし、懸念されるのは、「Google Mobile Services」(GMS)が必要なGoogleのアプリ群や、Androidのエコシステムを利用できなくなることで、新たにネイティブアプリを用意しなければならないという点だ。

 これについては開発者を募り、中国で定番のアプリを中心に1万5000を超えるネイティブアプリやサービスが12月初旬の時点で提供されている。ファーウェイは、半年から1年以内に10万のアプリをそろえるとしている。それでも、現時点では多くのネイティブアプリやサービスがリリースされている状況だ。例えば、中国で最もメジャーなアプリである「微信」(WeChat)の企業版アプリが12月下旬にリリースされたが、小米科技(シャオミ)のスマートホーム用アプリやフードデリバリーの配達者用アプリはまだ提供されていない。また、著名なゲームでもAndroid版より更新が遅れるなど、アプリのリリースが後回しになることがある。

 ファーウェイは中国内では低価格モデルもあるが、全般的に高級路線を進んでいる。従って、ユーザーの所得はそれなりにあり、海外に行く人もいるし、さまざまなスマート機器を購入する人もいる。すると、ネイティブアプリしかない場合、海外に行くときにアプリが利用できないのは困るし、他社のスマート製品がファーウェイのスマートフォンでコントロールできないのも困るという話になる。そこで、ファーウェイはあまり表立って紹介していないが、前者には「出国易」、後者には「卓易通」というアプリを用意していて、これでAndroidのアプリを動作させることができる。

 出国易はその名の通り、海外旅行で苦労しないためのアプリで、現地で簡単にインストールして利用できる。ここには、中国では利用できない「X」や「Facebook」、Googleのアプリも含まれている。Googleのアプリに必要なGMSの代わりに、オープンソースの「MicroG」を実装している。

 一方、卓易通は「卓」の文字がAndroidの中国語表記である「安卓」から取られており、Androidアプリを容易に利用できるようにするものだ。ブラウザーからAPKファイルをダウンロードし、卓易通と協力したAPKだけが正常にインストールできる。ただし、全てのAndroidアプリがインストールできるわけではなく、未登録のアプリはエラーで弾かれることがある。「iOS」のようにアプリを登録制にして、どうしても利用したければジェイルブレイクのようなことが行われるのではという声もある。

 出国易と卓易通は、ファーウェイが開発した「iSulad」コンテナーエンジンを利用している。これらのアプリを起動すると、メモリーを8GB利用するなどリソースを多く消費するというレポートがある。上位機種のみでOSが動作するなら、多くのリソースを使っても問題ないわけだ。

 HarmonyOS NEXTでは、懸念事項であるAndroidとの互換性は保たれている。一方で、ネイティブ動作の方が快適に動くものの、Androidアプリでも動作するなら、同OS向けのアプリ開発は無駄な手間だという開発者もいる。実際、中国でのアプリの更新頻度はとても高く、対応OSが1つ増えるだけでも相応の苦労が発生することは予想できる。今後、ユーザーだけでなく開発者に向けてもどうかじ取りしていくか、ファーウェイの手腕が問われそうだ。

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