リアルタイム音声翻訳への需要は日本が一番–DeepLのCEO
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機械翻訳「DeepL翻訳」などを手掛けるドイツのDeepLは、2024年11月にAIを用いたリアルタイム音声翻訳サービス「DeepL Voice」をリリースした。創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるJaroslaw Kutylowski(ヤロスワフ・クテロフスキー)氏は、「DeepL Voiceへの需要は日本が最も高い」と話す。同氏にAIの取り組みなどを尋ねた。
2017年創業の同社は、数十言語に対応した多様な機械翻訳のサービスを提供する。Kutylowski氏によれば、DeepL翻訳の最多ユーザーは本拠のドイツだが、日本は2番目に多く、DeepL Voiceへの引き合いは日本がドイツを上回り最多であるという。
同社は、翻訳サービスへのAI活用を推進している。2024年はDeepL Voiceに加え、翻訳文書をAIで自動生成する「DeepL Write Pro」などもリリースした。「われわれにとって2024年は、さまざまなプロダクトにおけるAIの活用が非常に進み、市場に展開することができた素晴らしい一年だった」(Kutylowski氏)
2023年から急速に拡大する生成AIは、言語やコミュニケーションに関するサービスでも存在感を高めつつあり、主要なAIモデルを利用するサービスでは異なる言語への翻訳といったことが容易にできるようになった。
こうした状況についてKutylowski氏は、「AI市場には、基盤モデルを提供するベンダーと、基盤モデルを利用してアプリケーションを提供するベンダーの2種類がある。基盤モデルは汎用(はんよう)性に優れるが、全てにおいて高品質なものを提供できているわけではない。その意味でDeepLは、基盤モデルとアプリケーションの中間に位置するユニークな存在だ」と述べる。
同社は、創業時からニューラルネットワーク技術を用いた翻訳サービスの精度向上において、あらゆるユーザーのニュアンスを正しく理解できることを最も重視して、開発に取り組み続けているとする。他方で、データのプライバシーやセキュリティに関する関心や懸念も高まる一方だ。Kutylowski氏は、「企業顧客において、特に法務や財務あるいはライフサイエンスといった業界では、厳しい規制やコンプライアンス、セキュリティなどへの要件を対応しながら活用されるものでないといけない。われわれは、顧客と密接に協力しながら顧客のビジネス、インフラにDeepLに組み込んでもらうように取り組んでいる」と話す。
そうした事例の直近のケースが上述のDeepL Voiceになる。同サービスの世界で最初の顧客がNECになり、NECは2024年12月1日からDeepL Voiceを「Microsoft Teams」に組み込み、グローバルでのオンライン会議などに利用しているという。
「NECがDeepL Voiceの最初の顧客になったことはとても喜ばしい。NECはDXを推進しており、同社のように多くの日本企業がDXに取り組み、リアルタイム音声翻訳という新しい機能をビジネスに取り入れ、活用していこうとしている。そうした意味でDeepL Voiceが(欧米企業ではなく)日本で最初に導入されたのは、何ら不思議なことではない」(Kutylowski氏)
同社はプロダクトのロードマップなどを公開していないとのことだが、Kutylowski氏は、2025年のAIトレンドについて、企業独自や業種・業務特化といったように個々のユーザーや用途に即したソリューションがこれまで以上に求められるだろうと予想する。
2025年1月29日には、長らく開発とテストを進めてきた独自の次世代言語モデルや、DeepL Writeの文章校正・編集の機能をAPI経由で利用可能な「DeepL API for Write」の一般提供を開始した。次世代言語モデルは、独自の評価で汎用的なモデルよりも翻訳品質が高いとし、DeepL API for Writeは、多様なビジネスコミュニケーションで正確性に優れた言語翻訳をリアルタイムに提供するという。
Kutylowski氏は、「AIの進化、変化は目まぐるしい状況だが、先に述べたように、われわれは常に多様なユーザーの意図と正しく理解して、質の高い言語サービスを提供し続けることを目標に長年取り組んでいる。このゴールに終わりはなく、これからも取り組み続ける」と述べている。