深刻化する宇宙ゴミ–人工衛星の増加で急務となる対策の整備

今回は「深刻化する宇宙ゴミ–人工衛星の増加で急務となる対策の整備」についてご紹介します。

関連ワード (宇宙開発競争がもたらすイノベーション、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 時として、宇宙ゴミが大気圏を通過し、地球に衝突することがある。2022年11月には、23トンの宇宙ゴミが太平洋中南部に落下したばかりだ(幸い被害はなかった)。これは現地時間10月31日に打ち上げられた中国のロケット「長征5号B」の宇宙ゴミで、このロケットは地球への帰還を制御できなかったことが広く知られている。

 宇宙ゴミの落下についてはあまり耳にしたことがないかもしれないが、将来的にはよく聞くようになるだろう。宇宙経済が軌道に乗るにつれて、地球低軌道(LEO)のハイウェイに渋滞が発生しつつあり、それ伴って衝突や地球への落下の可能性が高まっている。

 「宇宙空間は無限かもしれないが、衛星が置かれる場所は非常に限定的な領域だ」と宇宙力学者のMoriba Jah氏は米ZDNETに語る。「その領域がいっそう混雑している」

 Jah氏がチーフサイエンティストを務めるPrivateerは、設立されたばかりの企業で、Appleの共同創設者であるSteve Wozniak氏が支援している。Privateerの使命は、衛星同士が時速1万7000マイル(約2万7300km)ですれ違う宇宙のスーパーハイウェイの可視性を高めることだ。同社はその可視性を実現するために、宇宙のすべての衛星とゴミを視覚化できる独自のナレッジグラフテクノロジーを使用している。Privateerは独自のデータエンジンを使用して、オープンアクセスツール「Wayfinder」を開発した。これは、宇宙経済に携わる他の人々が視覚化を作成して、地球低軌道に衛星を安全に配置できるようにするツールだ。

 Jah氏はまた、宇宙を「環境」の一部とみなすべきであり、陸、海、空と同じ配慮や敬意を払うべきものだということを、議員や一般市民に納得させたいと考えている。有限の資源であるため、宇宙も環境として保護するべきだ、と同氏は語る。

 そのため、ロケットや衛星を宇宙に打ち上げる企業と政府は、廃棄する宇宙ゴミを地球に持ち帰る責任ある方法と、まだ軌道上にあるすべてのものを管理する責任ある方法を見つけ出さなければならない。

 宇宙をそのように管理しなければ、いつ落下してくるか分からない宇宙ゴミが地球人に身体的危害を加えるという脅威が続くだろう。さらに、宇宙空間での衝突事故は、私たちの日常生活のあらゆる面を混乱させる可能性がある。通信ツール、ナビゲーション手段、金融サービスなど、衛星に依存して機能しているサービスは増加し続けている。

 宇宙をゴミだらけにすれば、人類の利益のために宇宙を利用することができなくなるおそれがある、とJah氏は述べた。

 「私たち人間は、他のどんな情報手段よりも、宇宙空間にある衛星と呼ばれるロボットによって、人間と地球についてより詳しく知ることができる。軌道上のゴミの量が増えているために、さまざまなものが失われる危険にさらされている」

 問題の規模を理解するには、人類がこの10年間にどれだけのペースで宇宙飛行体を打ち上げてきたかを考えてみるといい。憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)によると、2016年の時点で地球低軌道にあった衛星は約1700基だという。2022年5月現在では5400基以上だ。2030年までには、5万7000基もの衛星が軌道を回るようになるとの予測もある。

 「各国がわれ先に衛星を軌道に乗せている理由は、その結果として得られる莫大な金銭と影響力だ」とJah氏。「それによって、環境に甚大な悪影響が及んでいる」

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