日本IBM、日本企業での採用が進むTBMを解説–「Apptio」導入の広がりが背景に

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 日本IBMは2月19日、テクノロジービジネスマネジメント(TBM)に関する説明会を開催した。同社によると、日本企業においてDXが進展する一方で、IT投資の可視化・最適化が課題となっており、TBMへの注目が高まっているという。

 TBMは、ITファイナンス管理のプロセスを高度化し、テクノロジー投資によるビジネス価値の最大化を実現するための方法論。IBMは、2023年にTBMに準拠するテクノロジー投資管理SaaS「Apptio」を買収し、顧客の具体的な財務価値と業務改革の実現を支援している。

 現在、グローバル全体で約1800社がApptioを採用しており、Apptio上で管理されているITコストは合計で6500億ドルに上るという。日本IBM 執行役員 テクノロジー事業本部 Apptio事業部長の塩塚英己氏は、IBMがApptioを買収した理由について「急拡大しているITファイナンスやFinOpsのマーケットと、その領域のリーディングカンパニーであるApptioを取り込みたかった。また、IBMの自動化ソフトウェア製品との相乗効果が非常に大きいことも挙げられる。そして、ApptioはエンタープライズSaaSの事業モデルで一定の成功を収めていたため、この運営ノウハウを取り込みたいという戦略的な意図がある」と説明した。

 Apptioは、ITファイナンス管理「IBM Apptio」、クラウドファイナンス管理「IBM Cloudability」、戦略ポートフォリオ管理「IBM Targetprocess」――の3つの領域で製品を展開している。
Apptio製品群

 日本での導入が多く進んでいるIBM Apptioは、IT投資管理にまつわるデータマートやデータ分析、レポーティング機能を備えている。財務・会計システムや資産台帳などの外部データソースからデータを吸い上げ、TBMに準拠する形でコストを分類していき、それらの分類体系にコストを配布する仕組みになっている。特徴としては、アクションや効果に直接的にひもづくベストプラクティスが組み込まれているため、予算と実績の差を1%以下に抑えることができるほか、新規投資比率を8対2から6対4と新規開発投資を向上できることにある。

 IBMでも、IBM Apptio、IBM Cloudability、IBM Targetprocessを活用し、テクノロジー投資の可視化や最適化を図った。データセンターや既存のレガシーシステムのコスト構造が不透明であったことや、アプリケーションの総所有コスト(TCO)が不明確だったこと、またハイブリットクラウドのコストが増加している中で、TBMを用いてコストの最適化を目指したという。同社では最高情報責任者(CIO)以外にも最高財務責任者(CFO)やビジネス部門を巻き込んだ「TBMプログラム」を立ち上げ、結果としてクラウドコストを20~30%削減、アプリケーションのTCOを25%削減、そして既存の運用費から戦略投資に11億5000万ドルシフトできたとしている。

 米国や欧州では、金融・保険業からApptioの導入が広がり、今ではIT投資金額の規模が大きいさまざまな業界での活用が進んでいるという。日本では、幅広い業界でIT投資額が比較的大きい企業を中心に40~50社が導入しているといい、「米国でも起こったように、各業界のトップ企業がTBMを採用して効果を出し、業界内に広がっていく現象が起きた。日本でも近いような現象が起こりそうだと感じている。銀行や保険会社などのトップ企業での採用が増えてきている」と塩塚氏は説明する。

 テクノロジーを中心に据えて経営戦略を考えることが重要視されている一方で、テクノロジーへの支出や関連する人材・データが、さまざまな部門や国/地域に分散されているという課題がある。企業においてはDXが進む中で、「自部門でもっと素早く最新テクノロジーを導入したい」「全社共通基盤のITコストが増え続けており、新規投資の原資が確保できない」「部署がおのおの調達していることで無駄や重複が発生していないか」などのIT投資管理にまつわる疑問や分断が浮かび上がっているという。

 日本IBM テクノロジー事業本部 Apptio事業部 TBMエバンジェリストの浅川真弘氏は、「TBMはIT部門や財務部門、ビジネス部門の分断をつなぐ役割を果たす方法論になる」と説明する。TBMは各部門が連携し、意思決定を行うための共通言語を提供するとともに、ビジネス価値最大化のための洞察も提供する。

 TBMではまず企業のITコストをつまびらかにし、ファイナンス部門、IT部門、ビジネス部門の各視点でテクノロジーコストが可視化・共有される状況を作ることから始まる。次にアクションとして、IT予算と実績の差の解消やコストの最適化、テクノロジーコストのデータを用いた上で各部門との関係性を改善していく。これらのアクションを通して財務的なパフォーマンスや運用効率性の向上などが成果として見えてくる。

 TBMにおけるITコストの可視化を実現するために、IT投資の分類方法を定義した「TBM Taxonomy」がある。最下層からクラウドサービスや人件費などの「コストプール」、ネットワークやストレージなどの「テクノロジーリソースプール」、AIやインフラストラクチャーなどの「テクノロジーソリューション」、実際にテクノロジーが使われる「ビジネスと利用ユーザー」の4階層に分類されている。

 これにより、各部門がそれぞれの視点でテクノロジーコストを把握できるとしている。また浅川氏は、各層を行き来できることもメリットだといい、「例えばAIにおいては、AIを構成しているCPUやネットワーク、アプリケーション、人件費などをひも付けることができる」と説明した。

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