次世代自動車開発におけるIT利用の現状–マイクロソフトが解説

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 日本マイクロソフトは1月26日、自動車およびモビリティー市場における最新動向について説明会を開催した。米国本社から主に日本の顧客企業の支援を担当する自動車産業担当 ディレクターの江崎智行氏は、「『CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)』にも新しい波が訪れ、その次の『SDV(Software Defined Vehicle:ソフトウェア定義の自動車)』へ進化しつつある。自動車を中心としたバリューチェーン(価値のつながり)の最適化が必要だ」と述べ、デジタルフィードバックループを通じた消費者中心のサービス構築を支援すると説明した。

 同社は、自動車産業について、コネクテッド自動化と電動化、リモートアップデートなどを実現するSDV、システム中心の概念を重視する「Vehicle in a System(車両システム)、社会システム全体で異業種企業も連携したエコシステムである「System of Systems(システムのシステム)へ進むと捉えているという。だが自動車産業は、サステナビリティー(持続可能性)とセキュリティの課題を抱え、「二酸化炭素の3分の1は輸送機関が排出し、(温室効果ガス排出量を算出するステップの)Scope3はバリューチェーン全体で取り組まなければならない。また、肥大化する車載用(デバイス制御の)コードは数十万と複雑化し、オープンソースの推進も進んでいる。サイバーセキュリティ対策も各社が単独で講じるのではなくエコシステム全体で考えなければならない」(江崎氏)と指摘する。

 同社は、SDV戦略として、オープンソースソフトウェアの推進や商用化支援、戦略的協業を見据えた「Eclipse SDV Working Group」に参画。Eclipse SDVは、オープンソースとオープンな仕様を目指すプラットフォームとして、Eclipse Foundationが2004年1月から非営利活動を続けている。江崎氏は「われわれがSDVを開発、商用化するのではなく、大量のミッシングピース(=足りない技術)を一緒に作り上げ、顧客企業が商用化するために貢献する」との同社の立場を説明した。とはいえ、そこで用いられるのは、「Microsoft Azure」や「Visual Studio」などの同社の開発サービス・製品群で、自動車産業への展開も、Microsoftのパートナー企業およびETASやBOSCHといった協業企業が中心となる。

 Microsoftにおける自動車産業の事例は少なくないが、今回は5つに絞って紹介された。General MotorsではSDVベースの体験を提供する「General Motors Ultifi」をMicrosoft Azureで開発し、「2023年中に本格展開する」(江崎氏)予定だ。Microsoftは一連のコンセプトを「Car to cloud」と呼び、究極のパーソナライゼーション(顧客サービスの最大化)を目指しているという。「GMは2025年までにサブスクリプションベースのサービスまで押し上げる」(江崎氏)ことも予定している。

 Mercedes-Benzでは、サプライチェーンのボトルネック解消や、生産資源の優先順位を位置付けする「MO360 Data Platform」をMicrosoft Azure上で稼働させている。江崎氏によれば、2025年までに自動車の生産効率が約20%向上する見込みだ。「Microsoft Power BI」ダッシュボードによる製造状況の可視化や、二酸化炭素排出量などの監視・予測を可能にするデータ分析ツールも寄与し、「顧客自身がアジャイル開発したサスティナブルなプラットフォームを実現している」と江崎氏は評した。

 Toyota Motor North Americaは、Microsoft Power Platformを活用している。ある従業員は、「Excel」のワークシートの内容をPower BIのダッシュボードに変換して、月10時間の労働時間を削減したとのこと。同社はノーコード/ローコード開発を目的にPower Platformの利用を推奨している。

 日産自動車は、「Microsoft HoloLens 2」と「Dynamics 365 Guides」を活用した「Intelligent Operation Support System」を構築し、従業員のトレーニング時間を10日間から5日間に短縮。指導員へのトレーニング時間も10時間から1時間に短縮される見込みだという。Microsoftは、パートナー企業が差別化できる「コネクテッド フリート」、自動運転に関する開発から展開までを包括する「AVOps」、メタバースの活用で従来型顧客の再発明を支援する「デジタル セリング」の三軸でパートナー企業を支援していくという。

 国内動向では、日本マイクロソフトが2021年7月に「モビリティサービス事業部」を設立している。鉄道や航空、海運、物流業界の企業を担当し、日本特有の試みを行っている。その理由を執行役員 常務 モビリティサービス事業本部長の竹内洋二氏は、「交通や物流の輸送サービスや高品質な自動車製造技術棟が“お家芸”だ。従来の移動・輸送に限らずデジタル技術を活用して新たな体験を(消費者に)届けたい」と説明した。

 米国本社のような具体的な事例はないものの、別の同事業部担当者は、「国内自動車業界は垂直統合型。競争力を高めるため、Eclipse SDV Working Groupに参画されることを望みたい」と述べている。

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