「ステークホルダー資本主義」でデータガバナンスの整備は必要不可欠に–EY Japan調査

今回は「「ステークホルダー資本主義」でデータガバナンスの整備は必要不可欠に–EY Japan調査」についてご紹介します。

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 EY Japanは3月14日、日本企業のデータガバナンスの整備・運用状況の成熟度を明らかにする調査「データガバナンスサーベイ2021」の結果を発表し、併せて日本企業が今後取り組むべきデータガバナンスの方向性について見解を明らかにした。

 EY新日本有限責任監査法人 金融事業部/アシュアランスイノベーション本部 アソシエートパートナーの安達知可良氏は会見で、「データガバナンスとは、広範な領域にまたがるデータ資産の管理におけるルールと順守基準を策定して統制すること」と説明し、「業務効率化、新規事業開発、顧客満足度の向上などを目的としたデータの利用/活用の取り組みが増える中、企業が自社で保持するあらゆるデータを効率的に活用するためには、組織的にデータを維持・管理するための態勢であるデータガバナンスが重要になる」と語った。

 調査は国内506社を対象に、2021年9月にインターネットで実施。データマネジメント協会(DAMA)がまとめた「DAMA-DMBOKフレームワーク」の知識領域をもとに、回答結果からそれぞれの成熟度を計測。データの保護や情報漏えいなどを防ぐことが主眼に置かれた「データセキュリティ」や「データストレージとオペレーション」といった「守り」の領域については、比較的高い成熟度であることが分かった。

 一方、データ利用/活用のための基盤となる「データガバナンス」「データアーキテクチャー」などの平均成熟度は低い結果だった。これらの項目は企業の収益を増加させる目的や、環境(Enviroment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取った「ESG」などのサステナビリティー関連の活動状況を非財務情報として開示する目的など、いわゆる「攻め」の領域で重要となるもの。

 これらは、複数の異なる情報源からデータを入手し、加工・変換など行った上で蓄積・利用することが求められる活動であり、多くの日本企業で組織横断的にデータを利用/活用するための態勢整備がまだ不十分な状況であると考えられるという。

 近年、多くの組織は、株主を意識した短期的な収益性に重点を置いた経営姿勢から脱却し、株主だけでなく顧客、従業員、社会に対して長期的価値を生み出す「ステークホルダー資本主義」にシフトを進めている。その上で、EY Japanでは、日本のデータガバナンスの状況と世界のステークホルダー資本主義に移行する流れを鑑みて、「ステークホルダー資本主義に対応したデータガバナンス態勢構築」を提言する。

 安達氏によると、企業がサステナビリティーの観点でのパフォーマンスや、世界経済フォーラム(WEF)が掲げる「ステークホルダー資本主義指標」に基づき、活動状況を対外的に開示するには、温室効果ガス排出量の削減対策や人権に配慮した活動状況など、財務報告には表れない非財務領域の情報が必要になる。

 しかし、統合基幹業務システム(ERP)をはじめとする既存のITシステムは、財務情報を生成することを前提に設計されており、非財務情報を入手するには別の用途で生成されたデータを収集し、適切な状態に加工して蓄積・利用しなくてはならない。また、データ提供元は複数組織にまたがることもあれば、企業外部の第三者からデータを入手することもあり、さまざまな関与者を通じたプロセス整備が必要になる。

 こうしたデータは、経営戦略策定時の基礎情報、日々の管理・取り組み状況の進行確認や実績評価に利用されたり、サステナビリティーレポートや統合報告書などの開示情報として活用されたりすることも想定される。開示情報には信頼性が求められ、企業はデータの発生から利用までのライフサイクルの透明性と一貫性の確保が求められる。

 EYストラテジー・アンド・コンサルティング エンタープライズリスク パートナーの川勝健司氏は、「データ利用/活用の目的を達成するために、データガバナンスを構築することが必要」といい、「データガバナンスは、経営層による監督と執行層による遂行の枠組みの中で、検討要件を満たすための態勢を整え、プロセス・手続などを整備していく取り組み」であると指摘。その上で、同社は企業のデータ管理レベルに応じ、ステップを踏んだデータガバナンスの対応を提案しているとした。

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