パナソニック、低炭素に関する特許を無償開放–日本企業では初

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 パナソニックホールディングスは8月23日、「Low-Carbon Patent Pledge」(LCPP=低炭素特許の無償開放に関する枠組み)に参画し、LCPPのウェブサイトに掲載する特許を無償開放すると発表した。日本企業では初めての参画となる。

 LCPPは、低炭素技術の社会実装の加速と、社会全体での共同イノベーションの促進を目的に、「地球の日」に合わせて2021年4月22日に発足した枠組みだ。気候変動に対処するための幅広い技術をカバーしており、電力管理やゼロカーボンエネルギー源の実現、効率的なデータセンターアーキテクチャー、熱管理などの技術が含まれている。海外では、Hewlett Packard Enterprise(HPE)やMeta(旧Facebook)、Microsoft、Alibaba、Lenovoなどが参加し、LCPPが規定する所定条件の基に、あらゆる個人と団体にロイヤリティフリーのライセンスを提供している。

 パナソニックグループが今回無償公開した特許は、バイオマスで使われる植物と同程度のエネルギー変換効率を実現した人工光合成技術に関するものであり、人工光合成を実現する装置に使用する電極の材料や製造方法などの特許も含まれる。

 パナソニックホールディングスは、「植物の光合成を模しており、光エネルギーを用いて水から水素などを取り出し、二酸化炭素と反応させて有機物に変換する反応を実現するための電極の材料や製造方法に関する特許を公開する。LCPPを介して無償開放することで、開発途上である人工光合成技術の実用化への開発が促進され、地球環境の改善につながることを期待している」と表明している。

 植物の光合成は、太陽光エネルギーで水を分解し、水素イオンと電子と酸素を生成する「明反応」と、明反応で得られた電子と水素イオンを用いて二酸化炭素からグルコースを含む糖類などを生成する「暗反応」の2つの反応から成り立つ。これらの反応を人為的に再現した技術が「人工光合成」であり、二酸化炭素を吸収するとともに、その二酸化炭素から燃料や素材を生成できるため、地球温暖化対策に貢献する技術として世界中から注目を集めている。

 さまざまな研究では、有機物系の配位子に金属の原子が結合した構造を持つ化合物である「有機錯体」を用いて植物の光合成のメカニズムを模すアプローチが進められているが、有機錯体は特定波長の光にしか反応しないため、幅広い波長の光で構成される太陽光を十分に活用できないといった課題が指摘されている。

 パナソニックグループが持つ技術では、還元電極に電子が伝わりやすい金属の触媒を用いていることから、二酸化炭素の反応を促進できると同時に、電気的な損失が少なく反応速度を高速化できる。また、金属の種類を変えれば、有機物を選択的に生成できる特徴も持つ。公開した特許の中に人工光合成技術に関連するさまざまな電極の材料や製造方法を含むことで、これらの技術の利用を促進することになる。

 パナソニックホールディングスは、今回LCPPに参加した理由を「低炭素技術の社会実装の加速と、社会全体での共同イノベーション促進を目的としたLCPPの取り組み趣旨に共感、賛同した」と説明する。同社は、1932年(昭和7年)に、創業者の松下幸之助氏がラジオの特許を無償公開した経緯がある。一部の発明家が所有する特許がラジオ業界の拡大、発展の妨げになっていたことを懸念した同氏が当該特許を買い取り無償で公開したことで、ラジオの製品化が加速され、業界発展の原動力となった。また、2015年には北米市場でIoT関連の特許を無償開放している。今回の特許の無償公開も市場や業界の発展に直結するものとして、同社の知的財産権活用の一つの形態と位置づけている。

 一方、環境分野への取り組みという点でパナソニックグループは、2022年1月に長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を発表。2050年に向けて、現在の世界の二酸化炭素総排出量の約1%に当たる約3億トンの削減インパクトを目指している。また、同ビジョンの達成に向けた環境行動計画「GREEN IMPACT PLAN 2024(GIP2024)」を打ち出し、2024年度までの具体的な目標数値を掲げている。

 同社は、「LCPPで公開した特許は、環境貢献に資する技術の知的財産権。これらの環境貢献技術は、パナソニックグループでの事業化や他社との共創による事業化の促進に活用するなど、さまざまな形で技術を社会実装し、社会に貢献していきたい」とコメントしている。

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