デジタル庁は国民の理解を得られるプロジェクト工程表を明示せよ
今回は「デジタル庁は国民の理解を得られるプロジェクト工程表を明示せよ」についてご紹介します。
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デジタル庁が9月1日で発足から1年を迎えたのを機に、これまでの活動の経緯や成果、今後の方針などについて明らかにした。本稿ではその中から、同庁が新たに提起した「3つの注力領域」と「プロジェクト推進形態の強化」に注目し、一言もの申したい。
「9月1日、私は20カ国・地域(G20)のデジタル相会合でインドネシアに出張のため不在なので、浅沼尚デジタル監に活動報告をしてもらう。デジタル化で世の中を便利にしようという取り組みが少しずつ具体化してきており、これからさらにしっかりと進めていきたい」
8月の内閣改造でデジタル大臣に就任した河野太郎氏は、8月30日にオンラインで行った記者会見でこう語った。筆者から見ると、この1年のデジタル庁はさまざまな課題に着手しているものの、目に見える成果は乏しかった印象だ。とはいえ、行政の、さらには日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)をけん引する大仕事だけに、ドシッと構えつつもスピーディーに、そして何よりもDXに欠かせない「国民の信頼」をしっかりと得ながら前進していってもらいたい(写真1)。
河野氏の言葉通り、デジタル庁は9月1日、46ページからなる活動報告書を公表し、浅沼氏が会見でその内容について説明した。筆者はその中から同庁が新たに提起した2つの点に注目した。
一つは、3つの注力領域を明示したことだ。具体的には、「生活者、事業者、職員にやさしい公共サービスの提供」「デジタル基盤の整備による成長戦略の推進」「安全安心で強靱(きょうじん)なデジタル基盤の実現」といった内容だ。図1はそれぞれの要素を記したものである。一言でいえば、図1のタイトルにあるように「公共サービスの提供とインフラ整備を推進」することだ。
これらの内容よりもむしろ気になったのは、なぜ今、こうした注力領域を明示したのかだ。活動報告書にも明記されているが、同庁は発足時に「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」というミッションを掲げ、「優しいサービスのつくり手へ。」および「大胆に革新していく行政へ。」とのビジョンを描いて動き出した。早速、図1に要素として記されている業務に順次取り掛かったとみられるが、国民から見て「デジタル庁は何をやっているのか」が分かりにくいまま1年が過ぎたような印象がある。今回、3つの注力領域を平易な表現で明示したのは、その疑問に答えるためだったのではないか。
もし、そうだとしたら、もっと早く明示できたのではないかとの見方もあるだろうが、この点については「デジタル庁に国民目線の意識が着実に浸透してきた表れ」とポジティブに受け止めておきたい。