第54回:年齢差は30歳、ふたり情シスの世代間ギャップ

今回は「第54回:年齢差は30歳、ふたり情シスの世代間ギャップ」についてご紹介します。

関連ワード (「ひとり情シス」の本当のところ、運用管理等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 テック系企業や成長著しいベンチャー企業などは別ですが、以前ほどではないにせよ日本の多くの企業では年功序列の傾向があります。これは、年齢を重視するというよりもビジネス経験を重んじているためであると思います。同様に、ひとり情シスについてもビジネス経験があるに越したことはありません。ひとり情シスは1人の組織ですが、新システムの導入などで部門長と折衝を行わなければならないからです。また、社長への報告もひとり情シスはよく行いますが、ここでもビジネス経験が役立ちます。

 活躍しているひとり情シスには40代が多いですが、これには理由があります。バブル崩壊やアジア通貨危機などが起きた結果、1993~2000年は厳しい景気後退に陥りました。40代の人々はこの時期に就職活動をしていましたが、当時の就職の厳しさは想像を絶するものでした。1996年卒の求人倍率は1.08倍であり、最低値を記録しました。また、翌1997年卒では中堅中小企業の求人倍率は3.11倍でしたが、従業員1000人を超える大手企業では0.54倍と極めて狭い門になりました。そのため当時は「就職氷河期」と呼ばれ、この世代は「失われた世代」や「ロストジェネレーション」などと呼ばれています。

 しかし、この就職氷河期でもブロードバンドが普及してインターネット社会になると、IT関連企業は積極的な人材募集を行いました。そのため、希望している職種ではなかったけれども、IT関連の道に進んだ方もいました。1976年前後に生まれた「76世代」(ナナロク世代)にはITやネットリテラシーの高いIT起業家が多いです。同様に40代のひとり情シスについても、IT情報がまだ少ない中で紆余曲折に満ちたキャリアを歩みながらも自力で知識を得てスキルを高めてきた人が多いです。

 就職氷河期世代の人は1970~1977年生まれなので、2022年に45~52歳になります。この年代では管理職や経営幹部になることが多いです。この年代のひとり情シスは経営層に報告したり、主要な部門長と十分なコミュニケーションを取ったりすることができます。

 昨今ではひとり情シス企業の6割以上で増員の計画があるなど、今までとは異なる傾向を示しています。1人から2人になることによる情シス体制の強化もありますが、現在のひとり情シスが近い将来に定年で退職することを見据えて後任を育てていく意味での2人目の採用も少なくありません。採用募集に年齢制限を付けることが禁止されているのは企業も理解していますが、情シスの担当者が不在となる期間をできるだけ少なくしたいため、なるべく若い人材を採用したいという本音があります。その結果として、1人目と2人目の情シスに10歳ほどの年齢差が出てしまうことはよくあることです。時には年齢差が20歳になることもあるそうです。

 その原因が本当に年齢差からくるものなのか正確には分かりませんが、10歳以上の年の差があるとコミュニケーションを取りづらいとお聞きします。自分が年長者側になると、10歳や20歳の年齢差はコミュニケーションにあまり支障ないと感じるかもしれません。しかし20代の頃を思い出すと、10歳や20歳も年上の相手はとても目上に感じられたものなので、やはりコミュニケーションを取りづらいのだろうと思います。子どもの頃に観たテレビドラマや流行った漫画などが異なるので共通の話題を見つけにくく、ビジネス上の例え話もなかなか通じないようです。まるで日本語が上手い外国人とお話ししているのと似た感覚なのかもしれません。

 最近、就職氷河期世代のひとり情シスの人から、2人目を第二新卒で採用したとお聞きしました。年齢差は約30歳。世代間ギャップを憂う言葉である「最近の若い人は……」は、ギリシャ時代や古代エジプト時代にもあったと言われています。日本でも平安時代の書物の中にあるそうです。この問題は人類の永遠のテーマであり、特効薬はないのでしょう。しかし、ITリテラシーが高く、インターネットの成長を目の当たりにしてきた「失われた世代」と、デジタルネイティブな「Z世代」の融合が、今後のデジタル変革(DX)を実現するチームとして化学反応を起こすと期待したいところです。

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