教育現場で広がる「Microsoft 365 Education」の活用事例–Microsoft Education EXPO 2023

今回は「教育現場で広がる「Microsoft 365 Education」の活用事例–Microsoft Education EXPO 2023」についてご紹介します。

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 日本マイクロソフトは6月30日「Microsoft Education EXPO 2023」を開催した。同イベントでは、2020年から始まった小中学校のGIGAスクール構想における同社のソリューションの活用事例や、AIを活用した新機能について紹介した。

 Microsoftは教育版のクラウドソリューション「Microsoft 365 Education」を提供している。同ソリューションでは、教育現場の「働き方」「教え方」「学び方」の改革の推進と、将来、児童・生徒に求められる「思考性」や「創造力」、「計算論的思考」などのスキル育成を支援している。

 同イベントに登壇した日本マイクロソフト 執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏は、GIGAスクール構想の中でMicrosoft 365 Educationを授業に取り入れている学校の事例を紹介。

 富山県高岡市では、デジタルノート「OneNote」を活用し、生徒がテキストや録音データ、写真を添付して教員とノートを共有する。例えば音楽の授業では、授業の振り返りとして生徒が家庭学習で歌の練習を録音し、ノートに添付することで、教員は録音データを聞くことができる。また、即座に生徒のノートにコメントや評価を反映できる。このリアルタイム性が生徒のやる気につながるのだという。

 また、さいたま市立大成中学校では、教員と生徒が「Teams」の課題機能を用いて課題や提出物の共有を行う。これにより、提出物に対する教員からのコメントが残り、備忘録や振り返りの活動を容易にできるという。

 ほかにも、肢体不自由教育部門と病弱教育部門を置く東京都立光明学園では、何らかの事情で登校できない生徒に対して遠隔授業で学びを止めない取り組みを行っている。生徒への情報伝達は全てTeamsで行うとともに、授業の中で生徒が考えたことや疑問に思ったことなどもリアルタイムで共有して、共同作業をしやすい環境を創出しているという。このように、普通教育だけでなく特別支援教育でもIT活用の幅は広がっている。

 同氏は次に、Microsoft 365 Educationの展開について説明。現在、同ソリューションは、「コアコンポーネント」としてのプラットフォームや管理ツール、セキュリティツールと、音声入力やイマーシブリーダー、翻訳ツールなどの機能群である「アクセシビリティーソリューション」、「Word」や「Excel」といった「教育用ツール」で構成されている。

 2021年には、AIを活用して児童・生徒の自己学習や評価を支援するアプリケーション群「Learning Accelerators」がMicrosoft 365 Educationに追加された。このアプリケーション群は、コロナ禍においてオンライン学習に移行した際に米国の生徒の学習スコアが下がったことを受け、ITを活用した学習効果を向上させるためにTeams上で開発されたという。

 Learning Acceleratorsは、「音読の流ちょうさ」「算数/数学」「心の健康」といった基礎的な力と、「情報収集」「プレゼンテーション」といった将来の成功へのスキル、そして「データの可視化」の6つのアプリケーションで構成されている。

 同アプリケーション群は、AIを活用し、児童・生徒が入力した文字列や発話、表情、身ぶり手ぶりを評価する。教員側では、児童・生徒のあらゆる表現についてAIが分析し、学習の傾向や進捗(しんちょく)を可視化し評価をサポートする。また児童・生徒側では、AIによるリアルタイムかつ個別最適化されたコーチングを提供する。

 既に提供されている機能は、AIが児童・生徒の音読を分析し、苦手な単語の発音や意味などの学習・自己評価をサポートする「Reading Progress / Reading Coach」と、児童・生徒の今の気持ちを集積し、データから変化や異常に気付くことができる「Microsoft Reflect」。そして、これらのアプリケーションから蓄積したデータをダッシュボードで可視化する「Education Insights / Education Insights Premium」の3つだ。

 今回、新たに追加される機能は3つある。1つ目は、プレゼンテーション中に対してAIがアドバイスをする「Speaker Progress / Speaker Coach」。これはプレゼンテーションをする中で、話す速さや身ぶり手振り、つなぎ言葉、繰り返し、くだけた表現などをAIがリアルタイムでアドバイスし、プレゼンテーション終了後には総合的な評価レポートを表示する。これにより、相手を引きつける話し方を習得できるとしている。同アプリケーションは現在、英語対応のみとなっており今後、日本語にも対応する予定だ。

 2つ目は、安全な検索環境で課題に対する情報収集能力の向上を図る「Search Progress / Search Coach」。これは、Teams上で出された問題解決型の課題に対して児童・生徒がどのような検索をしたのかAIが分析し、クラス全体の検索ワードをワードクラウドで表示する。また、AIからは問題解決に向けた効果的な検索条件を設定するためのアドバイスを受けることができ、児童・生徒は信頼できるリソースの特定をする練習にもつなげられるという。

 3つ目は数学的思考を鍛える「Math Progress / Math Coach」。教員が選んだ条件に合わせて練習問題を自動生成し、教員が選択して出題できる。ダッシュボードでは個人やクラス、学年などの単位で苦手箇所を確認し、復習が必要な範囲を特定できる。また、AIが自動で採点し、問題に対してステップごとの解法をコーチングする。なお、同アプリケーションの提供時期は未定となっている。

 同イベントでは、実際にReading Progressを用いて学習を行う足立学園中学校・高等学校 英語科主任の冨岡雅教諭が登壇し、英語教育でのReading Progress活用例を紹介した。

 同校では2020年4月からオンライン授業を実施し、Teamsの課題機能を使い生徒の英語の音読課題を回収して評価していた。しかし、評価するに当たり1人当たり2分程度の時間がかかることや評価の明確な基準がなく継続が難しい状況にあったという。

 そこで冨岡教諭は、Reading Progressを音読の課題を配信・評価するツールとして採用。PDFかWordで簡単に課題を設定できる点や生徒からの提出で採点ができる点、また発音などのアシスタントツールであるReading Coachを容易に設定できることを評価し、「持続可能な課題の配信ができるようになった」と話す。

 基準設定が難しかった評価方法は、日本語や片仮名、名前などはカウントせず、1分間で正しく読めた語数を評価するようにしたという。AIが提示した数値はフィードバックのヒントとして利用する。また、生徒が提出した音読を教員側で聞けるため、不十分だと感じた生徒に対しては再提出を求める場合もあるという。

 2023年度では、データを可視化するEducation Insightsを用いることで、生徒一人一人の音読の練習に関する学習傾向や正確性などの推移を把握していくとしている。また、イマーシブリーダーの活用により生徒の音読の促進を図るとともに、Reading Coachを使うことで生徒個人が苦手な英語の発音を十分に練習できるのではないかと今後の展開を述べた。

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