アドビ、フェイク画像に対抗する「CAI」を解説–進化するデジタル技術の“守りの一手”

今回は「アドビ、フェイク画像に対抗する「CAI」を解説–進化するデジタル技術の“守りの一手”」についてご紹介します。

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 アドビは7月18日、フェイク画像対策に取り組む団体「コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)」の活動内容について、メディア向け説明会を開催した。同説明会は、CAIの活動内容の周知に加え、メディア企業の参加促進も目的として実施された。

 最高デジタル責任者(CDO)の西山正一氏は「近年、テクノロジーの進化やSNSの普及に伴い、本物と見まがう偽情報があふれている。ニュースキャスターの顔にディープフェイクを適用するなど、プロパガンダに利用する動きも見られる」と述べた。最近では、画像生成AIを用いて「ゴールデンゲートブリッジで火事が起きている様子」といった画像を簡単に生成できてしまう。同氏は「偽情報対策は、待ったなしの状況」と強調した。

 説明会には、Adobe CAI アドボカシー&教育部門責任者のSantiago Lyon(サンティアゴ・ライオン)氏も登壇。同氏は35年以上にわたり、フォトジャーナリスト、フォトエディター、メディアでの幹部職、教育者としての経験を積み、「Reuters」「AP News」のフォトグラファーとして1989~1999年に4大陸で8つの戦争を撮影してきたという。

 Lyon氏は「私がフォトジャーナリストの仕事をしていた時は、インターネットやデジタル技術はなく、世界中で取材した出来事は信ぴょう性のあるものとして見られていた。ただ、今はどうだろうか。さまざまな情報が複数のデジタルデバイスに現れ、信ぴょう性を確保することが難しくなっている」と危惧を示した。

 2019年にAdobeが設立したCAIは、オープンソースのデジタル来歴証明技術の搭載を進めている。現在、世界55カ国・1500以上の事業者・個人が参加しており、ソフト/ハードウェア、メディア企業、非政府組織(NGO)、学者などで構成されている。

 偽情報対策として、既存の画像を解析してフェイクか否かを判断する「検出業務」が存在するが、検出のスピードが偽情報を生成するスピードに追い付かないことが懸念される。そこでCAIは、デジタルコンテンツのライフサイクルにおいて来歴情報を都度付与することを推進している。具体的には「コンテンツの作成日」「作成者」「行われた加工」「掲載元のメディア」などの情報を付与する。

 こうした取り組みでは、ライフサイクルに関わるあらゆる事業者が来歴情報の付与に対応することが求められる。ライフサイクルの起点となる撮影の段階では、ニコンと独Leica Microsystemsが来歴情報を付与する製品を2023年末~2024年初頭に提供することを予定している。スマートフォンのカメラに関しても2024年中の搭載を目指しているという。編集の段階では、「Photoshop」や生成AI「Adobe Firefly」に同技術を埋め込んでおり、加工やAIによる生成の事実を明示できる(図1)。

 CAIの活動では、標準化団体「C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)」が策定する枠組みを用いている。同団体は2021年に発足し、2022年にはデジタル来歴に関する世界初の業界標準仕様を発表した。Adobeは同団体にも所属しており、テクニカルワーキンググループの議長を務めている。両団体の関係について、Lyon氏は「C2PAは設計図を作る建築事務所、CAIは設計図を基に建設を行う企業といった立ち位置。互いに補完している」と説明した。

 グローバルの動きとして、欧州連合(EU)の政策執行機関・欧州委員会は、偽情報対策の取り決めにおいて「来歴情報を確認する」というレコメンドを入れている。それまでは正誤チェックを行うのが主流だったが、それだけでは不十分だと判断したという。

 米カリフォルニア州の民主党は、キャンペーン画像などに来歴情報を埋め込んでウェブサイトを運営している。民主党はユーザーに画像の真正性を確認してもらい、自分たちのメッセージに正当性を持たせることを図っている(図2)。

 CAIについて西山氏は「技術の誤用・悪用に対抗する社会的な試み」とし、「災害情報や政府が発信する情報に偽情報が入らないよう、あるいは入ったとしても確認できるよう、コンテンツライフサイクルの最初から最後まで、情報を発信するメディアの皆さんにも対応してもらうことが重要である」と投げかけた。

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