マイクロソフト「Azure Boost」発表。AWS Nitroのように専用SoCへ仮想化処理などをオフロード、より高性能なクラウド基盤提供へ
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マイクロソフトは、従来ハイパーバイザとホストOSが行っていた処理を専用のシステムオンチップ(SoC)を用いたNICにオフロードし、より高性能なクラウド基盤によるインスタンスを提供する「Azure Boost」のプレビュー公開を発表しました。
Azure Boostを用いた仮想マシンでは、最大で200Gbpsのネットワーキング性能、最大で40万IOPS、10GBpsのストレージ性能などを提供します。
専用のSoCを搭載した「Microsoft Azure Network Adapter」
Azure Boostは、専用のSoCを搭載した「Microsoft Azure Network Adapter」 (MANA)と呼ばれるネットワークアダプタとソフトウェアによって実現されています。
ホストマシンとそのOS上で実行されてきた仮想化の処理などがMANAにオフロードされることで、ホストマシンの持つ能力のより多くの部分をユーザーに提供できるだけでなく、ネットワークやストレージのI/O処理がMANA上に行われることで、より高速なI/O処理も実現されます。
ホストマシンから低レイヤの処理が分離され、専用のSoC上で処理されることで、ホストがマルウェアなどからの攻撃にさらされる可能性を下げることにつながるため、セキュリティの向上も実現します。
また、クラウドインフラのアップデートの際にはAzure Boostのアップデートで済むため、ホストOSへの影響が短時間かつ最小限で済み、ダウンタイムの縮小にもつながります。
MANAはData Plane Development Kit(DPDK)にも対応しており、パートナーやユーザーがDPDKを用いた機能拡張も可能とされています。
AWSもGoogleもすでにSoCを採用済み
今回の発表では、MANAがどのようなSoCによって実現されているかの説明はありませんが、マイクロソフトは今年(2023年)1月に、データセンター基盤向けプロセッサDPU(Data Processing Unit)開発ベンダのFungibleの買収を発表しています。
FungibleのDPUは、ストレージやネットワークへのアクセス処理などを高速に行う機能を備えていることから、MANAには同社のDPUが使われていると推測されます。
参考:マイクロソフト、「AWS Nitro」対抗のクラウド基盤用プロセッサを自社開発か、DPUベンダのFungible買収を発表
専用チップにハイパーバイザやネットワーク処理をオフロードする仕組みは、AWSが遅くとも10年前の2013年には同社が「Nitro System」と呼ぶ仕組みで実現し、最新版はすでにNitro v5まで進化しています。
参考:[速報]AWS、クラウド基盤用のカスタムチップ「AWS Nitro v5」を発表。パケット処理能力など向上。AWS re:Invent 2022
Google Cloudも、2022年にインテルと共同開発したSoCの採用を発表済みです。
参考:Google Cloud、インテルと共同開発したASIC「Infrastructure Processing Unit(IPU)」採用を発表。FPGAベースのSoCでサーバ本体の処理をオフロード
Azure Boostの発表によって、AWS、Google Cloud、Microsoft Azureのクラウド大手3社がすべてクラウド基盤に専用SoCを搭載する、ということになるわけです。