生成AIの波に飲まれない–ヴイエムウェアが見せたインフラへの矜持

今回は「生成AIの波に飲まれない–ヴイエムウェアが見せたインフラへの矜持」についてご紹介します。

関連ワード (ソフトウェア等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 VMwareは、米国時間8月21~23日にラスベガスで開催した年次イベント「VMware Explore 2023」で、NVIDIAと生成AI向けプラットフォーム「VMware Private AI Foundation with NVIDIA」を発表するなど、昨今ブームと化す生成AI分野への進出を表明した。ただ、そこではITインフラソフトウェアベンダーとしての同社の明確なスタンスを首脳陣が示した。

 VMware Private AI Foundation with NVIDIAは、VMwareの仮想化ソフトウェア群とNVIDIAのGPU、ネットワークインターフェースやAI向けソフトウェア群のスタックで構成され、サーバーハードウェアなどはDell Technologies、Hewlett Packard Enterprise、Lenovoがまずサポートされる。製品名称にある「Private AI」とは、企業専用の生成AIを意味するといい、同製品は企業が自社に適した大規模言語モデル(LLM)を使って、自社データの機密性やセキュリティを確保しながら、自社専用AIの環境を構築するインフラだという。

 生成AIは、自然言語でユーザーが望むような情報を容易に生成する汎用性が人気だが、LLMの学習などにユーザーや権利者のいる情報が意図せず使われたり、間違いや虚偽の情報を生成したりするなどの問題も抱える。こうした状況下でITベンダー各社は、問題への対応に試行錯誤しながらも商機を逃すまいと、ITインフラからアプリケーションまで多種多様な製品やサービスを次々に市場へ打ち出している。

 VMwareの発表は、こうしたIT業界のトレンドに乗るかのように映る。しかし、プレジデントを務めるSumit Dhawan氏は、メディアのグループインタビューで次のように語った。

 「現在のクラウドはさまざまなものが複雑に存在し、サイロ化もしている『クラウドカオス(混沌)』であり、われわれはマルチクラウドを正しく使う『クラウドスマート』にフォーカスしている。そこに生成AIを加えたのは、AIのインフラが現状のまま行けばカオスになりかねないからだ。クラウドカオスの苦い経験をAIでは回避しなければならない。われわれがフォーカスするのは、プライバシーやセキュリティに対応しながら汎用的な生成AIをあらゆる企業が利用できるためのインフラであり、用途に特化したLLMを開発するインフラなどではない」(Dhawan氏)

 企業では、2022年後半に生成AIブームが起きる以前から機械学習や深層学習などを利用する用途別AIの開発や利用が注目されてきた。だが、これには高度なスキルを持つデータサイエンティスなどの人材が必要で、モデル開発などにもたくさんの計算資源を消費する。Dhawan氏によれば、特化型AIのインフラではブームの生成AIには対応し切れず、プライバシーやセキュリティの問題にも同時に対処するため、VMwareがNVIDIAのサポートを得ながら整備を進めていた自社のAIインフラをVMware Private AI Foundation with NVIDIAとして商用化したという。

 「顧客にAIのインフラの選択肢を提供することが目的だ。VMwareは顧客の(ハードウェアなどの)インフラとデータの中間にある(仮想化基盤などの)領域を担っている。AIにおいてNVIDIAをエコシステムパートナーの1つに選び、一緒にインフラを開発した。多くの企業は、生成AIをゼロから作るのでなく、目的に近いLLMを選んで微調整して適用しようとしている。VMwareのインフラを利用している顧客なら、容易に生成AIの活用を始められる」(Dhawan氏)

 VMwareは、同社のAI活用を推進する「VMware AI Labs」を組織している。同組織を所管するChris Wolf氏によれば、AI自体には2年ほど前から取り組んいるが、社内向けのAIインフラはわずか5人で6カ月ほどをかけて構築した。自社製品でITインフラを構築していることもあり、AI対応においてはオープンソースも多数活用して、少人数・短期間でのインフラ構築を達成できたという。

 また、このインフラを用いてさまざまな業務でAIの活用を検証している。今回のイベントで協業を発表したHugging Faceとは、自社製品コードのチューニングにおける効果を検証しているが、あるケースでは「NVIDIA V100 Tensor Core GPU」1基だけを使って4時間で推論の成果を認めることができたそうだ。

 「AIモデル開発を1基で行えた事実は、AI開発に伴う膨大なエネルギーの消費を削減できることにつながるだろう。われわれのソフトウェアソリューションはこうした取り組みも貢献できるものと考えている」(Wolf氏)

 同社は今回、製品としてのVMware Private AI Foundation with NVIDIAを発表しているが、同時にオープンソースベースのインフラを志向する組織を対象としたリファレンスアーキテクチャー「VMware Private AI Reference Architecture for Open Source」も公開した。これは、生成AIを利用したい企業にとって、ハードウェアをNVIDIAのGPUに限定することなくCPUも使えるアプローチになる。既にIntelの「第4世代 Xeonスケーラブルプロセッサー」を利用でき、今後はVMwareが推奨するアクセラレーティッドコンピューティングのハードウェアの多くで順次利用できるようになる見通しだ。

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