東芝、道路事故を抑止する「路面変状検知AI」を開発–実用化にめど
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東芝と東芝デジタルソリューションズは、道路の「路面変状検知AI」を開発し、中日本高速道路(NEXCO中日本)との高速道路における日常点検の高度化に向けた実証実験で有効性を検証でき、実用化のめどが立ったと発表した。
これにより高速道路の日常点検の自動化や省力化が実現されるのに加え、緊急補修が必要な「ポットホール」を早期に発見し、高速道路の保全と長期的な安定稼働に貢献できるとしている。今後は検出精度を向上させ、2024年度にポットホール検知システムの実用化を目指すほか、2024年度以降はNEXCO中日本で、点検項目ごとにAIモデルを内製化できるサービスを提供。ほかの日常点検項目にも適用範囲を拡大できるようにする予定だ。
ホットポールは、重大事故につながる可能性がある道路の路面の穴を指す。高速道路での高速走行中にハンドルを取られるなどの影響があり、NEXCO中日本管内の高速道路だけで、2019年度に約3200件のポットホールが確認されている。建設から30年を経過する道路が全体の6割を占めるといい、老朽化による路面変状の発生頻度の増加が見られ、適切な点検と保守計画の立案が急務となっている。
またポットホールは、初期状態では路面変状が現れにくいが、路面が変状すると、短期間で路面損傷に進展する特徴があり、早期の発見や修繕が不可欠になる。現在は、点検員がパトロール車両で定期的に巡回し、路面や標識などのさまざまな点検対象の確認を目視で行い、路面変状による事故を未然に防いでいた。このほかに、緊急補修を要するポットホールを確認した場合に、安全に停車できる場所を探して降車し、ポットホールの場所まで戻って写真を撮影し、道路管制センターに通報して、緊急補修を実施していたという。
東芝 研究開発センター 知能化システム研究所メディアAIラボラトリー エキスパートの野田玲子氏は、「目視点検では、人による点検品質にばらつきがあったり、追い越し車線のポットホールが発見しにくかったりといったことがあった。また、発生箇所によってはその場に停車できず、点検員が次のインターチェンジ(IC)で折り返すなど、時間的ロスが大きいケースもあった」と話す。
今回開発した路面変状検知AIは、点検員が乗車する車両にカメラを搭載し、カメラで収集した画像にAIを用いる。走行中、リアルタイムかつ自動的にポットホールを検出する。道路管制センターへ通報できるため、点検品質の平準化と安全を確保した作業の実現、緊急補修までの時間の大幅短縮が可能になる。
今回の路面変状検知AIは、「弱教師学習」を用いている点が大きな特徴だ。
東芝は、弱教師学習を生産ラインでの良品検査などに活用し、画像認識AIへの活用に適していると位置付ける。同社独自の取り組みにより、精度が低いという弱教師学習の課題を解決したという。弱教師学習の採用は、生産ラインのような画像撮影に適した条件が整っている場所とは異なり、高速道路など天気や時間などにより環境が変化する場所では初になる。
従来のAIでは、大量の学習用画像を使用し、変状位置を画素単位で教示する作業が必要だった。このため学習データの作成に多くの時間とコストがかかり、学習データと異なる変状や道路環境への適用が難しく、検知漏れや誤検知が大量に発生するなどの課題があった。
今回開発の路面変状検知AIでは、弱教師学習の手法により変状の有無を選別して学習するだけで、画像内の変状位置を推定できる。画像1枚当たりの教示作業時間を、従来の約1分40秒から約1秒と約100分の1に短縮できるため、導入時の作業負荷を抑えると同時に、異なる道路環境でも容易に導入できるという。
具体的には、入力した画像に対して、異常スコアマップを出力する深層モデルを用い、異常スコアマップの最大値と入力画像の変状有無が一致するように学習する。正常な画像と異常な画像の特徴の異なる部分は、変状部分のスコアを大きくして、異常スコアマップを出力することになる。野田氏は、「正常な画像には異常が含まれておらず、全ての画素が正常だと判断し、異常な画像は少なくとも1つの画素が異常であると認識する。その結果、画像単位のラベルから、画素単位の正常と異常を判断できる」と述べる。