第1回:注目されるコンポーザブルERP–ERPの歴史からひも解く背景
今回は「第1回:注目されるコンポーザブルERP–ERPの歴史からひも解く背景」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
Gartnerが統合基幹業務システム(ERP)の概念として2020年に提唱した「コンポーザブルERP」が、ここ最近日本でもあちこちで取り上げられるようになりました。一方で、ERPは日本企業には適応しづらいものという印象が未だに根強く残っていると感じます。本連載では、あらためてコンポーザルERPとは何かについて掘り下げるとともに、日本企業がコンポーザブルERPを活用していく道筋を、ERP本来の姿や歴史をひも解きながらお伝えできればと思います。
ERPが登場したのは、もう随分昔になります。当初、ERPは、統合型であることを最大の特徴とし、そのメリットはリアルタイム性にありました。それまで企業内でバラバラに動いていた各システムが一つに統合されることにより、販売管理システムで受注伝票を入力すると会計システムに売上高が即時に加算されるといったことが実現できるようになりました。
その後、ITの進歩により、ERPがカバーする領域は販売管理や会計といった企業内の基幹システムからさらに、経費精算など一般従業員が利用するシステムや、サプライヤー関係管理(SRM)や顧客関係管理(CRM)といった取引先との関係を管理するシステムにまで範囲を広げていきました。しかし、これらが全て統合されることで一貫性とリアルタイム性はより高まった一方、あまりにもシステムが巨大化しすぎたことにより、簡単にシステムの改修やアップデートができなくなり、変化に耐えられなくなるという課題が生まれました。
そこに登場したのが、Gartnerが2014年に提唱した「ポストモダンERP」です。ポストモダンERPは、中心となるレガシーシステムの周辺に、SaaSなどを組み合わせることにより、巨大化しすぎた統合型ERPのカバー領域を小さくし、変化に対応しやすくするという考え方です。ちょうどこの頃、営業支援システム(SFA)、CRMや経費精算などでSaaSが台頭してきた時期でもあったため、こうしたSaaSをフルに活用しながら、巨大化した統合型ERPの領域を緩やかに小さくしていくことを目指しました。
そして、その後提唱されたのが「コンポーザブルERP」です。コンポーザブルERPは、中心となるレガシーシステムをも完全になくし、さまざまなSaaSを組み合わせることでERPを構築するという考え方です。これにより、変化の激しい時代においても、柔軟かつ持続的にシステムを成長させることが可能になります。
ポストモダンERPが提唱された2014年以降、特に米国を中心に急速にSaaSが進化し、SFAなどの周辺領域だけでなく会計などのコア領域にまでSaaSが台頭してきました。さらに、全ての業種で汎用的に使えるホリゾンタルSaaSだけでなく、業種別に特化したバーティカルSaaSまでもが網羅的に増えてきました。コンポーザブルERPのトレンドになる流れは、ユーザーが数あるSaaSの中から自分たちに合う必要なものを選んでERPを構築できる時代になったことが背景にあるのではないでしょうか。
コンポーザブルERPがトレンドとなった経緯は前述の通りですが、いまから20〜30年前の統合型ERP全盛時代にも、統合型ERPか疎結合型ERPかという議論がありました。ここで少し当時の議論を振り返ってみます。
結論から言うと、統合型ERPと疎結合型ERPはどちらが正解というものではなく、どちらにもメリットとデメリットがあります。