「SAP Build」でフュージョン開発を実現–SAP幹部に聞く「SAP BTP」の方向性
今回は「「SAP Build」でフュージョン開発を実現–SAP幹部に聞く「SAP BTP」の方向性」についてご紹介します。
関連ワード (ソフトウェア等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
SAPが開発者向けの取り組みを積極的に進めている。中核となるのは、「SAP Business Technology Platform(BTP)」だ。生成AIの活用に向けて「SAP HANA Cloud」では、ベクトルデータベースもサポートするなど迅速に動いている。今後の開発がフュージョンスタイルになると見ている同社のシニアバイスプレジデント 兼 最高プロダクト責任者としてSAP BTPのアプリケーション、開発、自動化、インテグレーション分野を担当するBhagat Nainani氏に最新動向や今後の方向性を聞いた。
–SAP BTPにおけるアプリケーション開発と自動化について最新動向を教えてください。
SAPは社を挙げてAIの融合に取り組んでおり、開発でもSAPのアプリケーションを利用する場合でも、AIを活用できるようにしています。開発者の生産性、自動化とインテグレーションの改善、アナリティクスの改善などを、AIを使って実現していきます。
開発では、2022年に一新した「SAP Build」ファミリーに「SAP Build Code」を加えました。SAP Buildがローコード/ノーコードだったのに対し、SAP Build Codeはコードを書く開発者向けになります。特徴は、生成AIを使って生産性を飛躍的に改善できる点です。何を開発したいのかを記述すると、サービスやユーザーインターフェース(UI)を生成し、すぐにそれを実装できます。
生成AI以外の強化ポイントは、SAP向けに最適化されている点やフュージョン開発が可能になる点があります。SAP向けの最適化では、事前に構築したドメインモデル、コネクターなどを利用して、SAP ERPや人事、サプライチェーンなどの拡張を容易に開発できます。フュージョン開発とは、アプリケーションのユーザー、開発者、データサイエンティストなどさまざまな立場の人が開発段階から協業してアプリケーションを開発するというアプローチです。SAP Buildはツールの面でそれを容易にします。
自動化は、単に自動化するのではなく、プロキュア(調達)から支払い、雇用から退職などエンドツーエンドのプロセスを最適化したいというニーズに応えます。ここでの最初のステップは、プロセスマイニングを使って分析すること。そして、メトリクスを得て、複数のアプリケーションを組み合わせます。
エンドツーエンドのプロセスを見て、どこを最適化するのかを決定できます。「SAP Signavio」「SAP Integration Suite」「SAP Build」を組み合わせることで可能になります。シチズン(市民)開発者でも自動化を作成できるのです。
–SAP Buildでは。ローコード/ノーコードに加えてプロコードも利用できます。AIなどの技術によって今後の開発はどのように変わっていくのでしょうか。
SAP BuildとBuild Codeは同じファミリーであり、これによりフュージョン開発を可能にします。
フュージョン開発には2つの側面があります。1つは、先ほどお話したように複数の役割を持つチームが同じプロジェクトに取り組むという側面です。もう1つは、プロジェクトにおいて、ビジネス側はUIやプロセスを設計し、開発者が接続部分やサービス、そしてデータサイエンティストがモデルをアップデートするといったように、異なるツールを使うという側面です。
このように複数の役割、ツールがありますが、SAP Buildは“Unified Lobby”として、これらに統一された環境を用意します。共通のアーティファクト・リポジトリーがあり、ガバナンスが組み込まれています。つまり、タスクを分解して、共有したい部分を決定できます。
現在Build CodeはJava、JavaScriptなどをサポートしていますが、まもなくABAPの開発者もサポートする予定です。
–データ側では、「SAP HANA Cloud」でのベクトルデータベースのサポートを発表し、RAG(Retrieval Augmented Generation)が利用できるようになると発表しました。短期でこれらの機能を強化する背景に何があるのでしょうか。
2023年の夏は忙しく、われわれのチームはフル稼働でした(笑)。ですが、SAPは2~3年前、つまり、「GPT/ChatGPT」が人気を博す前から基盤モデルへの取り組みなどを進めていました。
生成AIは、インクリメンタル(漸進的)な変化ではなく、根底からのディスラプティブ(破壊的)な変化です。SAP CTOのJuergen(最高技術責任者のJuergen Mueller氏)はもちろん、CEO(最高経営責任者のChristian Klein氏)が自らそう認識しています。また、顧客もSAPが生成AIを活用した機能を提供することを期待しており、変化に先んじた形で届けなければなりません。そこで、最優先として取り組んでいます。そのため、この1年は、取り組みの順番など計画を変更することも少なくありませんでした。
SAP BTPの全ての製品に、10年に一度の大規模な変化になるような生成AIのイニシアチブを少なくとも1つ持つことに目標を置いています。市場の視点から、影響が最も大きなものをプロジェクトに選び、高速に進めました。
ベクトルエンジンはその一例です。そのほかにも、クラウドを使ったアプリケーションプログラミングモデルでのコード生成、「Joule」(SAPの生成AIアシスタント)を経由したプロセスと統合の生成や、アナリティクスとのインタラクションなどがあります。
次回の年次イベント(SAP TechEd)でも多数の革新的な機能を発表する予定です。期待してください。