デジタルサイネージ広告の勝機–拡大する市場の最新動向
今回は「デジタルサイネージ広告の勝機–拡大する市場の最新動向」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
近年リテールメディアが注目されており、それを契機にデジタルサイネージ広告も盛り上がりを見せている。しかし、デジタルサイネージ広告はユーザー/広告主の2つの視点で戦略的にマネタイズをしなければ、長くは生き残れない厳しい市場である。モビリティーにおけるメディア事業などを運営するニューステクノロジー 代表取締役の三浦純揮氏が、デジタルサイネージ広告におけるノウハウを伝える(全4回の第1回)。
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デジタルサイネージ広告は、近年のテクノロジーの進化とともに、広告市場でその存在感を増しています。2023年は、コンビニエンスストアの店舗にデジタルサイネージを設置する「コンビニのメディア化」が加速。こうした取り組みなどにより「リテールメディア」という概念が国内でも急速に浸透し、「リテールメディア元年」ともいえる1年となりました。また、店舗だけでなく屋外のデジタルサイネージ広告も盛り上がりを見せました。本記事ではデジタルサイネージ広告に関する最新の動向を、複数の事例を挙げながら紹介します。
CARTA HOLDINGSがデジタルインファクトと共同で、2023年12月に発表したデジタルサイネージ広告市場調査によると、2023年のデジタルサイネージ広告市場規模は約801億円の見通しで、2027年には約1396億円まで成長すると見込まれています。デジタルサイネージ広告市場は、過去数年にわたり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するための外出自粛および行動制限などの影響を大きく受けましたが、市場全体としては既に十分な回復を遂げています。
ニューステクノロジーでは、タクシーサイネージメディア「GROWTH」をはじめ複数のデジタルサイネージ広告メディアを運営していますが、広告主/メディア開発どちらの視点で見ても、出稿水準は完全にコロナ禍以前を上回っていると感じています。
市場全体が回復を遂げる一方、デジタル広告の領域では広告手法の多様化が進んでいます。そうした中、デジタルサイネージ広告のメディア運営者が広告の存在価値を最大化し、うまくマネタイズするためには、どのような視点と戦略が必要なのでしょうか。この連載を通して、具体的なノウハウを提供していきます。
2023年に私が気になったデジタルサイネージ広告事例の一つが、渋谷の街中で行われた、Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書」のプロモーションです。
世界独占同時配信が開始された12月14日20時、渋谷スクランブル交差点の大型ビジョン13面を幽☆遊☆白書の動画広告が一斉にジャックしました。中でも最も印象的だったのが、主人公である浦飯幽助の必殺技「霊丸」がサーチライトで表現されており、その先に登場人物の戸愚呂弟が見える点です。向かい合うビルとサーチライトを活用した画期的なクリエーティブは、ファンの間でも大きな話題となってSNSでも拡散されました。渋谷では、多くの人がこの世界観に没入し、足を止めて写真撮影を楽しんでいました。
この施策で私が注目したのは、空間全体をデザインすることの絶大なプロモーション効果です。 街中という現実空間を一気に物語の世界観に染め上げることで、ユーザーは物語の世界に入り込んだような感覚を覚え、心を揺さぶられます。こうしたリアルな体験が口コミを生み、より大きな話題となって拡散していきます。例えば、スマートフォンでパーソナライズされた広告を見て感動し、SNSで誰かにシェアすることは滅多にありませんが、公的な場所に設置されている屋外広告だからこそ、多くの人がわざわざ足を運び、その空間での体験、感覚、感情をSNSでシェアし合うことでバズが生まれるなど、さらなるPR効果も期待できます。
これは、米国ニューヨークのタイムズスクエアを彩るビルボードと、本質的には同じ現象です。世界の交差点とも言われるタイムズスクエアは、マンハッタンで最も人が多く集まる観光名所でもあります。そのシンボルであるビルボードの大半はデジタルサイネージとなっており、空間全体で一定以上の明るさを維持するためにサイネージの輝度の高さが求められます。
つまり、デジタルサイネージが、街全体の空間をデザインする役割を果たしており、世界的な観光名所であるタイムズスクエアの景観を構成する重要な要素となっています。このように、大型デジタルサイネージは、ロケーション自体の価値を向上させるほか、観光スポットにもなる可能性を秘めているといえます。
この現象は、屋外の大型デジタルサイネージ広告だからこそ、実現・提供できる価値です。現在、タイムズスクエアの主要サイネージをジャックすると1時間で1.85Mドルの広告料金が発生しますが、メディアと空間は相関関係にあり、互いに創意工夫をしながら価値を高め合うパートナーであるべきです。
メディアの運営者としては、既存の広告メニューを提供・販売するのではなく、幽☆遊☆白書のプロモーションのように、ユーザーが見に行きたいと思うような企画を実現できる仕組みづくりに継続して取り組む必要があります。また、自らがPRの視点を持ち合わせて、メディアの強みを定義し、どのように活用してもらえるのかを提示していくことが重要です。
次に気になったのは、リテールメディアにおけるデジタルサイネージの活用です。大手コンビニ各社が続々とリテールメディアへの参入を発表しています。具体的には、セブン‐イレブン・ジャパンが展開するデジタルサイネージメディアや、ファミリーマート店舗内で視聴できるデジタルサイネージ「FamilyMartVision」があります。
FamilyMartVisionでは、レジ裏やレジ上に42~65インチの3つのスクリーンを連結させたものを設置し、ここを軸にリテールメディア戦略を実施しています。2020年9月から設置を開始し、2023年10月には設置店舗数が7000店を突破。同年度内に1万店で設置することを目標に、急速に設置が進められています。
2023年11月に開業した麻布台ヒルズの「ファミマ!!麻布台ヒルズ店」に立ち寄る機会がありました。レジ右手奥に3面のデジタルサイネージが設置されており、空間全体を通して視認性が高く、購買前の商品選定に広告効果が反映されやすい配置です。
商品認知にとどまらず、その場での購買に直結することがリテールメディアの強みです。広告効果の高さが数字に表れていけば、今後ファミリーマートでは新規で店舗を出店する際、FamilyMartVisionのマネタイズを考慮した空間設計を行っていくのではないかと想定されます。
デジタルサイネージ広告の効果を最大化するためには、建設のタイミングでメディア化を想定した空間設計をすることが重要だと考えています。店舗に限らず、屋外においても同様です。
日本の屋外のデジタルサイネージ広告の多くは、ビルの壁面にモニターを後付けするケースが多く、複合施設の渋谷スクランブルスクエアのように主要導線の壁面が一面デジタルサイネージになるよう、設計段階から考慮されていることはまだまだ少ないです。先ほどのNetflixの事例にも通じる話ですが、広告主とユーザーに長く利用されるメディアになるには、その空間全体でメディアをプロデュースしていく視点が必要です。