クッキーバナーに新たな選択肢–IIJ、サイト視認性とプライバシーを両立する新サービス
今回は「クッキーバナーに新たな選択肢–IIJ、サイト視認性とプライバシーを両立する新サービス」についてご紹介します。
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インターネットイニシアティブ(IIJ)は10月29日に説明会を開催し、ウェブサイトにおけるクッキーの取得・利用において、サイトの利便性や製品・サービスのブランドを損なうことなく、ユーザーに情報の開示と同意の管理機会を提供するサービス「STRIGHT(ストライト)」を開発・提供開始したと発表した。
STRIGHTで提供されるクッキーバナーの一つでは、消費者がウェブサイトを訪問する際、クッキーバナーを表示せず、フッターをはじめとしたサイトの視認性を損なわない場所にプライバシー設定画面へのリンク情報を表示。ユーザーはリンクをクリックすると、クッキーの受け入れについて同意/拒否できる詳細設定バナーがポップアップする(図1)。
IIJが実施した調査によると、クッキーバナーの導入実績は国内約4000ドメインで、そのうち約3500ドメインは同社が提供したものだという。しかし、約3500ドメインの内訳を見ると、約2900ドメインはコーポレートサイトであり、ブランドサイトは約600ドメインにとどまっている。国内全体のブランドサイトのドメイン数は約530万に上り、クッキーバナーを導入しているブランドサイトはごく一部だといえる(図2)。
クッキーバナーがブランドサイトで敬遠されている理由として、ビジネスリスクコンサルティング本部 ビジネスリスクコンサルティング部長の中西康介氏は事業部門側の事情を挙げる。従来型のバナーを表示することで、画面の視認性の低下、離脱率の向上、行動測定の困難化が予想される。
一方、法務/広報部門には、法的義務はなくてもクッキーバナーを入れることで、自社が消費者のプライバシー保護を重視していると示したいという意識がある。こうした背景のもとIIJは、ウェブサイトの視認性とプライバシーの保護を両立するSTRIGHTの提供に至った。
これまでクッキーバナーを導入してこなかった事業者に必要性を認識してもらうことは可能なのかと説明会で聞いたところ、中西氏は「ブランドサイトの担当者も、プライバシー保護をないがしろにしているわけではなく、ブランドの信用度を上げるために保護したいと考えている。ただ、どうしても売り上げとてんびんにかけることになり、できていなかったケースがある。STRIGHTでは新たな選択肢として、“出さないバナー”を提供する」と述べた。
先述したデザインのクッキーバナーは、フッターなどウェブサイトの視認性を損なわない位置に表示するため、そもそもユーザーがバナーの存在に気付きにくいという側面がある。加えて、同デザインは日本市場を対象としているため、海外事業では現地のプライバシー保護要件に対応する必要がある。
STRIGHTでは、日本の「電気通信事業法」の外部送信規律要件に対応するほか、欧州の「eプライバシー指令」や「一般データ保護規則」(GDPR)、米国の「カリフォルニア州消費者プライバシー法」(CCPA)など、世界各国の最新のプライバシー保護規制に準拠した設定テンプレートを提供する。企業は、同意取得の表示設定やテンプレートを使い分けることで、各国のプライバシー保護要件に沿った形でウェブサイトを運用できる。
同サービスでは、管理機能も複数搭載。クッキーの受け入れの同意/拒否率をリアルタイムに確認可能なダッシュボード、外部送信サービスのスキャンの定期実行や結果のダウンロード機能、マルウェアやリンク切れの検知機能などを提供する。そのほか、クッキー以外の追跡技術による外部へのデータ送信の検知・制御も可能だという。
企業は、ライセンスを購入すれば無料で提供されるマニュアルと解説動画を活用し、導入を進められる。そのほか、技術/法的な質問に専門家がメールやウェブ会議で対応する従量課金制のサービス「スポットサポート」なども提供する。
STRIGHTの販売方法は、パートナー企業による販売とIIJによる直販の両方で行う。ドメイン単位の導入で、契約期間は12カ月。料金はオープン価格だが、目安としては1カ月換算で1万円ほど。同サービスの導入目標数は、提供開始から1年間で5000ライセンス、5年間で2万ライセンスを見据えている。
中西氏は「サードパーティークッキーが廃止される中で(STRIGHTのようなサービスは)必要ないのではないかと言われるが、廃止されて広告の粒度が粗くなっても外部通信は発生する。新しいトラッキング技術は出てくるので、確実に追従できることがポイントである」と同サービスの必要性を説いた。