企業横断の購買データを収集–東芝テック、電子レシートサービスの取り組み解説
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東芝テックは、同社の電子レシートサービス「スマートレシート」の提供10周年に当たり説明会を開催し、同サービスの概要や歩み、他社サービスとの連携を解説した。
スマートレシートのユーザーは、アプリをダウンロード・会員登録後、スマートレシート対応の店舗のレジでバーコードを提示。支払いをすると、スマートフォン上でレシートを確認できる。同サービスでは電子レシートに加え、支払金額の費目別の自動集計やポイントの獲得、クーポンの発行など、ユーザーや加盟店に役立つ機能を複数提供している。
電子レシートの定義について、東芝テック データビジネス営業推進室 シニアエキスパートの長谷川圭一氏は「ネット上で購買履歴を確認できる機能は多いが、電子レシートはレシートの代わりとして返品や領収書発行ができなければならない」と説明した。
東芝テックは2014年10月、スマートレシートを国内初の電子レシートサービスとして提供開始し、仙台市の食品スーパー・みやぎ生活協同組合(みやぎ生協)が初めて導入した。2011年3月の東日本大震災の影響でレシート用紙が不足したことをきっかけに、同サービスの開発・提供に至ったという。
コロナ禍の2020年7月には、店舗スタッフと消費者の感染リスクの軽減に向けて、月額利用料を無償化。現在は、外部企業へのユーザーデータの提供、有償のオプションサービス、広告枠の販売などでマネタイズを行っている。会員数は、2024年7月に200万人を突破。食品スーパーや薬局、飲食店など、同年10月時点で543社1万7315店舗での稼働実績がある。
国内外のペーパーレス化と環境配慮への動きは、電子レシートの普及を後押ししている。2022年4月、民法第486条「受取証書の交付請求」が改正され、弁済者は電子データでの受取証書(領収書)の提供を請求できるようになった。フランスでは2023年、廃棄物の削減などに向けて紙レシートの発行を原則廃止し、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営を推進する国内企業でもペーパーレスの機運は高まっている。
全国のレシート用紙の年間消費量は約5.4万トンで、A4サイズのコピー用紙に換算すると約135億枚分になるという。東芝テックによる調査では、1年間で販売されるレシートロールの合計金額は約960億円に上り、小売企業は多くのコストを負担しているといえる。こうした中、スマートレシートは2023年度、約5600万枚の紙レシートを削減した。
東芝テックは、スマートレシートとパートナー企業のサービスを連携させ、電子レシートのデータ活用を進めている。例えば、同サービスはサッポロホールディングスのレシピアプリ「うちれぴ」と連携し、レシート情報を送信。レシート情報を食材に変換し、その情報を基にうちれぴはレシピを提案する。
スマートレシートのデータはユーザー個人を起点としているため、企業を横断した購買行動を把握できるのが特徴だ。東芝テックは、グループ会社の東芝データが開発・運用する紙レシートを読み取るアプリ「レシートスキャン」も併用し、ユーザーのデータを収集。気象や電力、テレビの視聴、交通などに関するデータと組み合わせて価値を高め、メディアや広告会社、メーカーにデータを販売してマネタイズを行うことに取り組んでいる。
東芝データとNTTドコモ(ドコモ)は10月に協業を発表し、スマートレシートと「dアカウント」を連携。ドコモはスマートレシートの購買情報を活用し、「dポイントクラブ」の会員に最適な情報を提供する。
スマートフォンを活用したバーコード決済やセルフレジを用いた無人/省人化店舗など、店舗オペレーションのデジタル化も電子レシートの普及に寄与しているという。来店客はバーコード決済を選択した場合、電子レシートを利用することで、支払いのプロセスをスマートフォン上で完結できる。無人/省人化店舗では、レシートの紙詰まりなどのトラブルが発生した場合、スタッフによる即座の対応が難しいので、電子レシートが効果的となる。